TAC、教育事業でオンライン強化と新サービスで受講者数を伸ばす、法人研修も好調で収益拡大へ

2025年6月13日 07:46

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 TAC<4319>(東証スタンダード)は「資格の学校」運営を主力として、出版事業や人材事業も展開している。教育事業では事業環境変化に対応した新サービスの提供、出版事業では新規領域への展開、人材事業では医療事務関連の子会社を統合してサービス向上と業務効率性向上を推進している。26年3月期の連結業績は前期比横ばい予想としているが、やや保守的だろう。なお配当は増配予想としている。積極的な事業展開で収益拡大基調を期待したい。株価は年初来高値圏だ。1倍割れの低PBRも評価材料であり、上値を試す展開を期待したい。

■「資格の学校」を運営

 財務・会計分野(簿記検定・公認会計士など)、経営・税務分野(税理士・中小企業診断士など)、金融・不動産分野(宅建・不動産鑑定士・FPなど)、法律分野(司法試験・司法書士など)、公務員・労務分野(社会保険労務士・国家総合職など)、その他分野(情報・国際、医療・福祉など)といった幅広い分野で「資格の学校」を運営する個人教育事業、法人研修事業を主力として、出版事業や人材事業(会計系、医療系)も展開している。

 25年3月期のセグメント別業績は、個人教育事業の現金ベース売上高99億04百万円で現金ベース営業利益1億96百万円、法人研修事業の現金ベース売上高44億75百万円で現金ベース営業利益11億35百万円だった。出版事業売上高43億81百万円で営業利益9億93百万円、人材事業の売上高5億08百万円で営業利益74百万円だった。

■教育事業は事業環境変化に対応して新サービス提供を推進

 25年3月期の教育事業受講者数は個人受講者が11万1422人、法人受講者が8万8017人、19万9439人だった。分野別受講者数の構成比(個人と法人の合計)は財務・会計分野が11.9%、経営・税務分野が12.0%、金融・不動産分野が30.3%、法律分野が5.8%、公務員・労務分野が19.4%、情報・国際/医療・福祉/その他分野が20.6%だった。

 事業環境の変化に対応し、オンライン学習環境の強化(WEB SCHOOLの機能拡充など)や、法人向け研修における多様な受講方法の整備、新たなサービスの提供、オンライン受講増加に伴う直営校の床面積の適正化などに取り組んでいる。25年3月期の個人教育事業におけるWEB通信講座の比率(現金ベース売上高比率)は前期比4.1ポイント上昇して52.8%となった。法人研修分野においてもWEB会議システムを利用した研修が多くの企業で定着している。

 新たな取り組みとして22年11月より、プロeスポーツチーム「忍ism Gaming」とスポンサー契約を締結し、プロeスポーツ選手が資格取得にチャレンジする「シカチャレ」を開始した。引退者のセカンドキャリアについて資格という側面から貢献することを目指す。23年1月には「TAC CBT(Computer Based Testing=コンピュータ試験)およびIBT(Internet Based Testing=インターネット試験)システム」によるテスト配信サービスを開始した。

 24年2月には会計士や税理士をはじめとする士業の方のサポートを中心とする結婚相談所サービス「TACマリッジコンシェルジュ」運営の開始を発表した。これまでに培ってきた人材ネットワークを生かし、士業の方のサポートを中心とする結婚相談所を開設し、士業同士の婚活をサポートする。なお「TACマリッジコンシェルジュ」はIBJ<6071>が運営する日本最大級の結婚相談所ネットワークの正規加盟店である。

■出版事業は事業領域拡大

 出版事業はTAC出版と早稲田経営出版(W出版)が展開している。両社の合算売上高の5億73百万円(TAC出版が4億94百万円、W出版が79百万円)は出版業界12位規模(出典:2023年度丸善ジュンク堂書店出版社売上ベスト300)で、資格書籍を主力とする出版社としては有数の規模となっている。

 事業領域拡大に向けて、高等学校商業科で使用する文部科学省検定済教科書(高校1年生で履修する簿記およびビジネス基礎)分野に参入した。22年4月には高等学校商業科教科書「簿記」および「ビジネス基礎」を刊行、23年4月には高等学校商業科教科書「原価計算」および「財務会計Ⅰ」を刊行した。24年3月には、国内旅行ガイド書「おとな旅プレミアム 第4版」全32点を24~25年版に改定して発売すると発表した。

■人材事業は会計系・医療系人材紹介などを展開

 人材事業は、子会社のTACプロフェッションバンクが会計系の人材紹介・派遣事業、医療事務スタッフ関西が関西エリアで医療事務に関する労働者派遣事業、診療報酬請求業務請負、診療報酬請求明細書(レセプト)点検業務を展開している。23年4月には医療事務スタッフ関西が、診療報酬請求明細書点検業務を展開するクボ医療を吸収合併した。業務の関連性が高いため、人的資源やノウハウを共有することにより、サービス向上と業務の効率性を高める方針だ。

■四半期業績に季節変動要因

 四半期業績は資格講座の本試験実施・合格発表の時期との関係などで季節変動の特徴がある。第2四半期(7~9月)と第3四半期(10~12月)の公認会計士・税理士講座は、翌年受験のための受講申込が集中する時期となるため、現金ベース売上高が突出して多くなるとともに、翌四半期に向かって前受け金として繰り越されることから、発生ベース売上高の増加が少なくなる傾向がある。

 また第4四半期(1~3月)から第1四半期(4~6月)にかけては、夏・秋の本試験時期に向けて全コースが出揃う時期にあたり、稼働率の上昇から前受金戻入額が増加することを通じて発生ベース売上高が増加する傾向にある。こうした売上の傾向に対して、売上原価や営業費用は毎月一定額計上されるため、四半期ごとの営業利益が変動しやすい。利益は期前半に集中し、下期は赤字となる収益特性がある。

■26年3月期は横ばい予想だが保守的、配当は増配予想

 26年3月期の連結業績予想は現金ベース売上高(同社が経営管理上重視している売上高)が前期比0.2%増の192億90百万円、前受金調整後の発生ベース売上高(決算短信上の売上高)が0.3%増の192億60百万円、営業利益が1.9%増の7億40百万円、経常利益が5.0%減の7億円、親会社株主帰属当期純利益が0.5%増の4億70百万円としている。配当予想は前期比3円増配の7円(第2四半期末3円、期末4円)としている。予想配当性向は27.0%となる。

 重点戦略として、売上面ではオンラインライブ通信の商品ラインナップ拡充、人材育成需要増加に対応した研修受注の拡大、デジタルリテラシー向上のためのコンテンツ販売、会計系資格以外の求人広告案件へのアプローチ、利益面では直営校の校舎規模見直しの継続、オンライン受講ニーズに対応した講座運営の効率化、業務効率化への継続した取り組みを推進する。

 26年3月期の連結業績は前期比横ばい予想としているが、やや保守的だろう。なお配当は増配予想としている。積極的な事業展開で収益拡大基調を期待したい。

■株価は上値試す

 株価は年初来高値圏だ。1倍割れの低PBRも評価材料であり、上値を試す展開を期待したい。6月12日の終値は242円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS25円92銭で算出)は約9倍、今期予想配当利回り(会社予想の7円で算出)は約2.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS343円05銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約45億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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