【QAあり】住友金属鉱山、人的資本/事業を支える人材マネジメントを推進

2023年12月16日 17:20

印刷

記事提供元:ログミーファイナンス

【QAあり】住友金属鉱山、人的資本/事業を支える人材マネジメントを推進

【QAあり】住友金属鉱山、人的資本/事業を支える人材マネジメントを推進[写真拡大]

はじめに

清水隆徳氏(以下、清水):本日はご多忙の中、住友金属鉱山のIR-Day「サステナビリティ説明会」にご参加いただき、誠にありがとうございます。本日、司会を務める広報IR部の清水です。よろしくお願いします。

当社は、本年9月に「統合報告書2023」を発行しました。また、サステナビリティ開示基準などに対応するため、本年からは新たにサステナビリティレポートを発行し、情報開示を大幅に増加しました。

本日のテーマ

本日は、執行役員であるサステナビリティ推進部長の矢野からサステナビリティレポートより事業を支える人材マネジメントについて、次に私から「統合報告書2023」にトピックスとして掲載している東予工場の技術の変遷についてご説明します。

目次(テーマ1)

矢野三保子氏(以下、矢野):サステナビリティ推進部の矢野三保子と申します。本日はどうぞよろしくお願いします。

本日は、投資家のみなさまとの対話の中で多くご質問いただくことについてご説明します。内容は「1 住友の事業精神、住友金属鉱山グループの経営理念」「2 住友金属鉱山グループのサステナビリティ」「3 人的資本経営、事業を支える人材マネジメント」「 4 自律的な成長を支援する人材育成」「5 多様な人材が活躍する企業」です。

住友の事業精神

まずは、当社の人材マネジメントの根幹を支える事業精神と経営理念をご紹介します。

当社の創業は、今から約430年前の1590年です。「住友」の名を持つ企業は、必ずスライドに記載の事業精神を掲げています。こちらは、江戸時代に初代住友家の当主が記して以降、代々進化し、明治時代にまとめられたものです。そのうちの一部を抜粋してご紹介します。

第1条「信用を重んじ、確実を旨とし」、第2条「時勢の変遷理財の得失を計り、いやしくも浮利に趨り軽進すべからず」。こちらは、信用を重んじ確実を第一とし、「浮利」、つまり一時の利益を追う軽率なことはせず、時代が変わっても利益が出るよう変革し続けることが大切である、という内容です。

住友金属鉱山グループの経営理念・サステナビリティ方針

住友の事業精神に基づき、地球および社会との共存を図り、人間尊重を基本とした経営理念を掲げています。

さらにサステナビリティ方針として、住友金属鉱山グループが社会の持続的発展に貢献する経営課題に取り組み、事業の持続的な成長と企業価値の向上を図ることを掲げています。

住友金属鉱山グループのサステナビリティ

住友金属鉱山グループのサステナビリティの内容についてご紹介します。住友の事業精神やグループ経営理念、サステナビリティ方針を受け、事業をどのように進めているかのご説明になります。

先ほどご紹介した事業精神と経営理念、サステナビリティ方針を図で表すと、このようなかたちになります。

事業精神および経営理念の下に「地球および社会との共存」「人間尊重」の記載があり、その下に「地球」「社会」「人」という言葉が並んでいます。さらに、その下に記載している「非鉄金属資源の有効活用」や「気候変動」などの項目は、当社が重要課題としている11項目です。

サステナビリティ推進体制

どのような組織でサステナビリティを推進しているかについてご説明します。

社長を委員長としたサステナビリティ活動を推進しており、スライド左端にあるサステナビリティ7部会は重要課題に応じた組織です。右端にあるカーボンニュートラル推進委員会は、重要課題のうち「気候変動」に対応している委員会です。

そのほか、マネジメントシステム4分科会や企業価値向上戦略会議、DX推進委員会と、サステナビリティ委員会の傘下にこれだけの組織を置いて活動を進めています。

当社グループの重要課題

本日のメインの内容である、人的資本経営および事業を支える人材マネジメントについてご説明します。

先ほどお話ししたとおり、当社グループの重要課題は、社会と当社事業の両面において影響度が大きな課題を89から11に集約しています。それら11項目は、スライドに記載のとおりです。

本日は「6 多様な人材」「7 人材の育成と活躍」についてご紹介します。

2030年のありたい姿

当社は、重要課題の項目ごとに2030年のありたい姿を設定しています。

「6 多様な人材」と「7 人材の育成と活躍」における2030年のありたい姿として、「すべての従業員が活き活きと働く企業」「従業員一人ひとりの人間性を尊重し、従業員が誇り・やりがい・働く喜びを持てる企業」「従業員一人ひとりに能力向上の機会を提供し、従業員とともに成長する企業」を目指しています。

人的資本経営~事業を支える人材マネジメント~

当社の人材マネジメントは、「一人ひとりの経験・スキルに着目し、今後のキャリア形成をふまえ、育成と活躍の機会を提供する」という考え方のもと、人材育成を行っています。

これまでの長い歴史の中で大切にしてきた「安心感」「安定感」「自律的成長」に対して行っている活動を、スライド右側の緑色の枠内に記載しています。

また、現在課題を感じており、今後さらに強化することとしている「ダイバーシティ&インクルージョン」「ワークライフバランス」「自律したキャリア形成」についても、右側の枠内に記載している施策を推進しています。

事業精神をはぐくむ研修

当社がこれまで大切にしてきた、自律的な成長を支援する人材育成についてお話しします。

まずは、事業精神を育む研修です。こちらは、住友の原点でもある歴史的遺産の見学および講義を通じて、住友の事業精神の根幹を学ぶ研修です。

新入社員や管理職、役員に登用された時などの節目ごとに行われているほか、海外で勤務する現地の社員の方々が来日した際にも受講いただいています。受講者は毎年100名前後ですが、2023年はコロナ明けだったこともあり、多くの社員が受講しています。

研修内容は、住友家ゆかりの地を訪ねるほか、新居浜地区にある別子銅山記念館の訪問や旧別子銅山への登山を行っています。別子銅山の登山の研修では、別子銅山の開鉱から閉山までの歴史を学びます。また、別子銅山が操業していた頃の、機械化されていない先人たちの大変な苦労を体験するという目的もあります。

往復で約6時間、万歩計で約2万3,000歩と体力的にかなりハードな研修ですが、非常に学びのあるものです。現在も、登山をした際には遺構を見ることができます。私自身は中途採用で入社5年目となりますが、すでに研修に3回参加しました。

JCO研修

JCO研修についてです。1999年9月に、原子力発電所用の核燃料を製造する子会社ジェー・シー・オーで臨界事故が発生し、尊い社員の命が失われました。

コンプライアンスと安全文化の醸成および浸透を徹底し、事故後20年を超える中でも記憶を風化させず、若い世代にも事故の教訓を受け継ぐために、研修を実施しています。この研修は当社グループ全社員が受講必須であり、毎年600名近くが受講しています。

職掌別人材育成

続いて、職掌別人材育成についてご説明します。住友の事業精神である「事業は人なり」「一人ひとりに目の届く人数」を採用し、職掌別に第一線で活躍できるまで確実に育成を行っています。

各職掌では、専門技術と知識を得るための10年以上におよぶ育成プランに沿って、長期的な視点でキャリアパスを提示して育成しています。

大切にしていることとしては、現場にどっぷりと浸かり、仕事の基礎を確実に身につけ、担当する職務や分野において世界に通用する力量を高めることを目指しています。

内容について、少しご紹介します。資源については、後ほど別のスライドでご説明します。

金属では、製錬技術者を育成することを目的に、製錬大学、国内外拠点の操業管理、R&Dの経験、および学会などに参加しています。

材料・研究開発では、当社の技術力の根幹である研究開発および現場実習を行いながら、研究所で課題解決研修や大学との共同研究、社会人ドクターの取得なども行っており、学会での発表や論文投稿なども行っています。

また、当社の国内外の拠点は、当社で育成したプラントエンジニアが管理しています。設計や施工管理を学び、メンテナンスなども経験していっています。

営業では、マーケティング、セリング、マネジメント、貿易管理などの研修を行っています。

事務系のうち経理部門の担当者は、財務や管理会計などを集合研修で学び、国内外の拠点を含めた関係会社を経験し、経理の実務を学んでいます。

育成プランの事例≪鉱山エンジニア≫

育成プランの事例として、資源の鉱山エンジニアについてご紹介します。

国内で唯一操業中の金鉱山である菱刈鉱山で行っているマイニングスクールで学んだ後、トレーニーとして海外鉱山を経験し、高度な専門知識と経験および技術の継承を10年計画で学びます。

その後は菱刈鉱山本社や海外の鉱山に入り、プロジェクト管理や現場管理を学びます。スライド右側に掲載している写真は菱刈鉱山で学ぶ様子や、ジョイントベンチャーで操業している海外鉱山で働く社員の様子です。

離職率・3年後新卒定着率の推移

事業を支える研修や職掌別人材育成を通じて、当社の離職率は非常に低い数値を表しています。

人材の流動化が高まっている中、2019年から1.9パーセント、1.5パーセント、1.6パーセント、2.3パーセントと、若干上昇傾向ではありますが、非常に低い離職率であり、一般的に新卒の退職率はみなさまもご存知かと思います。3年で3割だと言われています。

当社の定着率は、スライド右側のグレーの文字が当社全体の数字ですが、そのような中で2019年度は88.2パーセント、2020年度は80.8パーセントと一時的に少し下がってしまったものの、2021年度は86.8パーセント、2022年度までであれば92.9パーセントと、非常に高い定着率を誇っています。

後ほどお話ししますが、最近は女性の育成にも力を入れており、男性よりも女性の定着率のほうが高いということもわかります。

ダイバーシティ&インクルージョン(背景)

当社が課題に感じている、多様な人材が活躍する企業になるためにどのような活動をしているかについて、ご紹介します。

まず、ダイバーシティ&インクルージョンを実践するための背景です。ご存知のとおり、日本国内では高等教育で理系を専攻する女性は少なく、日本国内および非鉄金属業界ともに、女性の採用や就労が難しい状況でした。

一方で、当社の新入社員の約8割は技術系であり、当社の社員全体でも7割が技術系で、女性の人数を増加させることは非常に難しかったです。また、非鉄金属業界では3交替職場および坑内労働があるなど、女性社員の就労機会を提供することが難しかったという事実もあります。

1986年の男女雇用機会均等法施行によって女性の深夜労働が認められるようになったほか、2007年の労働基準法改正により女性の坑内労働が可能になりました。このあたりからが、女性の活躍が加速した時期になります。

女性管理職の目標数だけではなく、新入社員やキャリア採用社員の女性従業員比率を目標に設定して入口を広げることを目指しつつ、個別アプローチで育成をサポートしています。

ハード(インフラ・制度)からソフト(意識改革)へ

当社の女性活躍およびダイバーシティの取り組みは、2012年頃から加速しています。先ほどお話ししたとおり、当初は女性の就労がなかったため、各拠点である工場には、女性用のトイレやシャワールームがありませんでした。したがって、まずはインフラの整備を行いました。

その後は、女性に長く当社で活躍していただけるように、結婚や出産等を理由に退職した社員が再入社可能な「ジョブリターン制度」や、家族の赴任への帯同や留学など原則理由を問わず最大2年間取得できる「ポジティブオフ」(自発休職制度)も導入しました。また、産前産後休業や育児休業、介護休業などは、法定を上回る制度となっています。さらに、障害者向けに車椅子用スロープの設置等も行いました。

ソフト面においては、2012年に設置した女性活躍支援グループを、2015年にはダイバーシティ推進室に拡大し、意識改革や風土の醸成も行ってきました。研修なども行っていましたが、風土改革や意識改革がなかなか伴っていない部分もあり、当初は遅々とした数値の変化でした。

多様な人材の推移

2018年当時の女性社員比率および管理職比率、障害者雇用率、外国人社員数です。2012年から取り組みを開始していますが、2018年時点はなかなか伸びていない部分が見られます。

現在の欄には、直近の2023年11月現在の数値を記載していますが、女性社員比率や女性管理職比率が増えてきています。

男性の育児休業取得率は非常に高く、ご質問いただくことが多いため、こちらは後ほどご説明します。

女性従業員比率と女性管理職比率

女性就業比率と女性管理職比率について、今後の目標も含めて記載しています。先ほどお話ししたとおり、現状の女性比率は20パーセントに達していませんが、2030年には20パーセントを目標としています。女性管理職については、2030年に50名、比率7パーセントを目指して活動しています。

多様な人材

女性以外にも、多様な人材が活躍できる仕組みづくりや風土醸成を行っています。障害者への活動としては、社員寮へ車椅子対応の部屋やパトライトの設置、音声認識ソフトの利用を行っています。また、人事担当者と定期面談を行ったり、聴覚障害のある社員自身が活躍し、一般の社員向けの手話教室を実施したりしています。

女性への活動としては、女性役員と女性管理職との懇談会や、女性役員による個別のアプローチ、選抜した基幹職女性社員を対象にした「キャリア塾」などを行っています。

まだ少ない外国人への活動としては、当社で勤務していただく中で感じている課題を把握するためのアンケートや個人面談、上司へのフィードバック、課題ヒアリング、外国人同士の座談会なども行っています。

LGBTへの活動としては、役員や管理職を対象に定期的な研修を行い、理解を深めるワークショップも実施しています。

高齢者への活動としては、65歳定年の制度を変更し、最長70歳まで働けるシニア社員の制度を導入しました。また、50歳および58歳時にはお金も含めてプランを立てるキャリア&ライフプラン研修を行っています。

ワークライフバランスへの活動としては、時差出勤や在宅勤務制度、ハラスメント以外にも育児と仕事の両立などが相談できる、ワークライフ支援デスクの設置を行っています。

男性育児休業取得者の増加

男性育児休業取得者の増加についてご説明します。当社の現在の男性育児休業取得率は97パーセントと、非常に高い率となっていますが、当社は法制化される以前から全管理職を対象に育児休業制度説明会を実施していました。

妊娠や出産などの申し出をした社員に対し、人事部が育児休業制度の説明と所得の意向確認をすべての担当者に実施しています。また、当社の育児休業には、もともと男性の育児目的休暇として、出産・育児支援休暇が設定されていました。法律が改正された際にこの休暇も含めて良いこととなったため、97パーセントまで急激に上がっています。

また、スライドに記載はありませんが、平均取得日数は3ヶ月です。中には1週間程度育児休業を取得して取得率を上げている企業もありますが、当社は実質的に育児を手伝う男性社員が多いということです。

職場(本社)、社員寮(別子)リニューアル

コミュニケーション活性化策についてです。職場である本社と、新居浜にある別子社員寮をリニューアルしています。会議室についてはまだリニューアル前ですが、受付や社員の執務フロアには、コミュニケーションをとることができる場を多く設けています。

また、別子社員寮は昨年リニューアルし、ビュッフェ形式の食堂や、車椅子にも対応できるバリアフリーな居室、ライブラリーなども設置しました。

コミュニケーション活性化

コミュニケーション活性化を推進するイベントとして、「ACROSS」を毎月1回、本社の社員食堂で行っています。「ACROSS」は、「Accelerate Co-creation Roundly Over the Section in Sumitomo metal mining」の頭文字を取ったもので、「部門を超えた共創を加速させる」という意味です。

また、デジタルへの興味を持つことに加え、従来の仕事の進め方を見直すきっかけ作りを目的に、「DXサロン」を2ヶ月に1回、社員食堂で開催しています。

従業員意識調査

従業員意識調査の結果です。2010年から3年に1回実施していましたが、2023年から毎年実施することにしました。グループ会社含めて合計10社、5,000名超えの社員に対して行っています。

スライド右側に結果の一部を掲載しています。「総合的に考えて、あなたの会社はあなたにとって魅力ある職場ですか」という質問に対する肯定回答率が、2019年度は48.24パーセントでしたが、2021年度は54.63パーセントに上昇しています。

また、「総合的に考えて、あなたは住友金属鉱山という会社で働いていることに、誇りを感じていますか」という質問に対する肯定回答率は、2019年度には62.44パーセントでしたが、2021年度は63.69パーセントと、やや上昇しています。

ただし、2021年度の調査結果については2つの課題を感じています。自由闊達な組織風土のさらなる浸透が必要だと考え、「自由闊達」という言葉の定義を明確化して、周知を行っています。

また、人事政策の魅力の向上が必要だと考え、「総合職人事制度改正」を実施しました。

健康経営

健康経営にも力を入れるようになりました。こちらに関しては、スタートがやや遅かったとの認識を持っていますが、「健康経営優良法人2023」の認定法人となることができました。

メタボリックシンドローム予防改善の他に、オンライン禁煙プログラムや、個人向け健康ポータルサイト「MY HEALTH Web」を開設し、ウォーキングイベントでは社員同士で歩数を競い合ったりもしています。また、食生活、女性の健康などをテーマに健康セミナーを実施し、生産性向上と組織の活性化を目指しています。

スライド右側には、有所見者率および肥満率の推移と目標を記載していますが、2030年には記載のとおりの目標を設定しています。

次世代経営層育成

次世代経営層の育成にも課題感を強く持っており、「役員塾」として、執行役員と塾生が各塾で独自に設定したテーマをともに学び、職場で実践活用することを目指して活動しています。こちらは塾生として20代から30代前半の若手社員8名から10名を招いて実施しています。

スライドの写真は、私の「サステナビリティ情報開示について学ぶ」という塾の様子を写したものです。

MMP(ミドルマネジメントプログラム)では、次世代を担うミドル層の底上げを図るために、30代から40代の社員を選抜し、経営陣が講師となり約5ヶ月間にわたり討議を実施しています。

次世代経営層育成

次世代経営幹部育成研修は、近い将来、当社を牽引する40代後半のリーダー人材を選抜し、経営感覚を身に付ける実践的プログラムを外部に委託して行っています。

また、本社の若手社員からミドル層の融和と活性化を図るため、社長と若手社員が会話するトップランチ会を毎月設けています。

人事制度改正

人事制度改正です。以上のような課題感を持ちながら、一人ひとりが挑戦・変革・成長できる人材が必要です。

これまでの職能・役割資格制度は年功序列型でしたが、2023年7月に人事制度を改正し、職務・職責を基準にする職務等級制度を導入し、それぞれの区分で報酬を決めるかたちに変更しました。過去の人事考課の累計に基づく昇格は廃止し、担当職務、つまり仕事の内容で等級(区分)が変動します。

昇給については、経験により成長する期間の昇給は維持しますが、原則、職務等級に応じて報酬が変動します。また、キャリアチャレンジ制度(社内公募制度)も導入します。

自律的成長を支援/1on1ミーティング

自律的成長を支援するために、自主的に学べる研修を充実させています。また、キャリアデザイン研修も、入社2年次を起点に35歳、43歳、50歳、58歳時点で行っています。

また、上司と部下間のコミュニケーションの質を上げ、一人ひとりの能力を引き出し、成果を上げる組織を構築することを目的に、部下が主体となった1on1ミーティングを実施しています。

キャリアを自分で選ぶことや、自律的な学び、積極的な挑戦を支援する教育となっています。

企業の成長を加速させる人材マネジメントへ

ここまでのご説明をまとめると、企業の成長を加速させる人材マネジメントとなっています。

今後の取り組みの結果として、社員のウェルビーイングの実現、ライフステージに応じて変更できる区分、キャリアチャレンジ制度、タレントマネジメントシステムがあります。施策を実行して成果を上げることで、従業員のエンゲージメントが向上し、自由闊達な組織風土が醸成できると考えています。

私からのご説明は以上です。

目次(テーマ2)

清水:本日の2つ目のテーマである「東予工場の技術の変遷」についてご説明します。

2023年9月末に発行した「統合報告書2023」の66ページに、東予工場の技術の変遷というコラムを掲載しています。これまで当社の銅製錬事業についてお話しする機会があまりありませんでしたが、東予工場は当社のモノづくりを支える重要な拠点です。技術の積み重ねに裏打ちされた価値や魅力をご紹介したいと考え、今年の統合報告書で取り上げました。

本日のテーマは「東予工場の技術の変遷」としていますが、技術そのもののお話ではなく、統合報告書に記載した内容の補足説明という位置づけです。それでは、スライドの目次に沿ってご説明します。

当社の製錬・銅事業(At a Glance)

当社の製錬・銅事業の歴史についてのおさらいです。当社は1590年の操業から430余年にわたり、住友の源流事業である銅製錬事業を受け継いでいます。現在も当社の「モノづくり力」を支える中核事業です。

本日お話しする東予工場は、愛媛県西条市と新居浜市にまたがって立地しており、1971年に生産を開始しました。

銅製造フロー(銅精鉱から電気銅まで)

スライドの図は、銅精鉱から電気銅までの銅製造フローを簡易的に示したものです。銅精鉱の中には、銅・鉄・硫黄がそれぞれ3分の1ずつ含まれており、銅品位は約20パーセントから30パーセント程度です。

銅精鉱は、まず自熔炉で硫黄分、鉄分を除去し、銅品位を約60パーセントから65パーセント程度まで高めます。その後、転炉、精製炉で残りの硫黄・鉄・その他の不純物を取り除き、鋳造機で鋳造した精製アノードを電気分解し、銅品位約99.99パーセントの電気銅を生産しています。

銅製錬事業の損益構造イメージ

こちらのスライドでは、銅製錬事業の損益構造のイメージを簡易的に示しています。あくまでもイメージであり、実際の数値をグラフ化したものではありませんのでご注意ください。

基本となる銅価格は、LME(ロンドン金属取引所)で決定されます。次に、この銅価格が、鉱山の取り分と製錬所の取り分に分かれます。

製錬所の取り分は、主にTC/RCというドル建ての加工賃であり、銅価格変動の影響を受けません。為替が円安になった場合、TC/RCはドル建てのため、円ベースでの取り分が増えることになりますので、円安は製錬所にとって追い風となります。

また、銅価格が変動してもTC/RCは変わらないため、銅価格が上昇した場合のメリットは鉱山側が享受することになります。反対に、銅価格が下落しても、製錬所の収益下落は限定的と言えます。

銅価格 vs TC/RC(Combined RC)

スライドでは、銅価格と製錬所の取り分であるTC/RCを示しています。TCはトリートメントチャージの略で、精鉱1トン当たりの精錬加工賃を表します。RCはリファイニングチャージの略で、粗銅から電気銅までの精製加工賃のことです。

棒グラフに青色で示しているCombined RCは、TCとRCの単位を¢/lbに揃えて表現したもので、意味としてはTC/RCと同じです。棒グラフの高さが銅価格であり、棒グラフ下部の青色の部分が製錬所の取り分、グレーの部分が鉱山の取り分です。水色の折れ線グラフは銅価格に占めるTC/RCの割合を示しています。

TC/RCは、基本的に銅精鉱の需給バランスで決まるため、当社がコントロールできる部分ではありません。2006年頃から銅価格が急騰していますが、製錬所の取り分であるTC/RCは銅価格の1桁パーセント程度の水準で推移していることがご確認いただけると思います。

東予工場の利益の源泉

東予工場についてご説明します。これまでご説明したとおり、銅製錬事業は銅価格の変動に左右されにくい損益構造であると言えます。

限られたTC/RCの中で利益を最大化するためには、コスト競争力の向上が重要です。そして、コスト競争力を高めるためには製錬技術の向上が必要不可欠になります。

精鉱熔解量(東予工場)の推移

製錬技術の絶え間ない向上を示す1つの例として、東予工場における精鉱熔解量の推移についてお話しします。精鉱熔解量とは、東予工場のメインの炉である自熔炉で銅精鉱を処理する量のことです。

東予工場の自熔炉は、操業開始から現在まで52年間、炉そのものを大きくしたり、炉の数を増やしたりといったことはせずに、各種の改善、改良を加えています。その結果、精鉱熔解量は、1971年の操業開始当時で1日当たり757トンでしたが、現在は約5倍の3,700トン程度まで高まっています。

精鉱熔解量を増やす目的は、最終製品である電気銅の増産です。東予工場の完成当時、電気銅の増産に向けたボトルネックは自熔炉を中心とする乾式製錬工程にありました。乾式製錬工程とは、スライド39ページのフロー図の精製アノードを作るところまで、つまり自熔炉から精製炉までの工程を指します。

ご覧のグラフには主な出来事を記載していますが、乾式製錬工程の能力増強に向けて、1982年に酸素富化操業、つまり自熔炉に供給する酸素を増やす操業を開始しました。1996年には自熔炉の心臓部である精鉱バーナーを、当初の4本バーナーから当社が開発した住友式の1本バーナーに改造し、燃焼効率を大幅に向上させました。

その後も転炉増設、硫酸工程の2系列化や、環境集煙設備増強などの設備能力増強を進め、環境対策にも万全を期しながら精鉱熔解量を増やしてきました。

東予工場の精鉱熔解量は、単一の自熔炉では世界トップクラスです。具体的な数値は公開できませんが、単位生産量当たりのエネルギー効率も世界最高レベルです。さらにクリーンな製錬所の観点からも、トップランナーだと自負しています。

電気銅生産量(東予工場)の推移

1996年以降の電気銅の年間生産量の推移を示したスライドです。年間20万トン強だった電気銅生産量は、精鉱熔解量の増加に伴い、2007年には40万トンに達しています。

2011年度に、自熔炉クールダウンとの記載があります。これは操業トラブルではなく、計画的に実施した大規模修繕です。この影響により一時的に生産量が落ちていますが、2016年度には年間生産量45.1万トンに達し、近年は40万トンから45万トンを安定的に生産しています。

グループ内の他事業との連携

東予工場を中心に、当社グループの他事業との連携を簡易的に示したスライドです。スライド左側に記載のとおり、当社が権益を保有する海外銅鉱山からは銅精鉱、菱刈鉱山からは金鉱石を東予工場へ送っています。また、リサイクル原料からの有価物の回収も積極的に進め、電気銅生産量の約4分の1はこれらの原料由来となっています。

中央に記載のように、東予工場の主力製品は銅品位99.99パーセントの電気銅です。この他にも、銅精鉱中の硫黄は硫酸として回収し、フィリピンのグループ会社でHPALプラントの主要な操業資材として使用しています。

また、東予工場で処理する銅精鉱の原料の中にわずかに含まれているニッケルも回収し、愛媛県新居浜市にあるニッケル工場で精製して製品化しています。金などの貴金属については、2004年以降、世界初の完全湿式貴金属精製プラントで製品化しています。菱刈鉱山の金鉱石については、銅製錬と同じ工程で処理することで、金製錬のコストを削減するとともに、金鉱石中の二酸化ケイ素を利用して、銅製錬に必要な珪砂の使用量の削減に役立っています。

右下の電池リサイクルについては、回収した使用済みバッテリーを、東予工場の乾式製錬工程とニッケル工場の湿式製錬工程を組み合わせ、銅は電気銅として、ニッケルは硫酸ニッケルとして回収しています。

2022年には、銅とニッケルに加え、コバルトとリチウムを回収する技術開発を完成させました。近い将来には、東予工場に電池リサイクルプロセスの一部を設置することを目指しています。

まとめ

スライドには、ここまでお話しした内容をまとめています。繰り返しになりますので、ご説明は割愛します。

私からのご説明は以上です。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:同質性の高い組織における多様化の推進について

質問者: JCO臨界事故の時もそうでしたが、御社は住友の事業精神があって筋が通っており、その原点に戻って企業が立ち上がってきたと実感しています。

同質性の高さについて質問です。御社のベテラン社員のほとんどが、同質な感覚を持っていると感じています。事務系でもエンジニア系でも、原点をよく理解したうえで、全般を見通して事業を理解している方が非常に多く、社員のレベルが高いと思っています。

矢野さんは他の企業から参画されたということもありますが、世の中には異なる考え方で動いている企業がある中で、御社は御社の道を行っていると感じています。例えば、我々金融業界から見るとややピントがずれた方向に行っている際に、間に立つ方がみなさん同質であるせいで、意見を受けてもらえないケースが時々あります。

多様な人材が活躍できる企業を目指すとのお話でしたが、中途採用も含めて、いろいろな「血」を入れて、考え方の枝葉を分けていくというお考えはありませんか?

矢野:「住友金属鉱山は住友金属鉱山の道を進んでおり、同質性の高い組織の中からより枝葉を広げていく必要があるのではないか?」というご質問でした。

確かに、同質性は非常に高いです。これまではほとんどの方が新卒入社で、大多数が男性でした。

ただし、そのままで良いという方針ではありません。キャリア採用の方が入社する際に、いろいろな市場の報酬レベルにもあわせられるように人事制度も変更しました。新卒の人数が減っているため、今後はキャリア採用の人数も増やしてきていく考えです。

おっしゃるとおり、確かに同質性の高い組織ですが、外国人の方は少ないながらにも入ってきています。みなさま、なかなか苦労はされていますが、彼らの価値観を私たちのほうから理解するように心がけています。

私も、企業風土における価値観がわからないこともありますが、その時は「なぜそう考えるのか?」と質問します。彼らの良いところは、必ず答えてくれるところです。時には歴史をかなり振り返らなければならない局面もありますが、彼らからの「価値観を変えていこう」という意志を、私自身はしっかり感じています。

質疑応答:海外投資家への訴求ポイントについて

質問者:質問というより意見ですが、金属の株に投資する海外投資家と話すと「御社が東予製錬所を持っているところが嫌いだ」と言います。

確かに製錬所は山に比べるとマージンが薄いのですが、スライド46ページの内容を前面に打ち出して、「東予工場がないとニッケル製錬に硫酸を送れないし、菱刈鉱山の金が活きてこない」といった話をするのはいかがでしょうか?

御社の株を勧めていて必ずぶつかるのが「製錬所があるから嫌だ」という言葉で、その場合、「今度はフリーポートも嫌だ」という話になってしまうのでしょうが、このスライドを前面に出してみると良いのではないかと思います。

清水:ご意見のとおり、東予工場はリサイクルを含んだサプライチェーンの中心です。サプライチェーンの総合力というのは当社の強みであるわけですが、その中心に東予工場があるということです。

当社としても、ここに価値があると考えていますので、いただいたお話を踏まえて、46ページに挙げたような東予工場の強みをより前面に打ち出して、アピールできるようにしたいと思います。

質疑応答:離職率が低い背景について

質問者:離職率が低い背景を教えてください。例えば、直近10年から20年のスパンで見た場合に、昔と今で何か違いがあるのかなど教えてください。

矢野:手元に過去10年の数字は持っていませんが、私は2019年に入社しました。その時に、離職率が3パーセントに届こうかという数字が出ているだけで、社内では「こんなに多くの社員が辞めるのか?」とかなり騒がれていました。それほど、歴史的に低い離職率を維持してきたことは事実だと思います。

私はその時に「いやいや、社外と比べると低いですよ」と申し上げたことを明確に覚えていますので、基本的に採用した社員は全員当社で働いてくれるものだと考えていました。

客観的に見て離職率が低い理由としては、住宅などいろいろな福利厚生がかなり整っていることが挙げられます。長く働くことを前提に設計された、さまざまな福利厚生制度が用意されています。

もしかすると辞めたいと思った社員が、辞めにくかったりすることもあるのかもしれませんが、本当に10年間働くことで新しい技術やいろいろな知識・スキルが身につくという体系であるため「10年間は、働かなければ損だ」という声は、今の若い社員からも聞かれます。いろいろな意味で、新入社員に対する教育体制が整っているため、低いのではないかと考えています。

ただし、先ほども申し上げましたが、現状では若干離職率が上がってきているため、対策していく必要があると考えています。

質疑応答:東予工場の実力について

質問者:先ほど東予工場のエネルギー効率がトップクラスというお話がありましたが、より具体的な内容をお聞きしたいです。例えば、サステナビリティを目的としてCO2の排出量などで測るとしたら、どのようなレベル感なのかなど、わかる範囲で教えてください。

清水:東予工場のエネルギー効率が世界最高レベルとしている点について、もう少し具体的にご説明します。

東予工場のエネルギーの需要量については、銅精鉱に入っている硫黄が自分で燃焼する熱や、酸化反応によって自分で燃えて溶ける熱があるため、外から入れる燃料は本当にわずかなものになります。

そのほか、酸素を供給するためには電気が必要ですが、そのような外部から供給する燃料を効率的に使用しています。

加えて、銅精鉱中の硫黄の燃焼エネルギーや、硫黄や酸素が酸化反応する時に発熱するエネルギーの活用や回収効率が世界トップレベルにあります。これらは精鉱バーナーの一本化などの、当社の技術の集積、積み上げにより可能となっています。

東予工場の精鉱バーナーは世界でもトップクラスの性能を持った設備ですが、オペレーションが非常に難しいため、なかなか他社が採用できず、ここも当社の強みだと思っています。

CO2排出量の対策については、東予工場では一部の熱供給設備で燃料を重油からLNGに転換することを進めています。製錬でのCO2削減はなかなかハードルが高いところですが、できることからコツコツと対応しているところです。

質疑応答:従業員意識調査結果への対応について

質問者:30ページの「あなたにとって魅力のある職場ですか?」という問いに対して、「どちらともいえない」も含めて肯定的ではない回答の比率が、離職率の低さと照らし合わせると、やや高い印象を受けます。ここに何かヒントがあるような気がするのですが、この肯定的ではない方々の問題意識とは、どのようなものがあるのでしょうか?

矢野:従業員意識調査の結果は、肯定的ではないというより「どちらともいえない」という回答が多いというのが事実です。

ここはまさに、「魅力的だ」と感じていないということだと思いますので、裏を返せば自由闊達な組織を求めているということではないかと分析しています。

「言いたいことが言えない」「相手によって自分が思っていることを伝えることができない」というところを問題意識ととらえて、自由闊達の組織風土をさらに浸透させる活動を進めています。人によって価値観が違うのは当然ですので、管理職層には異なる価値観を受け入れるように伝えています。

質疑応答:人材育成戦略について

質問者:18ページの資料について、分野別で人材育成のテーマがありますが、御社の事業戦略に照らした時に、この中で今後どのテーマに問題意識を持っていますか?

例えば、「銅鉱山のオペレーターシップを、これから取っていこう」となると、外部からは鉱山のエンジニアなどに少し課題があるように見えるのですが、どのような背景で、どのあたりに注力しようと考えていますか?

矢野:事業戦略上の課題については、どの職掌も採用は難しいのですが、一番採用に苦戦しているのはプラントエンジニアです。拠点が海外にもあるため、そこにプラントを造れば社員は実際にそこにいなければならないことになります。

これに対して、今の若い世代においては海外志向がかなり低くなってきています。そのような意味でも、当社は資源事業本部も金属事業本部もともに海外拠点がある中で、海外志向の高い人材を採用するというところが、まず難しい状況にあります。

さらに、このような資源や製錬の専門分野を勉強したい学生が減ってきています。そのため、少し違う専門分野の方に「こちらの分野の仕事もしてみませんか?」という提案もしています。日本国内の教育、学生が志向する学部が少しずつ変わってきているということもあるため、ここの課題感は非常に高く持っています。

質疑応答:女性の従業員比率を上げるための具体的施策について

質問者:ダイバーシティ&インクルージョンについて質問です。ご説明のとおり、御社の問題というよりは金属業界全般で、女性や外国人社員などの就労機会がなかなか少なかった状況で、そのような意味では、やっと今改革の途についたところだという印象を持っています。

足元に対して目標もきちんと高く掲げているところですが、管理職を増やすにしても、母集団を増やしていかないことには始まらないと考えられます。

先ほどのご説明の中でも、新入社員やキャリア採用の社員の中での従業員女性比率などを上げるべく、目標を設定されているということでしたが、具体的にはどのように間口を広げて取り組むことで、こちらの数字を具体化していくのでしょうか?

実際のこれまでの採用実態や、今後の計画に向けてどのようにその数字に達するまで確信度を高めるための取り組みができているのかなど、確認させていただきたいです。

矢野:女性活躍に向け、特に今後の間口の広げ方についてお答えします。当社では従来、技術系の学生を採用する際には特定の大学から採用していたのですが、現在は採用対象の大学を広げていこうと方針を変えています。

さらに、日本は理系の女性が少ないという問題があります。ただし、工学系の学部について、奈良女子大学は開設していますし、お茶の水女子大学は開設予定という新しい波もあるため、そのあたりを狙っていく戦略です。インターンシップを含めて、早めに当社のことを知ってもらい、当社に入社したいという志望度を上げていくための取り組みを行っています。

社内での女性管理職の育成については、残念ながら人数はそれほどたくさんいないため、個別に対応しています。例えば「管理職になると、このような仕事をしてもらいたい」ということを本人にも話し、上司にも伝えるかたちで、「この社員は将来的に女性管理職、役員になる人材なのか」といったことを、個別に対象者を挙げ、すべてバイネームで計画を立てています。そちらは私が担当しており、実際に現在もそのような会話を進めています。

質疑応答:管理職比率を向上させる取り組みについて

質問者:管理職比率などを上げていく対策として、さまざまな企業が数字を開示して取り組んでいるという点では、あまり他社と大きな差がないとすると、やはり本質的には人的資本への資本投下の投資効果を考える必要があります。どのように、生産性の向上、企業価値、株主価値の向上につなげていくか、仕組みを考えていくことになると思います。

優秀な人材を集めることで、成果につなげていくような仕組みを構築できているか、そこを確認していくことが大事だと考えられる中で、御社は今後の開示あるいは紐付け方として、目的をそこに置いて進めることが可能でしょうか? そのような意識はお持ちかというところを確認させてください。

矢野:企業価値を高めるためにダイバーシティをどのように進めていくのかについては、当社には元来、男女問わず優秀な人材にはがんばって力を発揮していただきたいという方針があります。

これに対し、今までの年功序列型の人事制度では、それがうまくいかないという部分があるため、まず人事制度を変えていく方針です。優秀な人材には、その人に適したポジションを与えて、その中で力を発揮してもらうように環境を整えることが一歩目です。今までそれができていなかったため、能力のある人にはそれなりの業務に従事していただくようにしています。

優秀な人材が当社で働くことで、最終的には36ページに書いたようにウェルビーイングの実現を目指しています。一人ひとりに「当社で働いて良かったな」「仕事をしてきて良かったな」「自己実現ができた」と感じてもらえることが、優秀な人材が会社の中で力を発揮する仕組み作りの土台だと考えています。

質疑応答:新卒採用戦略について

質問者:人材登用に関して、企業価値および株主価値を向上するためには、人的資本の配置が大事だと思う一方で、優秀な人材をマーケットからどう登用していくかがスタート地点になるかと思います。

その意味では、特に新卒採用において、非鉄製錬の分野だけではなく、例えば総合商社や石油の精製会社のようなところと比べて、御社がどのようなアピールができるかが重要になってきます。

他社および他業種と比べて、御社としてはどのような位置づけと評価しているのか、あるいは今後の戦略に関して教えてください。

矢野:実際に、新卒採用の人材は他業種の方と取り合いになっています。当社の社員の成長スピードに問題がないかについて、ちょうど課題として取り上げているところです。

商社などは非常に競争が激しい中で教育されているため、もしかすると当社よりも商社で働いたほうが早く成長できるのではないかと社員一人ひとりに思われてしまえば負けです。そのあたりの教育、育成のスピード感の部分は、これまで大切にしてきた10年間という当社の風土がありますが、それで本当に良いのか、検証が必要です。

今までの教育の仕方については、ゆっくり育てることで定着率が高かったという歴史もあったのですが、人によってはそこを変えていく必要があるのではないかというような対話が出ています。実際に制度としてどのような仕組みにするかという具体化はまだできていませんが、そのような話は出てきています。

質問者:先ほどのご回答の中で、海外志向の方があまりいないというお話でしたが、一方で、鉱山、製錬とは分野は異なるものの、総合商社に入社される方でかなり海外志向が高い学生もいると思います。

御社にも、「海外の各拠点においてこのように働ける機会がありますよ」というように、「住友金属鉱山に行けば総合商社とは違った成長やスキルが得られる」というアピールも戦略の1つになると思いました。御社に入社することで、オペレーターとしてのスキルの取得、向上など、そのようなところが実現できるというアピールです。1つヒントになれば幸いです。

矢野:おっしゃるとおり、当社にそのような仕事があるということのアピールが不足していることは事実です。当社としても課題意識がありますので、採用については、外向きの目線で企業ブランディングを進めていくということを始めたばかりです。

関連キーワード

関連記事