ビッグモーターとの取引で、損保ジャパンが堕ちた闇!

2023年10月13日 07:55

印刷

 保険は突発的な事態に備えた互助会のようなものだ。個人の生活に根付いた一般的なものとしては、生命保険・火災保険・自動車保険などがある。

【こちらも】損害保険料率算出機構、ビッグモーター問題で保険料への影響を調査

 生命保険は稼ぎ頭が死亡することで収入が途絶し、一家が路頭に迷わないように各人の判断で保険金額を設定する。火災保険は住宅という生活の基盤が火災等で失われた時のためにあらかじめ用意する。この2つが自分と家族を守る保険であるのに対して、自動車保険は加害者となってしまった際の賠償金としても意味合いが強い。

 保険の目的が違うため、契約の窓口にも特徴がある。生命保険には「ほけんのおばちゃん」のイメージがつきまとうから、対人関係型と言えるだろうか。火災保険は住宅ローンとの関連で金融機関との関わりが深い。自動車保険の場合は自動車修理を生業とする事業者などが主な代理店となっている。

 3種類の保険のうち、生命保険と火災保険の契約窓口は事故発生と保険金の請求金額に関わることがほとんどないのに対して、自動車保険は代理店である修理業者が請求金額に関与するところが違う。

 今回発覚したビッグモーター事件の最大のポイントは、業者の「お手盛りが可能」なことを、まざまざと世間に曝け出したところにある。修理業者の立場で考えれば、修理金額を膨らませれば売り上げが増えるわけだから、工賃を嵩上げしようという誘惑が相当働くということは容易に想像がつく。ビッグモーターの場合は、修理代金に下限の目標を設定していたようだから、修理の受付以降は「やりたい放題」で修理金額を嵩上げしていたようだ。

 修理が保険の対象外である場合、オーナーは自分の懐から支払うためにシビアに修理金額や内容をチェックして、時には修理範囲を縮小することもあるだろう。保険がからむ修理の場合は、免責金額以上の部分にオーナーの負担はないので、「言いなり」になってチェックが甘くなるのは自然な姿だ。

 今回の事態で得た最大の教訓は、代理店制度の問題を浮き彫りにした点にある。目の前に札束をチラつかせて「盗るな」と言っているようなものだから、根本的に問題がある。米国のブローカー制度を参考にして、代理店制度の抜本的な見直しをする好機であろう。

 損保会社は保険請求金額が妥当かどうか、修理内容と照合してチェックする立場だ。日本中の保険契約者の保険料をプールして、適切に管理する義務を負っていると言っても良い。その結果、保険料に余裕が出れば、保険料率を引き下げて契約者の負担を軽減することだって期待できる筈だ。

 ところが損保ジャパンの姿勢は真逆だった。19年3月にビッグモーターに与えた「完全査定レス」方式が、ビッグモーターの暴走を誘発し助長したからだ。ビッグモーターからの保険請求を損保ジャパンの調査員が査定しないとなれば、「やりたい放題になる」のは当然というよりは必然だ。「完全査定レス」が始まって以降、「修理金額の嵩上げ」が急激に増加していることを見ても明らかだ。

 損保ジャパンが保険請求の査定業務を放棄したのは、自社の懐とは関係ないと考えていた証左だろう。損保業務の本分を忘れた、呆れ果てた企業と言わざるを得ない。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事