出光興産、有機廃棄物を10日以内に堆肥化 事業化を検討 カナダ社と協働で

2023年6月30日 08:13

印刷

堆肥製造事業の資源循環イメージ(画像:出光興産の発表資料より)

堆肥製造事業の資源循環イメージ(画像:出光興産の発表資料より)[写真拡大]

 出光興産は28日、有機廃棄物を原料とした堆肥製造の事業化について、検討を開始したと明らかにした。同社と100%子会社の出光アメリカズホールディングス、カナダのクリーンテック企業Anaconda Systemsと協働で、6月から検討を開始している。事業化は、有機廃棄物を10日以内に堆肥化する技術が軸となり、2020年代後半に日本国内での初期プラント建設を目指すという。

【こちらも】出光興産、2050年ビジョン「変革をカタチに」のもと 既存エネルギーの安定供給と脱炭素社会の二兎を追う

 検討を始めた堆肥製造事業は、日本国内で排出される生ごみなどの食品廃棄物や、動物のふん尿、動物・植物性残渣を用いて堆肥に変換するもの。動物性残渣は一般的に動物の骨や魚の皮、貝殻などで、植物性残渣は、野菜くずや大豆やコーヒーかすなどが含まれる。そういった有機廃棄物を堆肥に転換する、国産堆肥の大規模製造を目指す。

 食品廃棄物や動物のふん尿などは現在、各自治体が主に焼却で処分している。ただ、そうした有機廃棄物は水分含有量が多いため、焼却に多くのエネルギーを要しており環境負荷も高い。それらを堆肥化することで廃棄処理エネルギーを減らし、コスト削減も図るという。

 堆肥変換には、Anaconda Systemsの「好気性発酵技術」を用いる。同技術は、独自の容器内堆肥化システムで廃棄物中の微生物の働きを高める環境を構築・制御し、10日以内の堆肥化を実現する。密閉設計の容器で、機械的な攪拌を行わずに堆肥化するため、匂いがなく、土壌や地下水の汚染の可能性もないという。

 Anaconda Systemsは2015年にカナダ・バンクーバで設立。17年にバンクーバの住宅地から数ブロック離れた場所に3.5エーカー(約1.4ヘクタール)の処理施設を設置している。現在では、毎月100万ポンド(約45.4万キログラム)を超える有機廃棄物処理の商業運転を実施。35年までには北米で50件のプラント建設・運営を目指している。

 出光興産の今回の取り組みは「2050年ビジョン」に基づくもの。現状の化石燃料を主とした事業ポートフォリオを転換するため、水素などカーボンニュートラルなエネルギー事業を含む、3つの事業領域に注力すると設定。その1つに、省資源・資源循環ソリューションの展開を掲げており、堆肥製造事業の検討に至っている。

 23年4月には、家庭ごみなど様々な廃棄物を原料とした水素製造事業の検討も開始。カナダでエネルギー事業を展開しているAzimuth Capital Managementを通じ、その出資先で廃棄物処理システムを持つH-Cycleと協働で検討を行っている。こちらも30年代前半に日本国内での初期プラント建設を目指すという。(記事:三部朗・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事