粒子が反粒子より多い謎解明へ マヨラナニュートリノの最新研究 東北大ら

2023年2月3日 16:11

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通常の2重ベータ崩壊とニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊の違い。後者の現象が確認されればマヨラナニュートリノの存在が確実となる。(画像: 東北大学の発表資料より)

通常の2重ベータ崩壊とニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊の違い。後者の現象が確認されればマヨラナニュートリノの存在が確実となる。(画像: 東北大学の発表資料より)[写真拡大]

 宇宙誕生時には粒子も反粒子も同じように生成されたと考えられているが、なぜか現在の宇宙では粒子のほうが圧倒的に多い。だがなぜそのような状態に至ったのかについては、謎のままである。これを「物質優勢宇宙の謎」という。

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 最初にできた粒子の数のほうが、反粒子よりも少しだけ多かったためと考えるかもしれない。粒子と反粒子同士が衝突して消滅した後、少しだけ数の多かった粒子がこの宇宙に残ったのだろうという推測だ。だが宇宙の生成メカニズムは、どうやらそんな簡単なものではないらしい。

 宇宙には粒子、反粒子の区別がない素粒子の存在が予測されている。それが「マヨラナニュートリノ」と呼ばれるもので、その発見は「物質優勢宇宙の謎」の解明の手掛かりとなるかもしれない。

 東北大学ニュートリノ科学研究センターを中心とする国際研究グループは、このマヨラナニュートリノの発見に繋がる最新の研究成果を発表した。

 現在の宇宙論では、宇宙誕生後の1秒間のどこかで、粒子と反粒子の数の均衡が破られたと考えられている。そしてその均衡を破ったのが、マヨラナニュートリノだという。

 このマヨラナニュートリノ発見のカギを握るのが、1つの原子核の中で2つのベータ崩壊が同時に起こる「二重ベータ崩壊」だ。二重ベータ崩壊では、電子2つと反電子ニュートリノ2つが放出される。ニュートリノがマヨラナ粒子であれば、電子2つだけを放出する(つまりニュートリノ放出を伴わない)特別な崩壊も起こりうる。

 今回の研究では、反ニュートリノ検出器「カムランド」の観測データから、マヨラナニュートリノが存在することで見える信号の崩壊半減期を、90%の信頼度で2.3×1026年以上と、これまでより2倍以上の精度で予測することに成功したという。

 マヨラナニュートリノ発見には至っていないが、発見により近づく成果が得られたものだ。研究グループでは、今回のプロジェクトの次期計画となる「KamLAND2- Zen(カムランド2禅)」を進めており、これが実現すれば、マヨラナニュートリノの発見にも繋がるものと期待している。

 なお今回の研究成果は、「Physical Review Letters」に掲載されている。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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