新日本科学のウナギ完全養殖にかかる期待

2023年1月6日 17:39

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新日本科学は鹿児島本社新社屋研究棟の増設も計画しており、1月に着工し2023年7月に完成予定となる。(画像: 鹿児島市の発表資料より)

新日本科学は鹿児島本社新社屋研究棟の増設も計画しており、1月に着工し2023年7月に完成予定となる。(画像: 鹿児島市の発表資料より)[写真拡大]

●新日本科学がウナギの人工生産に成功

 新日本科学は2022年12月12日、卵から人の手で育てる「人工生産」で育てたウナギの試食会を開催した。MBC南日本放送などが報じている

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 鹿児島県は、ウナギ養殖日本一で知られている。報道によると、鹿児島市に本社を置く新日本科学は、困難と言われてきたシラスウナギの人工生産に2014年から取り組み、2017年には世界で初めて地上での生産に成功したという。

 シラスウナギの養殖は、これまで稚魚を捕まえて行われてきたが、近年は思うように捕獲できず、価格も高騰を招いていた。卵からの完全養殖が実現すれば、ウナギの食文化を守ることだけでなく、経済効果も期待されるのか?

●絶滅危惧種のウナギ

 国際自然保護連合(IUCN)は、二ホンウナギを2014年6月に絶滅危惧種に区分した。ここまで数が減少した原因は、生育環境の悪化と乱獲と言われている。

 ウナギの漁獲・生産量(2020年)は中国が1位で、2位の日本を約15倍近く引き離している。

 土用の丑の日などでウナギが好きな日本人は、かつては世界の7割のウナギを消費していると言われていたが、現在はその比率は減少しているという。

●今後さらなる期待がかかる

 新日本科学は今回、ようやく100尾ほどの人工生産に成功したに過ぎないが、2026年には年間10万尾の生産を目標にしているという。

 今回のウナギ完全養殖成功は、近畿大学などが成功したクロマグロの完全養殖の再来と期待される。

 養殖クロマグロの出荷量は、この10年で年間10万尾程度増え、現在は年間約30万尾となっている。

 養殖に成功することで、絶滅危惧種から脱出できるわけではないという意見もある。供給を安定させるために、今後は養殖に名乗り上げる他の企業や自治体のバックアップも欠かせない。

 価格を安定させることも重要になり、道のりは決して平たんではない。

 だが新日本科学の株価は、シラスウナギの完全人工生産に成功したというニュースが発表された2020年には約15%上昇するなど、期待の高さが伺われる。

 ウナギの養殖が本格化することで、地元の町おこし、雇用創出、インバウンドだけでなく、海外への輸出といった経済効果も期待される。今後の行方に注目したい。(記事:森泰隆・記事一覧を見る

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