マイクロプラスチックの添加剤が魚類に蓄積することを確認 北大ら

2022年12月12日 16:30

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今回の研究の概要。マイクロプラスチックが食物連鎖を通して添加物を魚類に運ぶメカニズム(画像: 北海道大学の発表資料より)

今回の研究の概要。マイクロプラスチックが食物連鎖を通して添加物を魚類に運ぶメカニズム(画像: 北海道大学の発表資料より)[写真拡大]

 北海道大学、東京農工大学などは7日、マイクロプラスチックに含まれる添加剤が、食物連鎖などを通じて、魚類の体内に蓄積することを世界で初めて確認したと発表した。マイクロプラスチックに含まれる添加剤は、有毒で食物連鎖を通じた人体への影響が懸念されるという。

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■マイクロプラスチックとは?

 マイクロプラスチックは、海洋プラスチックゴミが紫外線や波によって細かく砕かれたものだ。その大きさは直径5mm以下ほどしかない。

 このマイクロプラスチック及びこれに含まれる添加剤は、有毒で深刻な環境汚染を引き起こしているが、食物連鎖を通じて人体への影響が懸念されている。

 マイクロプラスチックが魚の体内に取り込まれる経路には、2つが考えられる。1つは海水から直接取り込まれる経路で、もう1つは食物連鎖を通じて取り込まれる経路だ。

 研究グループは、マイクロプラスチックに含まれる添加剤が魚の体内に蓄積するにあたって、これらの経路がそれぞれどの程度寄与しているのか、マイクロプラスチックに含まれる添加剤ごとに世界で初めて明らかにした。

■水層実験によって添加剤ごとに寄与度を測定

 研究グループは、シモフリカジカを、マイクロプラスチックを添加した海水中で飼育した場合と、マイクロプラスチックを摂取させた餌(イサザアミ類)を与えて飼育した場合とで比較。

 その結果、臭素系難燃剤について、前者と比べて後者において、筋肉組織から非常に高濃度で検出された。

 これに対して、紫外線吸収剤については、2つの経路で共に筋肉組織から高濃度の紫外線吸収剤が検出されたが、2つの経路で有意差は認められなかった。

 添加剤の種類によって、このような差異が生じたのは、それぞれの化学的な性質の違いによるものと考えられるという。また添加剤の蓄積は、肝臓においてもみられた。

 なお臭素系難燃剤は、プラスチックを燃えにくくするための添加剤で、紫外線吸収剤はプラスチックが紫外線によって劣化するのを防ぐための添加剤だ。

 研究グループでは今後、食の安全を確保するためにも、マイクロプラスチックが海洋生態系に与える影響をさらに詳しく理解する必要があるとして、多様な海洋生物について、同様の検証を進めていきたいとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る

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