エジプトの奇妙な石、超新星爆発由来であることが判明 ヨハネスブルグ大の研究

2022年5月17日 16:37

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 1996年にエジプトで発見された「ヒュパティアストーン」は、微細ダイヤモンドを含み、極めて珍しい化学組成だったが、起源は謎に包まれていた。ヨハネスブルグ大学の科学者らによると、この石はIa型超新星爆発で生成された物質が起源である可能性が高いという。研究論文は、科学ジャーナル・イカロスで公開されている。

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 Ia型超新星爆発は、連星系をなす白色矮星が起こす大爆発だ。相手の星から吸収したガスにより、太陽の約1.4倍の質量に至った際に発生する。あらゆる銀河で1世紀に1、2度出現し、ピーク時の絶対等級がほぼ一定のため、宇宙の膨張状態の研究にそれらの観測データが活用されてきた。

 ヒュパティアストーンはこれまで、アルゴン同位体分析の結果、既知のタイプの隕石や彗星由来でないことが判明している。その後の分析で、太陽系には存在しないリン化ニッケルが見出され、その由来の謎は深まるばかりであった。

 ヨハネスブルグ大学の研究者らは、新たに陽子線分析を実施。シリコン、クロム、マンガン含有量が異常に低く、鉄、硫黄、リン、バナジウムが異常に高いことを突き止めた。

 この石の元素パターンは、銀河系の一般的な星間物質の組成とは違い、赤色巨星のそれとも異なる。またリン化ニッケルが見い出されたことで、II型超新星爆発由来でもないことも明らかとなった。

 宇宙の鉄のほとんどはIa型超新星爆発に由来し、この石の鉄含有量の多さに合致する。また、アルミニウム、リン、塩素、カリウム、銅、亜鉛の含有量が、Ia型超新星爆発モデルで予測される量の10倍ないし100倍にも達し、むしろ白色矮星のそれに近い。その結果、この石は白色矮星に由来する物質と、それがやがてIa型超新星爆発に至り、それによって放出された物質を継承していると結論づけられた。

 銀河系の遥か彼方で、遥か昔に起きたIa型超新星爆発により弾き飛ばされた物質が、途方もない時間をかけて太陽系に飛来。地球の引力に捉えられ、たまたまエジプトに落下したのであろう。これは地球で発見された最も長旅を経験した石なのかもしれない。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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