ホンダとソニーが新会社設立、ソニーのEV事業化に続くサプライズとホンダの決意・・

2022年3月25日 15:52

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ソニーが発表した試作車両「VISION-S」(画像: ソニーグループの発表資料より)

ソニーが発表した試作車両「VISION-S」(画像: ソニーグループの発表資料より)[写真拡大]

 名前を聞くだけで、人々に何らかの期待を抱かせるメーカーは多くない。年代や居住地域の関係があるにしても、ソニーグループ(ソニー)やホンダの出す商品に、無関心でいられない人は少なくない筈だ。

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 その両社が4月にも新会社を設立して、新時代のモビリティやモビリティサービスを進化させるための、協力を開始すると発表したのは3月4日のことだ。ソニーとの新会社設立を発表した会見で、ホンダの三部敏宏社長は「21年の夏にホンダが提案して、両者の若手社員が中心となる次世代モビリティのワークショップを立ち上げ、同年末には社長同士で検討を加速した」と語っている。

 こんなビックプロジェクトを、若手が4カ月の期間でまとめ上げることは考えられない。20年にソニーが米ラスベガスで開催されたCES(コンシュマー・エレクトロニクス・ショー)で、「VISION-S PROTOTYPE(以後はVISION-S 01と記載)」を発表した前後から、相当の交流が行われていたのだろう。

 人々の期待の大きさは、ソニーが「車を売るつもりはない」と公式にアナウンスしているにも拘わらず、「欲しい」とか「乗ってみたい」という声が、大きく伝えられていたことでも分かる。EVを発表しながら「車を売るつもりはない」と言っていたのは、周りのムードが既成事実化することを嫌ったたためだろうが、2年後には翻意することになった。22年に開催されたCESの記者会見で、ソニーの吉田憲一郎社長が、EVを事業化させるため「ソニーモビリティ」を設立すると発表した。

 内燃機エンジンに比べて大幅に部品点数が少ないことから、「参入障壁は低い」と言われていたEVであっても、プランを的確に反映した実車を製造した上に、自前のネットワークで販売を行い、メンテナンスに応じられる体制を事業として成り立たせることは容易ではない。

 いまやEVの旗頭のような扱いを受け、株式の時価総額がトヨタを圧倒しているテスラが、07年に英ロータスの車体と電動のパワートレインを合体させたモデルを、フランクフルトモーターショーに出品したものの、「EVという得体の知れないクルマを作り始めた新興企業の1社」という扱いだった。年間の純利益がやっと黒字になったのは、創業から17年を経過した20年12月のことだ。

 脱炭素社会への機運の高まりがEVへの認識を大きく変えた現在、新会社に与えられた時間は長くない。わずか3年後の25年には、独自ブランドのEVが市場に投入される構想だ。

 20年4月1日に道路運送車両法が改正施行されて、自動運行装置を保安基準の対象装置とすることが認められた。ホンダが自動運転システムの「Traffic Jam Pilot」で、国土交通省から世界で初めて自動運転レベル3の型式指定を取得したのは20年11月だから、ソニーが「VISION-S 01」を発表した期間とシンクロする。

 ホンダの代表者が21年4月に八郷隆弘氏から三部敏宏氏に交代したことも見逃せない。73年前にHondaを創業した本田宗一郎氏が内燃機エンジンの魅力を社会に大いにアピールしたのに対して、就任間もない時期に三部社長が表明したのは「エンジン車の発売を40年に全面的に停止する」ことだ。

 両社にとって、非常に濃密な2年間だったことに気付かされる。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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