ボリソフ彗星のような星間彗星、実は珍しくない存在か ハーバード大の研究

2021年8月25日 15:20

印刷

渦巻銀河の横を通過するボリソフ彗星と太陽に最も接近した際のボリソフ彗星  (c) NASA

渦巻銀河の横を通過するボリソフ彗星と太陽に最も接近した際のボリソフ彗星  (c) NASA[写真拡大]

 2019年8月30日、ボリソフ彗星がこれまでに発見されたことのない新天体であることが明らかになった。この彗星が大きな話題を呼んだ理由は、その起源が太陽系外にあったことによる。

【こちらも】太陽系外彗星ボリソフから異常レベルの高濃度COガスを検出 NASAの分析

 はたして、彗星が太陽系内を起源とするのか、太陽系外を起源とするのかはどのようにして判別できるのだろうか。実はこれは天文学者にとっては、いとも簡単に解決ができる問題なのである。つまり、彗星がたどってきた軌道を調べれば、それが楕円軌道なのか双曲線軌道なのかは、比較的たやすく識別ができる。

 楕円軌道であればその彗星は太陽系を周回しているため、太陽系内を起源としていることになる。双曲線軌道であれば、太陽系を周回することはなく、1度は太陽のそばを通過するが、太陽から離れれば2度と太陽系には戻ってこないからだ。

 ボリソフ彗星は発見当時、非常に珍しがられたのだが、最近の研究によれば、太陽系外を起源とする彗星はさほど珍しい存在ではないかもしれない。ハーバード・スミソニアン天体物理センターは8月23日、ハーバード大学の研究者らがボリソフ彗星の観測結果を分析した内容を発表。銀河系全体に存在している炭素や酸素の量を考慮すれば、太陽系外にはかなりの星間天体が存在し、そのサイズ分布については非常に不確実な要素が含まれているとの見解を明らかにしている。

 では、そんなにありふれた星間天体がなぜこれまで発見されなかったのだろうか?この疑問に対しては、研究者たちは人類がこれまでそのような暗く微小な天体を観測できるテクノロジーを持ち合わせていなかったからだと主張している。

 今後は、2022年に運用が始まる口径8.4mの可視光赤外線望遠鏡を擁するヴェラC.ルービン天文台での観測が、このような星間天体の発見を容易にするとの見解も示している。またTAOSIIと呼ばれるプロジェクトでは、恒星の前を通過する光を発しない1km程度の小さな星間天体の分布測定が計画されており、これらの活動によって多数の太陽系外の星間天体が発見される日がやがてやってくるだろう。(記事:cedar3・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事