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相場展望7月1日 米国株は好需給で循環取引(景気敏感⇔ハイテク)が続く 日本株は閑散相場で身動きとれず
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)6/28、NYダウ▲150ドル安、34,283ドル(日経新聞)
・最近、上昇が目立っていた景気敏感株に利益確定売りが膨らんだ。
・一方、米長期金利低下で、半導体株などハイテク株や高PER(株価収益率)銘柄に買いが入り、ナスダックは史上最高値を更新した。
【前回は】相場展望6月28日 (1) 株主総会後~7月上旬は、株価軟調を予想(拾い場) (2) 7月中旬以降は、四半期決算発表を材料に上昇予想
2)6/29、NYダウ+9ドル高、34,292ドル
・米景気の回復を示す経済指標の発表を受け、消費関連株の買いが目立った。米長期金利が心理的節目の1.5%を下回って推移したため、ハイテク株の一角が上昇し、ナスダックは史上最高値を更新した。
・また、増配発表の銀行株が買われ、NYダウを押し上げた。
・しかし、NYダウは5月につけた過去最高値に迫っており、利益確定の売りが出て上値は重かった。
3)6/30、NYダウ+210ドル高、34,502ドル
・ADP雇用者数が市場予想を上回り、米労働市場に改善に伴う景気回復期待が高まった。
・雇用増に伴い個人消費が強含むとの見方から、景気敏感や消費関連株への買いが目立った。
●2.米国株は、好需給で循環取引(景気敏感株⇔ハイテク株)が続く
1)労働局発表の雇用統計が7/2に公表されるが、6/30発表のADP雇用者数が市場予想を上回ったことから、非農業部門の雇用者数は約70万人増と市場は予想している。雇用関係は改善が続くが、FRBが重要指標としている雇用者数がコロナ前と比べまだ約900万人減少したままであることから、FRBがテーパリング(金融緩和の縮小)開始を前倒しする可能性は低いと思われる。
2)米企業の4~6月期決算発表シーズンを迎えるが、企業業績は景気回復を受けて好調なようである。また、FRBによる毎月1,200億ドルの市場投入が続いている中、過剰マネーの増加にも支えられ米国株式市場は好需給が続いている。
3)米国株式市場は好調だが、牽引役は景気敏感株とハイテク株が交替しながらの循環売買になっている。ある意味、方向性が出しにくい気迷い状況にあるとも言えよう。いずれにしても、7/2の雇用統計発表まで、身動きが取れにくい環境が続くと思われる。
●3.カプラン米ダラス連銀総裁「テーパリング開始は遅いよりも早い方が良い」(フィスコ)
●4.米6月ADP民間雇用者数69.2万人増と、予想60万人増を上回る伸び(ブルームバーグ)
1)米労働市場の回復が一段と進展していることを示唆。
2)増分の内訳は、娯楽・ホスピタリティで33.2万人、ヘルスケア9.3万人。
3)米国・労働省の6月雇用統計の発表予定は7/2。
●5.米6月消費者信頼感指数は127.3と、予想119.0・5月117.2を上回った(フィスコ)
1)パンデミック前の高水準を回復
●6.米ケース・シラー住宅価格、4月前年比+14.9%上昇し、15年ぶり高い伸び(ロイター)
1)ロイターの予想は+14.5%だった。
2)全国的な住宅価格の高騰は、供給が限られていることが主な要因となっている。
●7.米4月FHFA住宅価格指数は前月比+1.8%、予想+1.6%・3月+1.4%を上回る(フィスコ)
1)米連邦住宅金融局(FHFA)が発表した4月指数は、過去最大を記録。
●8.米5月中古住宅販売製薬指数は前月比+8.0%、予想▲1.0%・4月▲4.4%(フィスコ)
●9.米ユナイテッド航空は、過去最大規模の旅客機270機を発注(ロイター)
1)国内線向けの大型旅客機を揃えることで、新型ウイルスのパンデミック後の成長加速を図る。
2)発注機種は、ボーイング737MAXを200機、エアバスA321ネオを70機。総額は300億ドルで、国内線の座席数は約30%増加し、競争力向上につながるという。
●10.米国・台湾は、貿易・投資協議を5年ぶりに再開、半導体供給網等で協力強化(時事通信)
●11.米ロビンフッドは米金融当局に制裁金支払、過去最高額の7,000万ドル(ブルームバーグより抜粋)
1)金融取引業規制機構(FINRA)から、2020年3月に起きたロビンフッドのサービス中断を巡る監督不備と投資初心者への高度なオプション取引を容認したと指摘。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)6/28、上海総合指数▲1安、3,606(亜州リサーチ)
・国内発の新規材料が乏しい中、週内に公表される経済指標や政治イベントの開催が気掛かり材料として意識された。
・6/30に公表される6月製造業PMIについては、5月実績からやや低下すると予想されている。
・また、7/1は中国共産党創立100年の式典が北京市などで行われる予定。
・小高くスタートしたが、金融株が下落を主導し様子見ムードが漂う流れとなった。
2)6/29、上海総合指数▲33安、3,573
・中国の経済指標の発表が不安材料として認識された。
・6月製造業PMI発表が6/30、5月実績からやや低下するとの予想を懸念した。6月の月次経済報告が総じて弱い内容だっただけに、足元の経済動向を見極めたい、とする流れが広がった。
・新型コロナ変異種が流行し、再び行動規制を強化していることも懸念材料とされ、経済回復の鈍化が警戒された。
3)6/30、上海総合指数+18高、3,591
・中国景気の先行きが楽観視される流れとなった。世界銀行は中国の2021年国内総生産(GDP)成長率を8.1⇒8.5%に上昇修正した。
・中国共産党100周年を明日に控え、堅調に推移した。
・中国経済指標は、6月製造業PMIはやや上振れる反面、非製造業PMIは下振れ。
・業種別では、半導体などハイテク関連の上げが目立ち、資源・素材株も高かった。
●2.中国当局は、国営の中国中信集団に対し、中国華融資産管理の財務調査を指示
1)華融は、中国国有の不良債権受け皿会社である。(ブルームバーグより抜粋)
2)華融の先行きを巡って、歴史的なデフォルト(債務不履行)に向かいかねないとの憶測が高まっており、華融の社債価格が安値を更新している。
●3.中国3人っ子政策、出生率の大幅な押し上げ効果見込めず(ロイター)
1)格付け会社フィッチ: 出生率大幅上昇無く、人口の伸びの減速を止める可能性低い
2)格付け会社ムーディーズ:出生率を支える効果はあるが、出生率を劇的に変化させる可能性は低い。
●4.世界2位の水力発電ダム・白鶴灘水力発電所が6/28に部分操業開始(AFP)
1)発電能力は1,600万キロワットで、1位は中国の三峡ダム。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)6/28、日経平均▲18円安、29,048円(日経新聞)
・米国市場でハイテク株や半導体株が下げた流れを受け、東京市場でも値嵩株の半導体株が売られ、相場の重荷になった。
・一方、ワクチン接種の進展で経済正常化するとの見方から、鉄鋼・海運・銀行といった景気敏感株が買われた。
・ただ、東証1部売買代金は1兆9,680億円と閑散で、今年5番目の薄商い。
2)6/29、日経平均▲235円安、28,812円(日経新聞)
・新型コロナ・インド型の感染拡大への懸念がくすぶり、景気敏感業種を中心に売りが広がった。
・本日は3月期の期末配当権利落ちで、日経平均を▲28円程度下押しした。
・6/30に中国6月製造業購買担当者景況感(PMI)、7/2に米国6月雇用統計の発表前もあり模様眺めのムードが漂った。
3)6/30、日経平均▲21円安、28,791円(日経新聞)
・国内の新型コロナ変異株の感染を巡る動向や、中国経済の先行き不透明感から、主力銘柄に売りが出た。中国6月購買担当者景気指数(PMI)が、製造業、非製造業共に前月を下回った。中国経済に連動する景気敏感株が売られた。
・心理的な節目29,000円を前に、上値の重さを嫌気した売りも出やすかった。
●2.日本株は、閑散相場で身動きが取れない状況で、外資勢による仕掛け待ち
1)外資系先物の買い残高枚数は、14.5~16.5万枚の間を往来しているだけである。このゾーンを上にも下にも放たれない状況が続いている。
2)米国FRBと違って、日本は日銀のETF購入が停止され、市場に余剰マネーが流入してこないことも関連していると思われる。
3)7/2の米雇用統計の発表を受けた米国株式市場の反応を待つ状況にあると考えられる。
●3.政府は通商白書で、半導体など重要物資の先端技術開発や生産基盤整備を提言(NHK)
1)特に、経済と安全保障を一体とした経営を求めている。
●4.日本でも木材価格急騰(南日本新聞)
1)6月杉の平均落札価格は、1平方メートル当たり16,800円と3カ月で+6割高と25年ぶりの高値。5年前の価格比で+8割高。
2)値上がりの要因は、(1)米国で経済回復が進み住宅ブーム、(2)中国の木材需要の高まり。
3)米国の木材需要は落ち着いてきたが、中国の動きが収まらない限り、争奪戦は終わらないという。
●5.水素1回の充填で、1,040km走行し世界新記録(NHK)
1)福島県で作られた水素を充填した燃料電池車で6/28、いわき市⇒東京・豊洲を走行
●6.英国・貿易相は、「2022年内にTPP加盟合意」期待、中国のTPP参加は難色(日経新聞)
●7.企業動向
1)三井住友FG フィリピン銀行大手「リサール商業銀行」に100億円出資(ロイター)
2)コマツ 中国建機需要は想定以上に減少、市場は下降局面に(ブルームバーグ)
中国の油圧ショベル需要は前年同月比、4月▲7%減、5月▲26%減
3)スギ 2021年3~5月の売上高が出店攻勢続き、過去最高(朝日新聞)
4)富士通 スパコン「富岳」が3期連続の世界首位(日経新聞)
5)電通 本社ビルを3,000億円程度で売却を検討(NHK)
6)日立製作所 医療分野(細胞、遺伝子解析など)を強化(NHK)
7)ヤマハ発動機 新明和工業と次世代小型機開発の共同研究(Aviatin Wire)
8)HIS 本社社屋を325億円で売却し、賃借する(IT media)
9)オンキョー 株主総会でAV事業売却可決、7月末上場廃止(産経新聞)
10)キオクシア 9月にも株式上場、旧:東芝メモリ(共同通信)
●8.企業業績
1)スカイマーク 2021年3月期は赤字幅が拡大し純損失▲163億円(共同通信)
2)ピーチ 2021年3月期最終赤字▲295億円、債務超過。ANA傘下(読売新聞)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・6502 東芝 キオクシア(旧:東芝メモリ)上場期待。
・7701 島津製作所 医療分析機器に期待。
・7912 大日本印刷 半導体関連に期待。
著者プロフィール
中島義之(なかしま よしゆき)
1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou
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