イエレン米財務長官の発言から始まった「一時的な」リスクオフ相場と今後の展開 前編

2021年6月22日 08:06

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 6月21日の日経平均株価は、1,000円近い暴落を演じたが、5月3日に収録されたイエレン米財務長官のインタビュー内における「利上げ」発言が「終わりの始まり」であることは、5月20日の記事「バフェット氏に引導? バリュー投資の終焉と緩和バブルの副作用(完)」に記載のとおりである。つまり、金融緩和の終了(テーパリング)予告であった。

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 もちろん、アメリカにおけるFRB(連邦準備理事会)だけではなく、世界各国にある中央銀行は政府と一定の距離を置くべきとされているため、米財務長官がFRBの政策に影響を与えることは無いとされている。しかし、アベノミクス・第一の矢として放たれた日銀の大規模緩和を見れば分かるように、中央銀行は完全に独立性を担保された機関ではない。FRBも日銀も、人事権は政府にあるためだ。

 そもそも現イエレン米財務長官は前FRB議長である。そして、イエレン氏のバトンを引き継いだのが、現パウエルFRB議長なのだ。パウエル氏は、イエレン氏の同僚として、共通の見解を持ち、リーマンショック後の金融緩和(QE)のテーパリングに見事成功した経験を共有しているのだ。そんなパウエルFRB議長の足を掬うような発言をするわけも無い。

 そんな、イエレン米財務長官は、金融政策に対して超ハト派のスタンスであった。市場と丁寧に対話を続けながら、発言にも注意をし、緩やかに「利上げ」を成功させてきたのである。FRBの政策には影響を与えないとはいえども、それだけセンシティブであるはずの「利上げ」に言及したのだ。

 ともあれば、イエレン米財務長官の「利上げ」発言の近い将来において、パウエル議長によるFRB会合(FOMC)においても「利上げ」についての見解が示されることは明確であった。そして、先週のFRBの会合で将来的な「利上げ」が発表されたのである。

 もちろん「利上げ」に関する言及があれば、株式市場は「一時的に」リスクオフとなって当然なのであるが、「一時的に」というのが重要だ。「利上げ」による金融引き締め懸念が、株式市場の暴落を引き起こす可能性があることについては、過去の「バーナンキ・ショック」にて十分承知しているのである。それでは、リスクオフを持ち直す次の一手は何であろうか。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る

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