三菱自動車、選択と集中による構造改革と重点事業の推進で収益改善目指す

2020年12月16日 07:49

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 三菱自動車工業は7日、中期経営計画における構造改革の一環として、550人の希望退職者の募集を行ったところ654人の応募があり、2021年1月31日付で退職する予定であると発表した。

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 三菱自動車は1964年、三菱重工内に三菱自動車販売が設立されたことに始まり、1970年に独立して三菱自動車工業が誕生した。2016年に燃費不正が発覚し経営危機に陥り、日産が34%の株式を取得。カルロス・ゴーンが会長に就任し、日産、ルノーとの3社連合で再建を推進してきた。カルロス・ゴーンが会社法違反で解任され、コロナ禍の影響の中再び赤字に転落した三菱自動車の動きを見ていこう。

■前期(2020年3月期)実績と今期見通し

 前期売上高は2兆2,703億円(前年比9.7%減)、営業利益は前年よりも990億円減の128億円(同88.6%減)、純損益は258億円の赤字であった。

 営業利益減少の要因としては、売上台数減・車種構成変動で505億円、前年よりも円高(1ドル111円->109円、1ユーロ128円->121円、1オーストラリアドル81円->75円)により451億円、研究開発費・間接部門労務費の増加により322億円の減益であった。

 一方、資材費・工場経費などコスト削減で160億円、販売費削減で128億円の増益であった。

 純損益赤字の要因としては、前年に比較して持ち分法投資損益の悪化が213億円、税金繰延資産の取崩などが440億円発生したため。

 今上半期(4-9月)実績は、売上高が5,749億円(前年同期比49.0%減)、営業損益は売上台数減・車種構成変動で前年同期よりも928億円悪化して826億円の赤字、純損益は生産資産減損1,163億円計上により2,125億円悪化し2,099億円の赤字であった。

 今期は売上高1兆4,800億円(前年比34.8%%減)、営業損益は1,400億円の赤字、純損益は3,600億円の赤字を見込んでいる。

■中期経営計画(2021年3月期~2023年3月期)による推進戦略

 従来の全方位の拡大戦略を見直し、選択と集中による構造改革と重点事業の推進により、2023年3月期営業利益500億円への収益改善を目指し、次の戦略を推進する。

●1.構造改革

 ・希望退職募集や人員の適正化による間接労務費減、生産体制整備による減価償却費、開発費や一般管理費減により固定費の20%削減。

●2.重点地域戦略

 ・現地生産の拡大、ディーラー網整備などASEAN事業の重点強化。
 ・生産ラインの統合、固定費削減により国内事業の安定黒字化。

●3.商品・技術戦略

 ・独自技術、パートナーとの技術融合により、プラグインハイブリッド車、電気自動車など環境対応車のラインアップ強化。

●4.アライアンス活用と協業強化

 ・日産、ルノーとのアライアンスでOEM事業の拡大、自動運転、コネクテッド、EVでの協業深化。
 ・中国広州汽車と新型EVの共同開発。
 ・三菱商事とASEAN強化、南米、新興国での市場開拓に向けての協業強化。

 全方位拡大戦略から転換し、選択と集中による構造改革と重点事業の推進により収益改善を目指す三菱自動車の動きに注目したい。(記事:市浩只義・記事一覧を見る

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