HIS、コロナ来店減を接客DXで乗り切れるか

2020年10月8日 08:51

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接客DXの概要。(画像: エイチ・アイ・エスの発表資料より)

接客DXの概要。(画像: エイチ・アイ・エスの発表資料より)[写真拡大]

 旅行会社大手のエイチ・アイ・エス(東京都港区)は5日、「接客DX(デジタルトランスフォーメーション)」を開始すると発表した。運営する旅行予約サイトのスマートフォン版で、チャットボットと有人を組み合わせた接客を行う。同社は新型コロナウイルスによる来店減をカバーしようと、「オンライン販売の強化」を掲げている。

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 接客DXでは、24時間チャットボットがユーザーの問合せに対応する。チャットボットとの対話で得たデータを活用し、最適なコンテンツの配信も行う。AIでは対応しきれない、より細か相談や対応は有人チャットで行う。

 さらに丁寧な接客も、デジタル空間で行えるようにした。HIS店舗接客スタッフが「ビデオ接客」を行い、資料を提示したり、細かな相談にのって来店した時と同じレベルの「おもてなし」を再現する。

 ユーザーは店舗へ出向く必要がなく、待たされることもない。チャット接客で得た情報も連携されているため、パーソナライズされた提案や対応を受けることができる。

 コロナの影響で劇的に落ち込んだ旅行人口は底を打ってわずかに浮上している。だが、消費者が「実店舗での接触」を忌避する傾向は継続中だ。これを受け、HISは本社内にDX推進本部を設置。チャットボットと会話しながら商品が買えるチャットコマースを運営するジールス(東京都品川区)と協業し、シームレスな接客DXを設計した。

 HISの業績は、コロナ以降大きく悪化している。旅行総取扱高速報によると、3月は前年同月比27.2%。6月には同1.4%となっている。現在はわずかに上昇しているものの、8月も同3.2%と依然厳しい状況だ。

 国内旅行は、GoToトラベルキャンペーンで一時的に回復傾向が見られたが、沖縄県の緊急事態宣言の発表や、東京除外が響いて、回復は限定的となった。訪日旅行も、多数の国が海外渡航制限措置を継続したため、HISも8月の取扱高は同0.7%と大きく落ち込んだままだ。

 リアルな体験に価値がある「旅行」だが、前段の接客だけでも、デジタル空間にシフトするのが喫緊のテーマだ。HISは、新たなテクノロジーを活用したビジネスモデルの練り直しに、力を注いでいる。(記事:土佐洋甘・記事一覧を見る

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