インフルエンザが新型コロナの拡散を2.5倍加速 独研究所など

2020年9月19日 16:52

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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の再拡大が秋以降に発生する可能性が懸念されるなか、独マックス・プランク研究所は14日、インフルエンザの拡散が新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的流行)を加速させたと発表した。

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■数学モデルで予測

 新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)は、インフルエンザウイルスと同様に、呼吸器疾患を引き起こすウイルスだ。新型コロナウイルス感染症防止のために、ロックダウンやソーシャルディスタンシング戦略を各国が採用する一方で、感染力はインフルエンザウイルスほどは強くない。インフルエンザウイルスは、新型コロナウイルスよりも平均で3倍の感染力をもつという。

 マックス・プランク研究所と仏パスツール研究所の研究者らから構成されるグループは、新型コロナウイルスとインフルエンザの重感染の効果を調査した。仏数学者の協力をえて、新型コロナウイルスの伝染や致死に関する既存の疫学モデルの改良が試みられた。モデルを改良するために、ワクチン接種プログラムの有効性やインフルエンザのような季節性の感染症に焦点が当てられている。また現実的な事象に近づけるために、感染者が別の人に感染させる時間や、ロックダウン、ソーシャルディスタンシング戦略などの対策も考慮されたという。

■インフルエンザワクチンが再拡大防止の鍵か

 改良された数学モデルを用いて再現されたパンデミックの状況下で、季節性のインフルエンザウイルスの影響が検証された。その結果、インフルエンザウイルスが新型コロナウイルスの感染力を2~2.5倍程度増幅させたことが明らかになった。インフルエンザの収束により、新型コロナウイルス感染症患者の減少が確認されたという。このモデルを4カ国の状況と照らし合わせたところ、致死データとも整合的だと判明した。

 課題も残る。インフルエンザ患者が新型コロナウイルスを別の人に伝染しやすいかや、インフルエンザが新型コロナウイルスを感染しやすくするかなどが不明だという。ただし、新型コロナウイルスがヒトに侵入する際に窓口となる「受容体」の産生を、インフルエンザウイルスが加速させることを別グループが研究で明らかにしている。

 研究グループは、新型コロナウイルスの拡大を防止するために季節性インフルエンザに対するワクチン投与が重要だとしている。

 研究の詳細は、プレプリントサーバーmedRxivに7日付で掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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