新型コロナの陰で秘かに迫る危機! 予防接種が後回しにならない手立てが必要だ

2020年9月4日 08:04

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 新型コロナウイルスへ向き合う都道府県知事の姿勢には、相当の開きがある。お盆の時期にも移動は控えて欲しいとメッセージを送る知事もいれば、帰省者を穏やかに迎えて欲しいと言う知事もいた。

【こちらも】コロナ感染拡大によるワクチン接種遅れではしかが大流行する恐れ

 発症前でも感染の可能性があるという新型コロナの特性と、重症化率や死者が少ない状態を維持している日本の実態を勘案すれば、今後は共存が避けられないと腹を括った対応が必要だ。

 何の補償もなしに休業要請が出来ないと考えることは当然だが、事業主に対して1日1万円程度の補償で、休業なり時間短縮なりを要請することが、どれほど酷なことかと考えるべきだろう。このままでは事業継続が困難な事業主が続出して、コロナ後の街並みは憩いの名店が軒並み廃業した殺伐としたものになることだって懸念される。

 ところが、「不要不急の外出を控えて欲しい」と強調されて困惑しているのは、飲食店やサービス業の事業者だけとは限らない。

 予防接種を必要とする乳幼児を抱える親が、予防接種の行き帰りに新型コロナに感染することを恐れて、接種を先延ばししている傾向が顕在化して来たようだ。

 確かに出歩かなければ感染リスクは上がらないだろうが、予防接種は後からまとめてやれるものではない。

 出生時に母親から受け継いだ免疫は、出生後早期に失われて行く。このため各種のワクチンをあらかじめ接種することで、細菌(病原体)やウイルスに対する免疫(抵抗力)を備えさせて、病気にかかりにくくする。そのため生後2カ月(もっと早い場合もある)を目途にして始める定期的な予防接種は欠かせない。接種が遅れると免疫の形成が遅れ、症状が重くなる懸念があるからだ。

 都道府県の知事には幅広い視野で地域の実情を把握して、乳幼児がリスクなく予防接種を実施できるように心を砕き、広報活動を充実させて父母の懸念を払拭する努力が求められる。

 更に、日本では1956年以降発生していない狂犬病に対する懸念もある。

 狂犬病を発症したイヌは凶暴化して人や動物に咬みつくようになり、唾液からほぼ確実に狂犬病に感染すると言われる。人が発症すると脳神経が侵され、全身の筋肉麻痺や精神錯乱症状を起こして死亡する。治療法がない病なので、予防することが大事だと捉えられて、予防接種は飼い主の義務ともなっている。ところが、毎年4~5月に設定されている予防注射月間の接種率が今年は大幅に低下し、40%を下回っていると指摘する向きがある。

 1923年の関東大震災後には狂犬病の予防接種に手が回らなくなり、東京・大阪を中心に発症が頻発したという。発症したらほぼ100%死亡するという恐ろしい病気なのである。

 マスコミが新型コロナの危険性を煽るのは、業のようなものだと呆れて見ていることが出来ても、知事までが同じような視点に囚われた発言を繰り返すのはいただけない。もっと地道に地域の保健体制全般を維持するように努力するべきだろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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