微小な早期膵がんの診断・治療に有効な画像診断法を開発 量研

2020年3月14日 17:04

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64Cu-セツキシマブ腹腔投与によるOpenPETのイメージ。左は、量研が開発したOpenPET(ヒトサイズ)。右は、64Cu-セツキシマブを腹腔投与し、OpenPETで撮像したマウス膵臓内の3 mm大の早期膵がん。(画像: 量子科学技術研究開発機構の発表資料より)

64Cu-セツキシマブ腹腔投与によるOpenPETのイメージ。左は、量研が開発したOpenPET(ヒトサイズ)。右は、64Cu-セツキシマブを腹腔投与し、OpenPETで撮像したマウス膵臓内の3 mm大の早期膵がん。(画像: 量子科学技術研究開発機構の発表資料より)[写真拡大]

 量子科学技術研究開発機構(量研)は10日、微小な膵がんの画像診断法を開発したと発表した。膵がんは難治性として知られており、1センチメートル以下のものは検出が難しいとされてきた。そのため、今回の研究成果によって膵がんの早期発見が可能になり、生存確率が上がることが期待される。

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 現状では膵がんの検出にCT検査やPET検査、MRI検査、超音波検査などの手法が用いられている。しかしこれらの手法では、いずれも1センチメートル未満の早期膵がんを画像化することは困難である。そのため、膵がんは腫瘍が拡大して他の臓器に転移してから発見されることが多く、予後が悪い原因とされてきた。

 これらの背景から、量研は膵がんに特異的に集積させられる、新しいPET検査薬剤を開発してきた。そのPET検査薬剤が、銅の放射性同位体(64Cu)で標識した64Cu-セツキシマブである。64Cu-セツキシマブは、がん細胞表面に高密度で存在する受容体に結合することが、これまでの研究で見出されている。さらに、より高感度かつ高解像度の3次元放射線検出器により、高解像度な64Cu-セツキシマブの画像撮影ができるようになっていた。

 今回の研究では、これらの技術を融合、モデルマウスを使用して実験を行った。その結果、マウス膵臓内の3ミリメートルほどの微小な膵がんを、明瞭に検出できた。このことは、64Cu-セツキシマブと高解像度のPET装置を用いた画像診断法が、早期膵がんの発見に有効であることを示すものである。

 さらに今回用いたPET装置は、検査のみでなく、治療も同時に行えるという特徴を有する。患者が装置で囲まれていない解放部分から重粒子線を照射することで、リアルタイムでの治療を行うことが可能だ。つまり、腫瘍の正確な位置を決定してその箇所へ集中的に重粒子線を照射できるのである。この方法は、患者に負担が少なく効果的な膵がんの治療法を提供することにつながる。

 今回の研究成果は10日付のScientific Reports誌のオンライン版にて公開されている。

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