ヤマハ、グールドのピアノ演奏をAIにより再現 日本初披露へ

2020年2月7日 12:17

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(画像:ヤマハの発表資料より)

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 ヤマハ(静岡県浜松市)は3日、伝説の名ピアニスト、グレン・グールドの表現方法を学習したAI(人工知能)によるピアノ演奏を、2月20日から24日まで東京・六本木の東京ミッドタウンで開催される「未来の学校祭」で披露すると発表した。ディープラーニングで習得した再現方法による「ゴールドベルク変奏曲」(J.S.バッハ作曲)を演奏する。

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 昨年9月にオーストリアにおいて世界で初めて披露され好評を博したもので、日本では今回が初披露となる。「未来の学校祭」では、グールドの未演奏曲も演奏される予定という。学習データとなる音源がないなかで、AIが独自に解釈したグールドの表現スタイルにより演奏するという、ユニークな試みとなる。

 感性の領域である音楽にもAIが進出しつつある。すでに作曲するAIは存在するが、今度は故人となった名ピアニストの演奏を再現するAIが開発されたという。

 開発を手掛けたヤマハは、100時間を超えるグレン・グールドの音源を解析したデータをもとに、ディープラーニングを行った。開発に当たっては、グレン・グールド・ファウンデーションの全面的な協力を得て、グールドらしい演奏表現を追求したとしている。

 また、音源の解析データと、グールドの解釈や弾き方を深く理解している演奏者による「グールド特有の弾き方を強調した演奏」を組み合わせることにより、グールドが弾いたことのない楽曲を演奏することもできるという。

 グレン・グールドは、1932年にカナダのトロントで生まれた。24歳のとき、のちに彼の代表曲となるデビューアルバム『ゴールドベルク変奏曲』で注目を集めるが、32歳の若さでコンサート活動から引退し、以降50歳で亡くなるまで録音やテレビ・ラジオでの演奏に専念した。

 没後35年に当たる2017年には、最新アルバム『ゴールドベルク変奏曲 コンプリート・レコーディング・セッションズ1955』がリリースされるなど、その人気は衰えるどころか新たなファンも獲得しているほどだ。今回はAIによる再現とはいえ、ピアノでのグールドの生演奏が聞ける貴重な機会といえる。

 今回の取り組みは、AIと人間の共創の可能性を追求する『Dear Glenn』プロジェクトの一環として行われる。同プロジェクトでは、AIと人間が互いに刺激し合い、共創する新しい音楽表現のあり方を提示したいとしている。(記事:Kei_T・記事一覧を見る

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