富士フイルム、成長領域の重点強化で営業利益の連続最高益更新へ挑む

2019年10月6日 15:12

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 富士フイルムホールディングスは9月30日、医療情報システムメーカーの横河医療ソリューションズを横河電機から買収し、100%子会社とすると発表した。

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 富士フイルムはさまざまな医療IT製品を世界中に提供しており、この買収により医療ITシステムのラインナップを拡充し、AI技術の開発に生かすことにより、医師の更なる業務効率化を支援することを目指す。

 富士フイルムは1934年、写真・フィルム製造の国産化計画に基づき、大日本セルロイドの写真フィルム部の事業を分離・継承して設立された。

 戦後は占領下での映画用フィルムとX-レイフィルムの生産再開からカラーフィルムの開発、カメラ事業への進出を果たし、1960年代には総合写真感光材料メーカーとして日本で圧倒的な地位を確立した。

 2006年には持株会社制へ移行して富士フイルムホールディングスとなり、デジタル化の進展による写真フィルムの激減に対応し、成長領域への業態大転換を進めている。

 2019年3月期の売上高は、2兆4,315億円。構成比はカラーフィルム、デジタルカメラ、光学デバイスなどのイメージングソリューション分野が15.9%、印刷関連のグラフィックシステム、記録メディア、メディカルシステム、ディスプレイ材料、産業機材などのヘルスケア&マテリアルズソリューション分野が42.7%、事業所向けの複合機、プリンター事業、デジタル印刷機などのドキュメントソリューション分野が41.4%と、幅広い事業フィールドを持つ富士フイルムの動きを見ていこう。

■前期(2019年3月期)実績
 前期売上高は2兆4,315億円(前年比0.1%減)、営業利益は前年よりも865億円増の2,098億円(同70.1%増)で、過去最高を更新した。

 営業利益増加の要因としては、バイオ製造受託の好調によりヘルスケア&マテリアルズが62億円、収益性の改善と構造改革によりドキュメントが880億円の増益。一方イメージングが47億円、全社調整が30億円の減益であった結果だ。

■今期(2020年3月期)計画で連続最高益更新へ挑む
 今期を最終年度とする中期計画を修正し、売上高は中計より1,200億円減の2兆4,800億円(同2.0%増)、営業利益は中計より100億円増で最高益更新となる2,400億円(同14.4%増)を目指して、事業フィールド別に成長領域を重点強化する。

 1.イメージング:売上高4,000億円、営業利益530億円
 ・フォトイメージング: インスタントカメラ「チェキ」関連の拡販。
 ・電子映像、光学デバイス: 高級ミラーレスカメラのシェア1位とレンズビジネス拡大。

 2.ヘルスケア&マテリアルズ: 売上高1兆700億円、営業利益1,090億円
 ・医薬品、バイオ受託製造: 新薬開発とバイオ受託製造能力拡大。
 ・再生医療: 創薬支援事業拡大と再生医療の開発加速。
 ・メディカルシステム: 医療機器ラインナップの強化と新興国市場向け製品の開発。
 ・ライフサイエンス: 生活習慣病予防、エイジングケアなどの機能性表示食品投入。
 ・電子材料: 製品ラインナップの拡大。
 ・産業機材: 橋梁などの点検サービス事業へ参入。

 3.ドキュメント: 売上高1兆100億円、営業利益1,190億円
 ・プロダクションサービス事業: インクジェットと印刷アプリケーションの強化。
 ・ソリューション&サービス事業: オフィスデータの生産性改革など新たな価値創造。

 更なるイノベーションの推進により、継続的な成長を目指す富士フイルムの動きを見守りたい。(記事:市浩只義・記事一覧を見る

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