5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (14)

2019年8月6日 20:18

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 数年前のこと。ユーザーの高齢化が進み、若者に低関与なブランドに陥っていた某コーヒー牛乳と若者層をエンゲージメントさせる業務を請けました。「ファンの若返り」と「首位奪還」がミッションです。

【前回は】5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (13)

 そこで、ユーザーたちが「ブランドキャラクター」をひと手間かけて作り上げていく「遊ぶ場」をネット上に用意しました。愛着を湧かせ、所有意識を高めてもらう【育ての親】戦略を取ったのです。

 ファンという名の無数の素人クリエイターたちが、無償で新パッケージ開発に参加し、ブランドを永続的に育てる関係を構築しました。結果、若者の比率と売上げは伸長し、首位も奪還したグロースハックの好例です。

 ただ、この「永続的エンゲージメント」も、いずれ右肩下がりになると予測していました。ならば、主力ユーザーの中年層を置き去りにすべきではないと判断し、余剰金で【週刊プレイボーイ 表4水着グラビア化】企画に突入していったのです。

■(16)浮かばない時は、自分の得意分野に企画を引き寄せればいい。

 
 私は、数十年来の「週プレ」愛読者。いつかグラビアの仕事がしたいと胸に秘めていました。同時に、キラキラわくわくする表紙に対し、なんて地味な表4(裏表紙)なんだ!という不満もありました。単なる夢(表紙)と現実(表4広告枠)のギャップなのですが。

 「表4もグラビアにしてくんないかな~」と常々思っていた私にとって、「コンビニ商品、中年ユーザー、乳製品」という追加施策の条件は、まさに渡りに船。さっそく、コンビニ内のマガジンラックから「週プレ」立ち読み読者を「飲料用冷蔵ケース」まで導くインストア企画を考案しました。

 企画の発想回路としては、「コーヒー牛乳 → 新鮮な乳 → 旬な巨乳グラドル → 週刊プレイボーイ → コンビニのマガジンラック → 飲料用冷蔵ケース → コーヒー牛乳購入」という流れ。「週プレ」を「中年タッチポイントメディア」と捉え、マガジンラックから商品までの導線を考えていたのです。

 そして、遂に“旬なグラドル”ゆうみちゃん、筧美和子ちゃん、佐々木もよこちゃんの3人を起用した「3号連続・表4水着グラビア制作」に臨みました。コーヒー牛乳パックに無造作に囲まれた水着美女が、艶やかなポーズをきめるシュールな「裏表紙グラビア」。掲載日は、感慨深いものがありました。

 もし、企画立案で悩んだ時は、ご自身が「好きなこと」「夢中になっていること」で課題解決を試みてください。得意分野で一つ企画を立てて、楽になりましょう。戦略性があれば世に出ます。

 最後に。この撮影で気づいた点を一つ。

 撮影前、メイクさんとスタイリストさんはグラドルの胸を最高キレイに見せるため、両手で両胸を鷲掴みし、ガッと持ち上げて、スッとトップスを整えました。その瞬間にこう叫んだのです。

 「今!今!今!今!今――――っ!」

 ハウススタジオに響き渡る2人の女性の掛け声。崩れる前に撮って!という意味。それを合図にカメラマンがシャッターを切っている。しかし、これはもう、メイクとスタイリストが撮っていると言っていい。そう思った。エキサイティング。

 私をたぎらせた“魂”の撮影現場は、後にも先にもこれだけです。

著者プロフィール

小林 孝悦

小林 孝悦 コピーライター/クリエイティブディレクター

東京生まれ。東京コピーライターズクラブ会員。2017年、博報堂を退社し、(株)コピーのコバヤシを設立。東京コピーライターズクラブ新人賞、広告電通賞、日経広告賞、コードアワード、日本新聞協会賞、カンヌライオンズ、D&AD、ロンドン国際広告祭、New York Festivals、The One Show、アドフェストなど多数受賞。日本大学藝術学部映画学科卒業。好きな映画は、ガス・ヴァン・サント監督の「Elephant」。
http://www.copykoba.tokyo/

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