郵政グループで不正販売、厳しいノルマで保険も投信も顧客利害はそっちのけ!(上)

2019年7月11日 17:30

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 昔から根拠なく信頼を集める職業は銀行員と郵便局員である。銀行員の実像の一端は、18年後半に全容が明らかになった「スルガ銀行」の呆れた実態で、世の中に知られることになった。

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 過大な目標を押し付けて、「目標が出来なければビルから飛び降りろ」とか「家族を皆殺しにしてやる」等と理性を失った言葉に追い詰められて、顧客の預金通帳の残高を改ざんして審査を通したり、審査部門を恫喝して無理やり決済させていた実態が赤裸々に公表されて、世間を唖然とさせた。

 個々の職員は監禁されていた訳でなく、物理的に自由を奪われてもいなかったが、第三者委員会の調査が行われるまで実態が暴かれることはなかった。

 横浜銀行と経営統合して持ち株会社としてのコンコルディア・フィナンシャルグループを設立した東日本銀行では、厳格に定められた銀行法上での「根拠のない手数料」を堂々と徴求して、金融庁から業務改善命令を受けた。

 商工組合中央金庫では、16年から17年にかけて「職員が取引先の財務内容を悪く改ざん」して、救済支援の対象と見せかける不正が多数発覚した。内部監査組織もグルだったと言わざるを得ないような組織的な不正行為が行われていた。

 いずれのケースも利益目標を達成するためだったり、取り扱い実績を嵩上げするためだったり、内容は若干の相違が見られるが、組織ぐるみで不正工作を行っていた点では相違ない。人品骨柄卑しからぬ銀行員がその職務を通して行った背信行為である。その不名誉な記録に、日本郵政グループの事例も加わることになった。

 日本郵政は日本郵便に100%、ゆうちょ銀行に89%、かんぽ生命に64%の出資比率を持つ。かんぽ生命の保険は全国2万局超の郵便局で販売されている。ゆうちょ銀行は貯金の窓口業務を郵便局に担わせて年間6千億円、かんぽ生命は保険の販売などのために年間4千億円の手数料を払っている。

 かんぽ生命で指摘される不適切な保険契約は、(1)保険料の二重徴収(2)保険の乗り換えで支払保険料が増加した等だ。これら、保険の乗り換えで顧客が不利益を被った事例が、19年3月までの5年間に2万3900件に上る。

 (1)のケースでは、職員が自分の営業成績を上げるために故意に行っていたことが疑われ、2万2000件の不正が見込まれている。手口は、新契約が乗り換えと見なされないように、旧契約の解約を6カ月遅らせるもので、旧契約分の支払保険料は顧客の無駄な損失となる。郵便局員は当該期間に顧客の支払いが二重になることを知りつつ、自分の報酬が乗り換え契約の倍額となるように、新規契約に誘導したようだ。ここでも金融機関職員の劣化が進んでいた。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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