人工衛星群よる光害問題を懸念する声明発表 国際天文学連合

2019年6月6日 12:35

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SpaceXが打ち上げたStarlinkからの画像。(SpaceXの発表資料より)

SpaceXが打ち上げたStarlinkからの画像。(SpaceXの発表資料より)[写真拡大]

 国際天文学連合(IAU)は6月3日、高速通信用人工衛星群に対して天文学への深刻な影響を懸念する声明を発表した。広視野探査望遠鏡の観測に大きな障害が出ることと、電波望遠鏡の観測周波数帯に影響が発生することを懸念している。

【こちらも】SpaceXの「Starlink」向け人工衛星、天文学者から「明るすぎる」との批判

■国際天文学連合

 国際天文学連合は世界の天文学者によるコミュニティだ。天文学の発展と普及を目的としており、恒星や惑星、その他天体の命名権を取り扱っている。現在天文学で使用されている88の星座を正式に定義したのも、冥王星を「準惑星」と分類したのも、国際天文学連合である。

■衛星コンステレーション

 今回、国際天文学連合が懸念を表明したのは、多数の衛星を連携して運用するシステムである「衛星コンステレーション」だ。

 例えば、民間宇宙開発企業SpaceXは、人工衛星群によりインターネット環境を構築する「Starlink(スターリンク)」を進めているが、この計画あげられる。Starlinkでは、地球周回軌道上に約1万2000基の小型人工衛星が打ち上げられる予定だ。5月24日には、その最初の60機が打ち上げられたが、天文学者からは明るすぎるとの批判の声が出ていた。

■光害

 天文台などの天体観測施設は人里外れた山の上などに建てられることが多い。都市の近くでは街灯の光が夜空を照らすため星の光が霞んでしまうからだ。

 人工衛星は表面が金属で覆われていることが多く、太陽の光を反射しやすい。これらの光の多くは肉眼で確認するのが困難なくらい微弱だが、大型の望遠鏡による観測に影響を与える可能性がある。

 また人工衛星同士や地上との通信には、電波が利用される。電波望遠鏡がこれらの通信用電波を拾ってしまう可能性も心配されている。天体電波観測で使用する周波数帯は各国の法律によって規制されているが、周辺の周波数帯の影響を少なからず受ける。

 国際天文学連合は人工衛星による新しいタイプの光害問題に関して、すべての利害関係者が互いの利益のために協力し合うことを勧告している。

 また衛星コンステレーションによる天体観測への影響調査に対する協力と、科学探査への影響を排除・軽減するための規制の検討を、関係機関に要請している。(記事:創造情報研究所・記事一覧を見る

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