132億光年離れた銀河から大量の塵と酸素発見 宇宙の進化理解に一助 名大など

2019年3月22日 18:54

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アルマ望遠鏡が捉えた132億光年の距離にある銀河MACS0416_Y1の観測画像。(c) ALMA (ESO/NAOJ/NRAO) NASA/ESA Hubble Space Telescope, Tamura et al.

アルマ望遠鏡が捉えた132億光年の距離にある銀河MACS0416_Y1の観測画像。(c) ALMA (ESO/NAOJ/NRAO) NASA/ESA Hubble Space Telescope, Tamura et al.[写真拡大]

 名古屋大学大学院理学研究科の田村陽一准教授を中心とする研究チームは、アルマ望遠鏡を使って132億光年離れた銀河の中に大量の塵(ちり)と酸素を発見と発表した。塵が見つかった銀河としては、観測史上2番目の遠さになるという。

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■元素とは
 子供の頃にブロックのおもちゃで車や家など色々なものを作って遊んだ記憶はないだろうか。ブロックと同じように、限られた種類の基本的な部品である元素から、この宇宙のあらゆるものを作ることができる。

 では私達の体や、身の回りのものはどのような元素からできているのだろうか。私達の体は70%が水でできており、水は水素と酸素の化合物だ。

 地球の3分の1は鉄でできており、その次に多いのは酸素である。鉄は地球の核を構成する主成分で、酸素は金属と結びついて酸化物の形で岩石中に存在する。

 太陽に含まれる元素は水素が大部分で、4分の1がヘリウムとなっている。これは宇宙全体の元素構成とほぼ一致する。

■元素の起源
 これらの元素は宇宙に初めからあったわけではない。それではいつ、どこでできたのか。ジョージ・ガモフとその弟子ラルフ・アルファーは、宇宙原初の高温・高密度の中で、様々な種類の元素が合成されたのではないかと提案した。しかしこれでは、実際には水素とヘリウムまでしかできないことが後の研究で明らかになった。

 それでは私達の体や、地球を作っている元素はどこから来たのだろうか。鉄までの元素は恒星の核融合反応で作られ、鉄より重い元素は、太陽質量の数倍の恒星が寿命を終えるときの超新星爆発で生成されることが分かっている。

■今回の観測の結果
 今回観測された銀河は132億光年の距離にある。その銀河から出た光が132億年かかって地球に届いているので、132億年前の銀河を見ていることになる。宇宙の年齢は138億歳と言われており、宇宙誕生から6億年後の銀河である。

 アルマ望遠鏡の観測によるとこの銀河に含まれる塵の量は、太陽の400万倍もの質量であることが分かった。塵の成分はケイ素や鉄などの重い元素であり、これは、宇宙開闢から6億年の間に多くの星が生まれ、死んでいった証拠となる。

 この研究は、私達の身近にある物質がいつどうやってできたのかという疑問の答えに近づくものと言える。

 この研究成果は、3月19日(日本時間3月20日)付米国科学雑誌アストロフィジカル・ジャーナル(オンライン版)に掲載された。(記事:創造情報研究所・記事一覧を見る

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