2018年自動車の宿題【2】 1.コンプライアンス 2.品質管理軽視の経営 3.EV化の流れ

2018年12月29日 15:56

印刷

■2.品質管理軽視の経営

 どうしてこれほど完成検査を軽視する姿勢が生まれるのであろうか? 日本で製造業に携わってきた一人の人間としては、「投資感覚」を第一に上げたい。現在の経営は、「投資効率」第一であることは製造業も変わりない。それは半世紀以上前から変わらぬ努力の連続だった。「トヨタのかんばん方式」の始まりから多くの人々が努力を重ねてきた結果、「資金効率の大幅向上(1千倍以上とも考えられる)」の成果が上がったのが事実だ。それはそれは涙ぐましい努力で、国民の多くが参加した努力だった。私もその時代に参加した一人で、そのおかげで体を壊し今も苦しんでいる。語れば涙の努力の結果、日本国民の多くが高度成長を傍受したことになる。しかし、現在の製造業を営む経営者で「製造」を理解できていると感じる経営者は少ない。少なくとも、カルロス・ゴーン元会長は、自動車産業のビジネスモデルを理解しているとは思えない。

【前回は】2018年自動車の宿題【1】 1.コンプライアンス 2.品質管理軽視の経営 3.EV化の流れ

【参考】スバル国交省への報告書(1) 法的立場の言い訳 根底は「品質低下は気にしない」? ~(10)

 その理由は、今現在、ルノー・日産・三菱のアライアンスの成否は、「生産方法」の進歩にかかっていることを理解できているとは見えないからだ。日産自動車の品質管理に関わっていた人物のコメントを見ても残念なものだった。これでは社員の努力が無になってしまう。

【参考】【コストカッター、カルロス・ゴーン(1)】1999年、日産がトヨタに敗れた訳 ~(10)

 この記事を(1)~(10)までしっかり読んでから考えてほしい。

【参考】自動車メーカーのプラットフォーム開発競争(1)目的は決算書 利益率と生産技術の関係 ~(5)

【参考】マツダがスモールとラージに分けた訳(1)「コモンアーキテクチャー」が目指すのは「平準化」 ~(2)

 品質管理が数年で出来るものでもなく、「システム」を工夫するだけで出来るわけでもなく、それを達成する組織運用の努力は、会長から担当者まで心を一つにしなければ出来上がらないと言えるほどのものだ。製造技術の工夫だけで出来るはずもないのだ。1/10,000の不良率を無くす努力とは、実践した者にしか分からないのだろうか?システム管理者なら理解できるはずなのだが、学問的知識だけで出来ると勘違いしているのは、現場の社員がすでに品質管理を心得ていたからだ。

 専門家を自認する管理者で、現場の社員の努力を見抜けなければ退散せよ!と言いたい。

【参考」世界の自動車生産を変えた「トヨタ生産方式」のビックリする数字とは何か?(上) ~(下)

【参考】【知らぬが仏(1)】日本の安全神話は「作業員の腕前」 軽量化新幹線台車亀裂の現実 ~(4)

 現在は、金融知識による「投資感覚の経営が経営者の資質」と心得ているものが増えた。しかし、そうした「ファンド感覚」では経営者は務まらない。「社会的責任・社会インフラ」などと企業の「公の器」としての存在を表現してはいるが、「短期的利益」を追求するあまり、本来のビジネスモデルさえ見失った企業は多い。せめて、「社員の人格を認識できない」ことだけは「犯罪」に等しいと認識せよ。

 ならばどのようにすれば、社員の人格を受け止めた経営が出来るのか?2019年の記事で回答を試みてみよう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

続きは: 2018年自動車の宿題【3】 1.コンプライアンス 2.品質管理軽視の経営 3.EV化の流れ

関連キーワード

関連記事