坂道演劇隊の神髄を見せつけた舞台『七色いんこ』

2018年10月8日 11:30

印刷

 乃木坂46伊藤純奈が初主演に挑戦した舞台、『七色いんこ』が10月7日に千秋楽を迎え、大盛況のうちに幕を閉じた。

【こちらも】乃木坂46・伊藤純奈の演技力に賞賛の嵐

 手塚治虫の漫画を原作としたこの作品は、代役専門の天才役者にして泥棒でもある“七色いんこ”と、それを追う女性刑事の関係を軸にしていく物語であるが、この難しい天才舞台役者(しかも男性)を、見事に演じきった伊藤純奈には、正直感動を通り越して呆れる思いであった。

 伊藤純奈に関しては、当欄でも、初の外舞台『犬夜叉』のときの演技力と存在感の大きさを紹介させていただいたが、その後も順調にキャリアを積み上げており、そのたびに、アイドル女優の概念をぶち壊すインパクトを残して、新しいファン層を開拓してきた。

 今回、初の主演ではあるが、並み居る共演者の実力派舞台女優たちの中でも、まったくひけをとることなく、それどころか、初の単独仕事で、ヒロインを演じたけやき坂の松田好花の魅力を引き出す大役を成し遂げたのは、ものすごいことだ。

 伊藤の武器は声量の豊かさに加え、声のトーンでしっかりと登場人物の感情の動きを伝えられるところだろう。自信満々な表の自分と、揺れ動く内面をダイレクトに観客に伝える力は、舞台歴10年選手の大女優の風格すら感じさせた。女性客など、ロビーで「かっこいい」「あの人宝塚出身?」なんて声まで聞こえてきたほどだ。

 また、けやき坂の松田好花も、これが初舞台(けやき坂内輪の舞台はあるが外仕事は初めて)で、しかもセリフの多いヒロイン役であったのだが、イキイキと、そして大胆に演じており、けやき坂での活動とはまた一味違う、新しい魅力を発揮していた。

 人懐っこい笑顔で誰からも愛される松田好花と、先輩である西野七瀬の顔を弄ってしまうほどの「コミュ力お化け」として知られる伊藤純奈のコンビは、番宣のネット番組でも抜群の仲の良さを見せ、グループの枠を超えた愛され実力コンビとして注目されている。ただの仲良しではなく、信頼関係がしっかりしているため、松田も思い切った演技ができたのではないだろうか?

 近い将来、伊藤純奈が白衣を着て「私、失敗しないので!」と言い出すドラマが見たいものである。(記事:潜水亭沈没・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事