楽天ECの拡充は差別化と商圏拡大

2018年9月13日 09:20

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 楽天は、カンパニー制を執っている。創業者CEOの三木谷浩史氏は日本興業銀行(現みずほ銀行)時代に米国ハーバード大学大学院に学び1993年にMBAを取得。1997年に楽天の前身となるエム・ディー・エムを設立。

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 カンパニー制のもと70余のサービスを展開しているが、入り口は周知の通りECモール「楽天市場」の立ち上げ。既に先発組はいた。が、2000年に上場。早々に一歩抜きん出た。

 その理由は何だったのか。「楽天市場は(織田)信長時代の“楽市楽座”の発想に求められる」とされる。つまりどんな商圏も、顧客を惹きつけられてはじめて成り立つ。企業がモールへの出店に際し、定額制という差別化戦略で市場に乗り込んだ点に象徴的。

 集客力の上に関係者が指摘するように70を超えるサービスを、会員IDと楽天スーパーポイントでつなげ全体でユーザー一人当たりのライフタイムバリュー(「顧客生涯価値」)の向上を目指す「楽天経済圏」戦略の推進が同社の強さの原点。「共通ポイント制の導入(02年)」「球団経営(04年)」「あんしんショッピングサービス(07年、配達遅延や欠陥商品の補償)の整備」「横展志向(成功事例はカンパニーの枠を超えて共有する)」「成功事例に基づいた科学的なコンサルティングシステム」「独自開発の情報システム」といった経営手法等が相まって、同社は成長階段を昇り続けてきている。

 無論、記した様な体制が一朝一夕に構築されたわけではない。だが商圏との取り組み方が優れていた点は、数字が如実に物語っている。2000年上場の同社の売上高・営業利益は初年度決算に比べ前12月期には「291倍(9445億円)、154倍(1493億円)」に膨張している。結果、楽天の17年末時点の国内EC流通総額は3兆円を上回っている。代表的な百貨店やコンビニに圧倒的な差をつけている。

 ECを軸に据えた事業展開は「国際化」の進捗や、米国・中国の予約サイトと提携した「民泊」事業進出など商圏拡大策を止まることなく執っている。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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