110億年前の宇宙の様子を伝えるハッブル宇宙望遠鏡

2018年8月24日 20:45

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約110億年前の宇宙の写真米国航空宇宙局(NASA)が運営するハッブル宇宙望遠鏡の公式サイトHubbleSiteが公開(写真:HubbleSiteの発表資料より)

約110億年前の宇宙の写真米国航空宇宙局(NASA)が運営するハッブル宇宙望遠鏡の公式サイトHubbleSiteが公開(写真:HubbleSiteの発表資料より)[写真拡大]

 宇宙誕生からその進化の形成には、まだ解明されていない謎が残されている。米国航空宇宙局(NASA)が運営するこハッブル宇宙望遠鏡の公式サイトHubbleSiteは16日、約110億年前の星を映し出す写真を公開した。写真からは、当時の星の進化の様子がうかがえる。

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 HubbleSiteが公開したのは、ハッブル宇宙望遠鏡や地上の望遠鏡から観測されたスペクトルに基づいて構成された合成写真だ。約1万5,000個の銀河が写し出され、そのうちの約1万2,000個は星が形成されている段階のものだという。

 「ビッグバン」と呼ばれる高温高密度な原始状態からの爆発により、宇宙が膨張を開始したのが約138億年前だ。今回HubbleSiteが公開した写真は、その約30億年後を写し出し、星の誕生がもっとも慌ただしく行なわれた時期だという。

 約110億年前の宇宙像を解明するのに役立つのが、ハッブル宇宙望遠鏡によって観測される紫外線のスペクトルである。遠紫外線などの波長の短い紫外線は、地球の大気によって遮断されるため、地上の望遠鏡からは観測できない。そのため、宇宙空間を周回軌道するハッブル宇宙望遠鏡が、紫外線をもっとも観測できることになる。

 星が誕生する際に紫外線が放たれるが、宇宙の膨張によりスペクトルに赤方偏移が生じ波長が長くなる。遠方銀河で星が誕生すると、放たれた紫外線は地球に届くころには赤方偏移により赤外線として観測される。宇宙の膨張により宇宙の遠方にある天体ほど赤方偏移は大きくなるため、天体との距離の推定に用いられる。

 地球に近い銀河では広範囲のスペクトルで観測可能だが、遠方銀河の場合、最も明るい星の赤外線しか観測できない。この遠方銀河での星の誕生を解明するためには、ハッブル宇宙望遠鏡により検知可能な紫外線を利用する。遠方銀河と地球に近い銀河とを比較することで、高温の小さな星の塊から銀河が成長していく進化をより理解できるという。

 今回HubbleSiteが公開した写真は、「ハッブル・ウルトラ・ディープ・フィールド」と呼ばれるもの。南天の星座である「ろ座」の方角に位置する、月の直径の10分の1ほどの天空の領域が観測対象となる。この小さな天空領域で、ハッブル宇宙望遠鏡を含めた望遠鏡を活用し、可視光や近赤外線、紫外線などの観測が続けられている。

 2021年にはジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がハッブル宇宙望遠鏡の後継として、運用開始となることが予定されている。ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡により、宇宙の進化の歴史がさらに解明されることが期待される。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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