トルコ発の通貨危機、世界への影響は?

2018年8月13日 19:48

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 米国人牧師の拘束を巡る外交問題をきっかけに、10日、トルコ・リラが1日でドルに対し一時20%近く下落し、過去最安値を更新。これを受け、為替市場では南アフリカやアルゼンチンの通貨が連動して下落。この影響が新興国に限らず欧州を中心とした先進国市場へ波及している。

 リラ急落の引き金は、トルコ当局による米国人牧師の拘束を巡る米・トルコ間の外交問題。拘束の事実を受け、トランプ米大統領が、北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるトルコへの関税倍増表明。トンラプ大統領が鉄鋼とアルミニウムの関税を倍に引き上げたことをツイッターに投稿すると、トルコ鉄鋼メーカーの株価が急落。リラの暴落が始まった。

 リラはわずか1日で20%近く下落。年初来で約40%下げたことになる。トルコのエルドアン大統領が金融政策に介入し、インフレ抑制へ動き難い状況も売り圧力となっている。また、トルコが経常赤字国で、為替介入の余力が乏しいことも下落材料。

 リラの急落を受け、新興国を中心とした他国への今後の影響へ注目が集まっている。10日は、南アフリカ・ランド、アルゼンチン・ペソなどの新興国通貨が売られ、ユーロも下落。ダウ平均をはじめ株式相場も世界的に売り優勢となった。

 今回のリラ急落のきっかけは米・トルコ2カ国間の外交問題で、新興国を含む世界景気を不安材料としたものではない。そのため、他国への影響は限定的だろうとする見方が強い。一方、トルコ向け債権を持つなど経済・金融面での関係が深い欧州銀行への影響を懸念する声もある。主な債権国は、スペイン、フランス、イタリアの3カ国。日本でも、欧州事業のシェアが大きい企業への影響は注意が必要だろう。

 ドル高の進行による債務国の返済能力を懸念する見方も根強い。リラ急落を受け、ドル高・新興国通貨安が進むと、ドル建て債務を抱える新興国の返済能力にネガティブなインパクトを与える。経常赤字国を中心に、当面は売り圧力が強まりやすい状況と言える。なお、国際通貨基金(IMF)によれば、10日時点で、トルコから同基金への金融支援の打診はない。(記事:dailyst・記事一覧を見る

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