猛暑で膨らむ電力需要 「ネガワット」取引が支える

2018年7月25日 21:44

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 西日本を中心に異例の猛暑が続く。「命に危険があるほどの」という枕詞で導かれるほどの猛暑は今まで記憶がない。事実、猛暑が原因の熱中症と見られる症状で亡くなられた事例が、連日のように報じられている。東京では初めて40度超えを記録したことが話題になり、埼玉県熊谷市では23日に41.1度の国内最高気温を記録した。

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 こうした現象は日本に限ったことではない。米カリフォルニア州のデスバレーで52度、同じくロサンゼルス近郊のチノで48.9度を記録し、北アフリカに位置するアルジェリアのサハラ砂漠では51.3度を記録した。北欧の北極圏ノルウェーのバルドゥフォスで33.5度を観測、スウェーデンでは約50カ所で森林火災が発生した。

 このため天気予報では、連日エアコンの適切な(積極的な)利用を勧めるメッセージが流されている。何しろ、熱中症と見られる症状で搬送されたり、死亡が確認されている高齢者の住宅では、エアコンの設備はあるものの故障や住人の意志で利用されていない状況が多く見られるからだ。

 福島の原発事故の際に巻き起こった議論の1つに、「原発の稼働を厳密に管理しろ」と「原発がなければ酷暑は乗り切れない」がある。当然原発の稼働には強力な規制が敷かれ、再生可能エネルギーの利用拡大と節電が叫ばれるようになった。

 電力各社も考えられる様々な対策の1つとして「ネガワット」取引を進めて来た。ネガワットとは、「否定」を意味するネガティブと電力を表すワットを合成した造語で、工場などを運営する大口利用者と緊急時の節電で協力することを事前に契約し、その対価として電気料金を割引するシステムである。

 その第1号は今年の1~2月の冬季間に東電によって実施された。13日には東電が午後4~7時の時間帯に、工場などの40施設を対象に実施された。関電も初めて17~18日の両日、午後3~6時の時間帯に10~数10社を対象として30万キロワットに相当する電力の使用抑制を呼び掛けた。

 東電、関電のネガワット取引はいずれも太陽が陰りを見せる時間帯に実施された。その時間帯は代表的な再生可能エネルギーである太陽光の発電量が、日が沈むのにつられて落ちる時間帯だからである。需給量が逼迫している時期には、太陽光発電の減少ですら大きなクライシスの引き金になり得る。かと言って、電力会社の供給責任を発電所の増設を果たすという従来型の発想は、人口減少や経済の低成長で電力需要が減少する時代にはそぐわない。ネガワット取引はそうした状況に取り得る選択肢の一つとして大きな意味を持ち始めた。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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