それぞれが迎えたエンドは?最終回「anone」10話

2018年3月23日 18:14

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■見事に話をたたんだ「anone」10話

 2018年1月から日本テレビ系列で放送されているドラマ「anone」の第10話が3月21日に放送された。坂元裕二の脚本による上質なシナリオにドラマ好きもうなったが、そのラストは誰もが感動できる展開だったと個人的に感じる。

【前回は】ついに佳境!ハリカの「演技」に涙なしに見れない「anone」9話

■亜乃音に続きハリカも少年院に……

 万平(火野正平)の説得も虚しく、亜乃音(田中裕子)は自分が偽札作りの罪をかぶろうとしていた。その一方、家で亜乃音をはじめ一緒に家で過ごしていた舵(阿部サダヲ)、るい子(小林聡美)を待つハリカ(広瀬すず)。しかし、彼女の元にも警察がやってきて、素直に少年院へ向かうことになる。

 ハリカは亜乃音に習ってきちんと罪を償おうとする中、ある手紙が届く。その手紙は彦星(清水尋也)からのものだった。手紙には以前のハリカの「嘘」を見抜いたことと、きちんと治療を受ける意思を固めたことが書かれてあった。彼が生きようとしていることがハリカにとって何よりの幸せであり、その事実を胸に秘めながら少年院の中で生活を送る。

 そんな中で寿命が迫る舵を連れ、るい子は一緒に逃亡を続けていた。亜乃音たちと家族のような生活を送ることで本当に惹かれ合った2人だが、すでに舵は限界に近づいていた。るい子は同じアパートで彼を介抱しながら生活するも、一向に快方へ向かう様子が見られなかった。それでも舵は「ぜったいに生きてやりますよ」とるい子に最大の誠意を見せるも、彼女が見守る中で静かに息を引き取ってしまう。

■逃亡する中世古が秘める良心

 亜乃音の周りの人間が自首を決める中、中世古(瑛太)だけは未だに逃亡を続けていた。あくまで自己顕示欲に則って行動していたが、彼にとって唯一の良心が陽人だった。陽人が過去に犯した火事に気付かないかずっと気にしており、逃亡生活の中でも家に電話を掛けるほどだった。

 その行動パターンを玲(江口のりこ)から聞いたハリカは、逆手にとって中世古と接触を試みる。中世古はハリカに「なんでそんな辛い人生なのに生きていられるの」と問い詰めるも、ハリカは亜乃音や彦星とのやりとりで得た「幸せ」があった。その幸せがあれば生きていけると言ってのける。

 ハリカの言葉によって陽人のことが本当に忘れられなくなった中世古は、自首する代わりに彼に会わせて欲しいと頼む。ハリカは最後に陽人との面会を許し、中世古は彼に最後の「嘘」を付いたのだった。しかし、その嘘は陽人を救うための嘘だった。

■最後まで「意味のないもの」たちの物語だった「anone」

 ハリカとるい子は刑期を終えて元の生活にもどり、亜乃音の帰りを待っていた。そして再び家族としての生活を送るかと思えば、ハリカが「自立」するというエンドで締めくくられる。

 はじめは辛いだけの物語のように見えたが、その中でハリカをはじめ「つらい経験」をした人間たちが自分なりの「幸せ」を獲得した。最近では他者からみた幸せが指標となりつつある中、自分なりの「これが幸せ」を見つけた上で、それを肯定させるだけのドラマを見せられた気がする。

 たしかに重い内容もあり、続き物のため簡単には見れないタイプのドラマだ。しかし、折をみてみる価値はあるドラマだと私は思う。(記事:藤田竜一・記事一覧を見る

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