「JIS法」改正へ、罰金引き上げ サービスも対象に

2018年1月2日 21:48

印刷

 鉄鋼や自動車部品、建設資材などは産業の基盤を支える基本素材であり、高度な信頼性が確保されなければならないが、神戸製鋼所や三菱マテリアル、東レなど日本を代表する製造業で、品質データが改ざんされる不正が連続して発覚している。日経新聞の報道によれば、こうした異常事態を重く見た経産省は、工業標準化法(JIS法)の運用を厳格にし、違反企業への罰金を現行の100倍に相当する最大1億円に引き上げ、管理体制の不備も罰則対象とする方針を固めたという。企業の意識改革を促進させ、モノづくり大国ニッポンの復活を目指す。本年の通常国会では鉱工業品から物流や観光、介護等のサービス分野にも対象を拡大する改正案を提出する方針という。

【こちらも】経産省がJIS規格を改訂、外国人旅行者向け案内記号15種類が追加に

 JISマークは国の登録を受けた機関の認証をもとに使うことが許された高品質の証明書的性格を有しており、国家の威信を背景に疑念を抱かずに使用できるのが前提だった。認証機関は定期的に工場の審査を行い、水準未達の場合には認証取り消しもある。認証を喪失した製品や、初めから認証を取得していない製品に無断でJISマークを使用した場合には、最大100万円の罰金等も科せられる。

 工業標準化法(JIS法)は昭和24年6月1日に制定された歴史のある法律であるだけに、貨幣価値の変化への対応がなされておらず、罰金の懲罰的意味合いが希薄になっていた。個人に対して100万円の罰金であればそれなりの緊張感も与え得るが、日本を代表するような一流企業に対する100万円の罰金には、報道による企業イメージの低下以上の重みはない。

 また、認証機関は認証対象製品の品質維持のため、原則では3年に1回定期検査を実施しているが、神戸製鋼所の場合では残された検査データで不正が確認できる10年間に、1度も不正を見抜くことができなかった。このため、工場や製造現場でデータの改ざんがされないように、複数者のチェック体制が実施されているかや、品質管理部門が実質的に独立した状態にあるかという管理体制も、対象に加えて検査体制の充実を図ると共に、認証機関としての審査体制も増強する。ずさんな管理体制や不備に対する問題意識の低い企業には、罰則を加える姿勢を鮮明にする方針だ。

 従来は鉱工業品を対象にしていたJISだが、改正後は物流から観光、介護等のサービス分野も対象になる。JISというと出来上がった製品を連想するが、今後は固定観念を払拭する必要がありそうだ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事