整備人材不足にどのように対応するか、JR東・西日本の挑戦

2017年10月12日 07:00

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 産業界では人材不足は徐々に影を落としつつある。整備不良から事故が起きる懸念も起きており、実際、喫緊で発生した飛行機の部品落下の原因が整備の不備によると疑われている。

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 少子化による人材不足はいよいよ現実味を帯びている。それまでは内製で整備・点検を行っていたのに、人材不足と経費節減から外注に出すなどというところも出てきた。JALでは整備の一部を中国に外注していたことが判明、にわかに安全性を疑う向きなども表れる始末だ。

 日産では、正規検査員の資格の無い期間従業員が車両の最終検査を行い、書類を改ざんしていたことが発覚、リコール対象となったことは記憶に新しい。これもまた人材不足が絡んでいるのではないかと考えざるを得ない。

 鉄道業界も状況は同じだ。整備にかかわる人材不足に加え、団塊の世代の大量退職によって整備に関する知見を下の者に伝えられることができず、整備技能の質そのものが低下することが懸念されている。

 JR東および西では、このような人材不足から陥る整備不良を阻止すべく、次の一手を打っている。それが既存の科学技術の活用である。

 車両が安全に走行するには線路を走行に最適化する必要がある。具体的に言えば、線路の継ぎ目に少しでもズレが生じれば車両は脱線する。こうした継ぎ目の確認作業はこれまで目視でなされてきた。熟練した整備士による継ぎ目を確認するという地道な作業である。もちろん整備はこれだけに終わらないのが現実。この作業だけに特化するわけには行かない。

 線路整備の効率化は喫緊の急務と言える。JR西日本ではこれに対応するため、軌道検査測定装置(V-Cube)と継目板検査装置(FPIS)を導入し、線路整備診断システムとして山陽新幹線に2017年9月から実装し、データ収集に当たっている。

 一方、JR東日本では従来の目視に近い検査手法が生かされているイタリア・メルメック社の検査装置を導入、2013年より京浜東北線で線路整備モニタリング装置として、継ぎ目の確認などを行っている。ゆくゆくは他の路線にも拡大して使用される可能性は高い。

 来る人材不足の波に整備作業がのみ込まれ、おろそかにならないよう、両社は今から打つ手を模索していると言えよう。まずは整備士の作業の軽減を目的とした科学技術の導入が、次のステップへの第一歩となっている。(記事:M_imai・記事一覧を見る

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