EVバブルに踊らない 内燃機関は死せず、新環境技術で存続

2017年9月2日 10:59

印刷

記事提供元:エコノミックニュース

SKYACTIV-Xは、ディーゼルエンジンのようにガソリンを圧縮着火させる画期的な技術で、予混合圧縮着火(HCCI)エンジンと呼ばれる。2019年モデルから搭載を開始する

SKYACTIV-Xは、ディーゼルエンジンのようにガソリンを圧縮着火させる画期的な技術で、予混合圧縮着火(HCCI)エンジンと呼ばれる。2019年モデルから搭載を開始する[写真拡大]

 2017年7月、フランス政府とイギリス政府が相次いで、内燃機関をパワーユニットとするクルマの販売を2040年以降禁止すると発表し、世界の自動車業界に衝撃が走った。と同時に、電気自動車のフォーミュラカーレース「フォーミュラE」へ参戦を発表するメーカーが急増し、クルマの電動化への動きが急だ。

【こちらも】【マツダ・SKYACTIV-X・新エンジンEVを駆逐するか?】SPCCIで燃費3割改善

 ただ、英仏両国ともに派手な発表・宣言はしたものの、その後、規制の詳細やタイムスケジュールなど具体的な施策についてはまったく発表していない。が、ふたつの自動車大国が宣言したことでクルマの“脱内燃機関”が加速することは、間違いなさそうだ。

 こうした内燃機関自動車から電気自動車への移行気運が高まるなか、マツダは8月上旬、2030年を見据えた「サスティナブル“Zoom Zoom”宣言2030」を公表した。内容の骨子は、「2030年以降も内燃機関は新しい技術開発・投入で存続する(させる)」という内容だ。

 その“新しい技術”とは、「SKYACTIV-X」と銘打った圧縮着火ガソリンエンジンの実用化にある。

 マツダが今回の発表に際して用意した資料で、2035年の世界の自動車構成比をザックリと示した。それによると純粋なZEV(EVおよび燃料電池車(FCV)を含んだ、走行時に一切排気ガスを出さないクルマ)は2割に達せず、レガシィな内燃機関搭載車は2割以上、その他はハイブリッド(HV)やプラグインハイブリッド(PHV)など内燃機関と電気デバイスを組み合わせたクルマと予想する。その時代の最新鋭環境対応ガソリンエンジンとして、マツダは圧縮着火ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」の製品化に目途を立てたという。

 SKYACTIV-Xは、ディーゼルエンジンのようにガソリンを圧縮着火させる画期的な技術で、予混合圧縮着火(HCCI)エンジンと呼ばれる。ここではテクニカルな詳細報告はしないが、量産化すれば、現在のガソリンエンジンに比べてトルク、レスポンス、そして燃費が3割ほどアップするとされる。理論的には完成された優れたエンジンで、これまで多くの科学者・技術者がその開発にチャレンジしたが、完成することがなかったガソリンエンジンだ。今回、マツダが実用化に目途を立てたということは、かつてロータリーエンジンを量産化したマツダエンジン技術屋の真骨頂ともいえそうだ。

 現実を冷静に見つめると、2035年に至ってもHVなどを含めて世界の自動車の8割弱が、何らか内燃機関が必要とされるわけで、圧倒的多数を占める内燃機関の熱効率と排出ガスのクリーン化を高める技術が重要だということが分かるだろう。

 もちろんマツダとて、EV開発はトヨタと協力して推進することは、すでに発表している。しかし、2040年に東南アジア諸国、アフリカ諸国や南米諸国で、すべてのクルマをEV化することは現実的ではない、というのは事実だろう。

 トヨタも新たなクルマづくりの技術として掲げる「TNGA」の一角を構成する新世代ガソリンエンジンに最新技術を投入し、10%の最高出力向上、20%の燃費向上を果たすエンジン開発に成功している。すでに極限的にまで進化している現在のパワートレーンをさらに性能向上させる技術は、20年後にも必要となる。

 EVが本当にクリーンなクルマとなるためには、その製造段階でもCO2を排出しない工場を建設し、コストパフォーマンスが高く耐久性のあるバッテリーが環境負荷なく製造でき、かつ駆動エネルギーとしての電力が化石燃料による火力発電でつくらない電力としなければ意味が無いのだ。(編集担当:吉田恒)

■関連記事
日産とNEC、大京「マンションへのEV充電器設置、実証プロジェクト」開始
ルノー日産連合、中国に電気自動車・開発製造会社を設立、東風と
メルセデスの中核モデル「Eクラス」にプラグインハイブリッド車、追加
電気自動車を巡る話題は国際的に“花ざかり” だが、コトはそれほど簡単ではない
3シーズン目を終えて見えてきた「フォーミュラE」の美味しい“果実”

※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。

関連キーワード

関連記事