ソニー、AI開発環境を無償提供 視覚的にディープラーニングの設計が可能

2017年8月18日 16:50

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視覚的なユーザーインターフェースを採用(写真: ソニーの発表資料より)

視覚的なユーザーインターフェースを採用(写真: ソニーの発表資料より) [写真拡大]

 ソニーは17日、ディープラーニング(深層学習)のプログラムを生成できる統合開発環境「Neural Network Console」の無償提供を発表した。6月27日に発表したディープラーニング開発のためのコアライブラリのオープンソース化に次いでの発表である。コアライブラリをGUIで操作できる統合開発環境を提供することで、産業界でのディープラーニング関連開発のさらなる活性化と発展を目指すという。本格的なGUIを持つディープラーニング統合開発環境を用いることで、直感的なユーザーインターフェースで、AIの設計、学習、評価などを効率的に行いながら各種製品やサービスに搭載できる。

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●ディープラーニング(深層学習)とは

 ディープラーニングとは、人間の脳を模倣したニューラルネットワークを用いた機械学習の一手法である。機械が膨大なデータを読み込み、このニューラルネットワークに沿って特徴を分解して自動的に学習していく。例えば、犬を認識する学習を考えてみる。機械は、数万枚の犬の写真を読み込み学習する。次に、新たな一枚の写真が犬か否かを問う。すると、機械が学習したモデルに照らし合わせて、犬か否かを判別するという具合である。一般のコンピュータのように、犬を識別する条件をプログラミングする必要はない。逆に、何故、犬と判別したかを人間が判るようには説明できないという。

 近年、このディープラーニングを用いた画像認識や音声認識の性能が飛躍的に向上し、ある領域では人間を超える性能も達成する。ディープラーニングは、高い汎用性を備えていることが特長で、画像認識や音声認識にとどまらず、機械翻訳や信号処理、ロボット制御など広範囲な対象に応用されている。

●AI開発環境(ソニー、「Neural Network Console」)の特長

 ディープラーニングではニューラルネットワークの設計が重要である。認識する対象に応じた最適なニューラルネットワークを構築し、性能向上へ試行錯誤を繰り返す。通常、ニューラルネットワークの構造をプログラミングし、その関数ブロックを組み合わせるが、視覚的な理解に難がある。

 今回の「Neural Network Console」では、この関数ブロックの概念をそのままに、簡便な形でGUI上に表現できる。そのため、AIの開発効率を大幅に改善できるという。なお、初心者には、機能を視覚的に確認できるため、短期間で技能の習得が可能という。

●AI開発環境(ソニー、「Neural Network Console」)のテクノロジー

 ソニーが無償提供するコアライブラリと統合開発環境は、ソニーが培ってきたAI技術の結晶であろう。ソニーは今回の施策をAI環境整備の一環という。今後、人工知能の搭載による利便性の向上が期待されるなか、ディープラーニングの統合開発環境の提供を通じて、より幅広い開発者、研究者に利用され、社会の発展へ貢献していくという。

 ディープラーニングの良否は、ニューラルネットワークの構築に依存する。そのため、より視覚的に試行錯誤ができることを念頭に置いているようだ。ニューラルネットワーク構造を視覚で確認しながら設計できるGUI。新たなアイディアを即座に反映しながら試行錯誤を繰り返すドラッグ&ドロップ編集。設計完了後に、ボタン一つで高速な学習が開始され、学習の進捗状況や性能は画面上でリアルタイムに確認できるという。加えて、ニューラルネットワークの設計を最適化するチューニングを任せることも可能としている。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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