ジャパンディスプレイは自立できるのか?

2017年6月8日 17:43

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 ジャパンディスプレイ(JDI)は5年前に日立製作所と東芝、ソニーの液晶パネル事業を統合して官民ファンドの産業革新機構の肝いりで設立された。得意とするスマートフォン向けの中小型液晶パネルが競争激化により赤字体質を脱却できずもがいているうちに、中国液晶メーカーが積極的な投資を続け供給量が増加、液晶パネルの相場はさらに低迷した。加えてアップルが今秋発売予定の「新型iPhone」の一部モデルに有機ELパネルを採用するため、中小型液晶パネルは数量・単価ともに更に厳しくなり、先行きの見通しに警戒感が漂っていた。

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 このため同社は経営陣を刷新することとなり本間会長の退任が発表され、筆頭株主である産業革新機構出身の谷山取締役は4月末に産業革新機構を退職し、同機構の勝又社長が社外取締役に就任する予定である。2月8日の決算説明会で本間会長は17年3月期の最終黒字を約束していたが、僅か3カ月後には約束を反故にした形となり、経営幹部の責任が強く問われていた。

 後任の会長にはJOLED(ジェイオーレッド)で社長を務める東入來氏が就任する。このJOLEDは産業革新機構が親会社となっている有機EL開発会社で印刷型有機ELパネルの技術開発を推進してきた。5月17日に低コストの「印刷方式」で生産した有機ELパネルを初披露した際、「中型以上のパネルについては印刷方式が有機ELの標準になっていく」と語り、今後の方向性を示唆している(その後、東入來との交代が発表されていた有賀社長が代表権のない社長兼最高執行責任者(COO)に復帰するとの異例の変更が行われ、経営の混迷を垣間見せた)。

 JDIは昨年、資金難に陥ったことからJOLEDを連結子会社とすることを柱とする中期経営計画を策定して、産業革新機構から750億円規模の支援を受けたものの、その後も迷走を続けてきた。7日にJDI株が終値で10%近い上昇となり注目されているが、背景には今年の夏を目途に中期経営計画を見直し、抜本的な経営再建策を策定すると報じられたことや、同日シャープ幹部が「独占禁止法の問題があり買収や合併はできないが、技術協力などは可能だ」と言及したことで、3期連続の赤字を受けて低迷してきた同社株が見直されたものである。

 しかし、JOLEDの子会社化を柱とした中計をもとに資金調達を行った上、その中計を見直しすることが市場で歓迎されているのであれば、同社が迎えている危機の深刻さを暗示しているのではないか?産業革新機構のゆりかごを離れて自立する日が来るのか。同社とJOLED、産業革新機構のガバナンスの在り方が、今問われている。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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