産総研ら、ドローンによる埋没車両の探査システム開発、災害時活用を推進

2017年6月7日 07:17

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ドローンつり下げ型電磁探査システムによる航行計測の様子(左図)とセンサー部(右図)(産業技術総合研究所の発表資料より)

ドローンつり下げ型電磁探査システムによる航行計測の様子(左図)とセンサー部(右図)(産業技術総合研究所の発表資料より)[写真拡大]

 産業技術総合研究所は5日、複数社と共同で、土砂災害時にドローンを使用し、空中から埋没車両を探査するシステムを開発したと発表。検証実験では埋没車両の位置特定に成功した。人やヘリコプターでは探査が困難な場合も、ドローンなら綿密な探査が可能。災害時の実用化に向けて弾みをつけた。

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 本システムは、エンルートや日立製作所、八千代エンジニヤリングと共に開発。電磁探査による位置特定システムを搭載したセンサー部を、ドローン部がつりさげる形で運用する。

 ドローンによる地形調査や空撮はすでに行われているが、今回の試みは世界でも先駆的。より迅速な救助活動のために今後も実験を重ねていく。

 これまで2004年の新潟県中越地震、2016年の熊本地震の折に起きた土砂災害では迅速な車両の探査が求められても、人の立ち入りが望めない状況では難しかった。また近頃ではゲリラ豪雨など、不安定な気象による土砂災害も頻発している。

 国土交通省によれば2016年の土砂災害は1492件。こうした背景もあり、技術開発は進んだ。ただ、実際の災害現場では地面の傾斜が急で険しい場合が多く、センサーをつりさげたドローンの航行は不安定になる懸念もある。

 今後はより起伏が大きい、現実の状況に近づけて実験を行う。さらに開発した技術を民間企業に渡し、実用性を高めていく予定。

 産業技術総合研究所はエレクトロニクスや人間工学、地質調査などの分野で研究を進めている。地質調査においては、地震の発生予測に関する研究や火砕流や津波の浸水領域の画像化、全国の地質図の作成も実施。建築や防災、観光、資源探査などに活かす見通し。

 国もドローン活用は推進しており、国土地理院は平時の測量や災害時の状況把握のための体制を構築。熊本地震の際は高い機動力をもってその被災状況を全国にいち早く伝えた。

 また行政は民間企業とも協定を締結。この動きは警視庁にも及び、例えば福生署は、民間企業と山岳地帯や氾濫した川など立ち入れない場所の状況把握における協力協定を結んでいる。(記事:小椋恒示・記事一覧を見る

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