セルロースナノファイバーの高成形性シートを開発、サンプル配布へ

2017年5月11日 06:53

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アウロ・ヴェール3D。(画像:王子ホールディングス発表資料より)

アウロ・ヴェール3D。(画像:王子ホールディングス発表資料より)[写真拡大]

 セルロースナノファイバー(CNF)。次世代の素材として近年注目を集めている植物由来のマテリアルである。王子ホールディングス(以下、王子HD)は、超微細CNFを用い、立体的な成形を可能にしたCNF透明シートの製造に成功、これを商品名「アウロ・ヴェール」と名付けていたが、今回、さらに高い成形性を誇る透明シート「アウロ・ヴェール3D」の開発に成功したと発表した。今月中にもサンプルの配布を開始する予定であるという。

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 セルロースナノファイバーは、名前の通り、その元になっているのはセルロース、つまり植物の繊維である。紙と同じく、パルプから作る。誰もが知るように紙は柔らかく、また破断しやすいものであるが、CNFは金属のような強度を持つ。パルプ(セルロース)を10億分の1(ナノ)メートル単位まで細かくして、再成形すると、その繊維(ファイバー)は密接に絡み付き合い、高い強度を持ったマテリアルへと生まれ変わるというわけだ。これがCNFである。

 何しろ元がセルロースであるから可燃性を持っていて熱に弱い、現状ではまだ1グラムあたり数千円程度と製造コストが高いことなど難点ももちろんあるが、環境負荷の低さと、そしてこれは森林面積が世界的に見てもとりわけ高い日本という国にとって重要なことだが、用途の限られている森林資源の新たな活用手段として、期待されている。

 アウロ・ヴェール3Dは、従来のアウロ・ヴェールの高い透明度、フレキシブル性、低熱膨張性に加えて、自由に成形加工ができるという特徴があり、新たな分野や用途への展開が期待されている。

 現時点ではさしあたり、医療用途、スマートフォンのパーツ用途などが想定されているが、新しい素材であるため、これまでにない新しい発想による使用法そのものが求められており、それ故に王子HDではサンプルを広く配布し、新たな使用法の開発に繋げようとしているのだ。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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