VCにもお勧め!法務デューデリジェンスチェックリストで効率アップを

2017年1月6日 21:42

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記事提供元:biblion

 【連載第3回】先ごろ書籍『法務デューデリジェンスチェックリスト』を出版した弁護士・佐藤義幸氏の連載第3回。今回は、弁護士などの専門家に依頼すると多額の費用がかかる法務デューデリジェンス(法務DD)について、「コストパフォーマンス」という視点から語っていただいた。

VCにもお勧め!法務デューデリジェンスチェックリストで効率アップを

法務デューデリジェンスの値段

― 法務DDを行う対象分野・項目はかなりたくさんあると思うのですが、1人の弁護士で対応できるものなのでしょうか?

 佐藤:1つの会社の法務DDを1人の弁護士だけで行えるかというと、基本的には非常に難しいと言わざるを得ません。
 なぜなら法務DDの対象分野は、「会社組織」「株式」「契約」「資産」「負債」「知的財産」「人事労務」「許認可および規制遵守」「訴訟その他の紛争」など非常に多岐にわたっているからです。これら全ての分野の法務DDを1人でできる人は限られているといってよいでしょう。
 どんなに小規模な法務DDでも、通常2~3名の弁護士がそれぞれ得意な分野を中心に担当してやっていくことが多いですね。

 また、法務DDという業務は、単に企業の法務的な問題点の発見だけではなく、「その問題をどう解決するか」というソリューションまで含まれます。
 先に挙げた9つの分野における問題点を洗い出し、さらにソリューションまで考えて提案するというのは、それなりの知識と経験が要求されます。

 最近では、弁護士の業務も、コーポレート、ファイナンス、知財など専門化が進んでいますから、全分野をカバーできる人材は限られています。また、紛争処理経験の少ない弁護士の場合、的確なリスク評価ができずに保守的になりすぎる傾向も散見されます。

 いろんな考えがあるとは思いますが、私は、若手弁護士は、自分の専門分野を極めるだけではなく、視野を高く広く保ち、多角的な視点からクライアントにとって真に役に立つ助言ができるよう、他分野についても知識と経験を積むことが重要であると確信しています。その意味では、この本に書かれているレベルであれば、1人でも法務DDができるのが当たり前といえる時代になって欲しいですね。

― 企業が法務DDを弁護士などの専門家に依頼した場合、一般的にどれくらいの費用がかかるものなのですか?

 佐藤:大規模な法務DDの場合、先に挙げた9つの分野ごとにそれぞれ専門の弁護士が担当するということもあります。そうなると、どの程度詳しいレポートを作成するかによりますが、法務DDの実施費用だけで数千万円、時には1億円くらいかかる場合もあります。
 できるだけ特定の分野に精通した専門家に依頼しようとすると必然的に弁護士の数が増えていき、弁護士は基本的にタイムチャージ(作業時間・拘束時間に対して支払う費用)でやっているケースが多いので、どんどんコストが高くなってしまう。それが、法務DDが高コストになってしまう原因でもあるのです。

「法務デューデリジェンスチェックリスト」でコスト削減を!

― 今回、佐藤さんが出された『法務デューデリジェンスチェックリスト』を上手く活用すれば、企業側も法務DDを行うコストが削減できるのではないでしょうか?

 佐藤:おっしゃる通りです。法務DDのチェックリストをある程度標準化しておいて、ポイントだけを絞って行うことができれば、高コストを抑えることができるようになります。
 弁護士業界から「こんなものを公開されたら我々の飯の種が奪われてしまう」といった批判が出てくるかもしれませんが、こうしたチェックリストを誰もが活用できるようになれば、法務DDの裾野が広がって、今まで必要だったにもかかわらずできなかった法務関連業務ができるようになるはずです。

 私がこの本の元になったチェックリストを作成したきっかけは、あるクライアントから、小規模のM&Aの法務DDを依頼された際、クライアントの予算に応えることができずに断らざるを得ず、気まずい思いをしたという経験からです。

 法務DDで時間がかかるのは、調査自体というよりはレポートの作成部分ですので、ある程度しっかりとしたチェックリストがあれば、レポートの仕方も工夫でき、生産性の高い法務DDができるのではと考えて、この本の出版を思いついた次第です。
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― 「法務デューデリジェンスチェックリスト」は、当然ベンチャーキャピタル(VC)などの投資家にとっても非常に便利なツールになりますね。

 佐藤:そうですね、支配権の取得を目的としないVCなどの投資家について言えば、ほとんどを外部に依頼している所もありますが、法律事務所や弁護士などに依頼せず自分たちで法務DDを行っている所の方が多いです。

 企業価値が数億円から10億円程度の会社に、約10%から20%の株式取得を目的とする取引の場合、投資金額は、数千万からせいぜい1、2億円といったところです。そうしますとコスト的になかなか外部には頼みにくいのかもしれません。

 また、スタートアップ企業の場合、法務管理体制が整っていない場合の方が多いですから、成長性のありそうな企業で、経営者も信頼できそいうであれば、とりあえず投資を行って、追々、法務管理体制を整備させていけばよいと考えるのも無理はないかもしれません。

 自分たちで法務DDを行うところでは、自社でチェックリストを作成しているところが多いと思われますので、この本を使えば、自社のチェックリストで何か足りないものはないかの検証に役立つものと思います。

 また、法務DDを外部に依頼しているVCでも、「法務デューデリジェンスチェックリスト」を使って、自分たちで事前に、ある程度投資対象企業をチェックできれば、「この項目は調査依頼する必要がないな」とか「ここは心配だから調べてもらおう」ということがある程度分かるようになります。

 そうすれば、外部に法務DDを丸投げするのではなく、「どの分野のどの項目を、どのようなレベル感で調査してほしい」という依頼の仕方ができるようになり、コスト削減にもつながります。

― 投資先に「法務デューデリジェンスチェックリスト」を使って、セルフチェックしてもらうツールにも使えそうですね。

 はい。優秀なハンズオン部隊を抱えているVCでも、投資先の法務まで助言できる人材は限られています。投資先にこの本を紹介して、セルフチェックを行わせて、発見された問題をどのように解決していくかを投資先と協議しながら進めて行くという使い方ができれば、効率的なハンズオンが可能となると思います。

「法務デューデリジェンスチェックリスト」で投資家と専門家の共通認識を

法務DD依頼される側も、何をどこまでやればいいかが明確になっていればやりやすいですね。

 佐藤:はい。法律事務所や弁護士がVCなど投資家に「今回の法務デューデリジェンスは、どこをどのレベル感でやりましょうか?」と聞いたとき、依頼主が法務デューデリジェンスについてよく分っていない場合、「じゃあ取りあえず全部見てもらえますか?」ということになり、本来なら必要のない無駄なコストがかかってしまうことになります。逆に、「じゃあこことこの部分だけ見てください」と言われれば、当然その部分だけを調査・分析すればいいわけです。ですが、そのとき共通の話し合いの土台、基準のようなものがないと議論のしようがありません。

 そんな時、「法務デューデリジェンスチェックリスト」のようなものがあれば、「あ、この分野はこのレベル感までは要らないですね」「この項目はこのレベルで」という感じで話ができます。
 初回のキックオフミーティングなどでそうした共通認識をとっておけば、非常にコストパフォーマンス良く法務DDができるのではないでしょうか。

 法務的な知識を持っている投資家にとって、「法務デューデリジェンスチェックリスト」は、さらにプラスして調査・分析するところはないのか? など自分の仕事を自己検証するツールにもなるはずです。
 投資家の皆さんにも、ぜひ一度使っていただきたいですね。(次回へ続く)

佐藤義幸さん

佐藤義幸さん弁護士・ニューヨーク州弁護士90年代の半ばからスタートアップ企業の法務・知財戦略支援、ベンチャー投資ファンドの組成・投資支援、IPO支援など、多くのベンチャー関連業務に携わる。また、産業再生機構によるカネボウの支援案件に従事して同社の多数のノンコア事業や本体のバイアウトに携わるなど多くのM&A案件も手がける。電子マネーのフィージビリティ・スタディに始まり、医療クラウド、シェアリング・エコノミーなどその時代の新規事業案件にも積極的に取り組んでいる。〔略歴〕山口県下関市出身。1992年京都大学法学部卒業。1994年大阪弁護士会弁護士登録(1997年東京弁護士会登録替え)。2000年西村総合法律事務所(現 西村あさひ法律事務所)に移籍。2001年ニューヨーク大学ロースクール卒業(LL.M.)。2003年ニューヨーク州弁護士登録。2005年同事務所パートナーに就任、現在に至る。〔主な論文・書籍〕『知財デューデリジェンス』(商事法務、2010)、『解説 改正著作権法』〔共著〕(弘文堂、2010)、『クラウド時代の法律実務』〔共著〕(商事法務、2011)、「クラウド・コンピューティング関連法の実務的諸問題」〔共著〕NBL No.976号- No.981号(2012)、『知的財産法概説<第5版>』〔共著〕(弘文堂、2013)、『新しいファイナンス手法』〔共著〕(金融財政事情研究会、2015)ほか。 元のページを表示 ≫

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