燃料電池フォークリフトを使った「水素サプライチェーン」の大規模実証実験をトヨタほかが協働

2016年3月16日 11:36

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記事提供元:エコノミックニュース

2016年2月に実用化モデルとして発表された豊田自動織機製・燃料電池フォークリフト。トヨタ自動車の燃料電池車「MIRAI」と同じ燃料電池セルを使用する

2016年2月に実用化モデルとして発表された豊田自動織機製・燃料電池フォークリフト。トヨタ自動車の燃料電池車「MIRAI」と同じ燃料電池セルを使用する[写真拡大]

 神奈川県、横浜市、川崎市の3つの自治体と、岩谷産業、東芝、トヨタ自動車の3法人が協働して、京浜臨海部における再生可能エネルギーを活用した、低炭素な水素サプライチェーンモデルの構築を図る実証プロジェクトをスタートさせる。この具体的な内容について、6組織が協働で2015年9月から検討を進めていたが、詳細が決定し、実証実験を開始することになった。

 この実証プロジェクトでは、まず横浜市風力発電所「ハマウィング」敷地内に、風力発電でつくった電力で、水を電気分解してCO2フリー水素を製造。その水素を貯蔵・圧縮するシステムを構築する。

 ハマウィング敷地内で製造した水素を、簡易水素充填車により輸送し、横浜市内や川崎市内の青果市場や工場・倉庫等に導入する燃料電池(FC)フォークリフトで使用するといったサプライチェーンの構築を目指す。

 風力発電で得た電力で水から水素を取り出す「水電解装置」は、東芝のシステムを使い、風が吹かない日に備えて常に電力を供給するための大容量蓄電池を用意する。蓄電池は廃車となったトヨタのハイブリッド車駆動用ニッケル水素電池を回収して再利用する150kWhの蓄電池だ。

 ここで製造した水素は岩谷産業が、FCフォークリフト用の簡易水素充填車を日本初導入して運送する。トラックは4t車トヨタ製ハイブリッドトラックだ。フォークリフトの水素使用量はIoTなどで常時把握し、最適量を各地で稼働するFCフォークリフトに供給するという。

 FCフォークリフトの配置場所は、使用条件・環境が異なる4カ所とし、当面「短距離・多頻度使用」の典型として横浜市中央卸売市場青果部、「重量物搬送」の拠点としてキリンビール横浜工場、「屋内多層階・屋内水素充填」場所として「かわさきファズ物流センター」内のナカムラロジスティクス、「低温物流業」での使用としてニチレイロジグループ東扇島物流センターとなった。稼働するFCフォークリフトは計12台の予定だ。

 実証実験には、この2月に実用化モデルとして発表された豊田自動織機製FCフォークリフトを使用するが、実用化モデルは、トヨタ自動車の燃料電池自動車(FCV)「MIRAI」と同じ燃料電池セルを使用した新開発のフォークリフト専用FCシステムを搭載している。

 FCフォークリフトのメリットは、FCVとまったく同一で、「稼働中のCO2排出量がゼロ(ゼロエミッション・フォークリフト)」であること。現在主流のバッテリー式フォークリフトの場合6~8時間必要な充電時間は稼働不可能なため、通常高価な交換用電池を用意する必要がある。が、燃料電池式なら予備電池は必要なく「約3分の水素充填でおよそ8時間の連続作業で使える」点が挙げられている。

 6組織が協働する地域と一体となった水素サプライチェーンの構築により、電動フォークリフトやガソリンフォークリフト利用時に比べて、80%以上のCO2削減が可能になると試算している。この実証を通じて、将来の普及展開モデルを見据えた、コスト試算やCO2削減効果等を検証するとしている。(編集担当:吉田恒)

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