ブラックホール近傍の光の振動を初めて可視光で観測―京大・木邑真理子氏ら

2016年1月16日 21:32

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変動が激しい時期の可視画像データの比較の図。白い丸の中の星がはくちょう座V404星。およそ30分から一時間おきくらいの時間スケールで明るさが大きく変動していることがわかる。(京都大学の発表資料より)

変動が激しい時期の可視画像データの比較の図。白い丸の中の星がはくちょう座V404星。およそ30分から一時間おきくらいの時間スケールで明るさが大きく変動していることがわかる。(京都大学の発表資料より)[写真拡大]

 京都大学の木邑真理子博士前期課程学生・磯貝桂介前期課程学生らの研究グループは、ブラックホール連星「はくちょう座V404星」で、放射エネルギーの振動現象を可視光で初めて捉えることに成功した。

 X線連星は、ブラックホールまたは中性子星(主星と呼ぶ)と、普通の星(主系列星:伴星と呼ぶ)がお互いの周りを回っている連星系であり、特に不定期にアウトバースト(急激な増光現象)を起こす天体をX線新星という。その内の一つである「はくちょう座V404星」は、正確に距離がわかっているブラックホールの中では地球に最も近いブラックホールを主星に持つ天体であり、過去の観測から、アウトバースト中にX線で激しい光度変動を示すことが知られていた。

 今回の研究では、はくちょう座V404星が、2015年6月中旬から7月初旬にかけて26年ぶりにアウトバーストを起こした際に、断続的に、規則的なパターンを持つ激しい短時間変動(振幅:およそ0.1~2.5[mag]、周期:およそ5[min]~2.5[hours])が見えていることがわかった。

 また、Swift衛星によって得られたX線の観測データと可視光の観測データを比較、解析することで、この可視光での変動が、今までX線領域でしか観測されたことのない、ブラックホール近傍からの放射エネルギーの振動現象を表すものであるということがわかった。また、このような光度変動が、今まで他のX線連星で同じ種類の変動が観測されていたときの光度よりも10分の1以下の、非常に光度が低い時期にも起こっていたことも明らかになった。

 研究メンバーは、「今回の研究は今まで考えられてきたX線連星における周期的な光度変動を説明する理論に疑問を投げかけるものでもあったため、ブラックホールとその周りの降着円盤に関する理論研究家の方々とも議論を深め、今後のブラックホール天文学の発展を導きたいと考えています。また、今後数年以内に本格稼働予定の理学研究科附属天文台の3.8m望遠鏡を用いた可視観測や、2016年2月に打ち上げ予定のAstro-Hを用いたX線観測も視野に入れ、ブラックホール周囲の超強力重力下での極限物理の解明に挑みたいと思います」とコメントしている。

 なお、この内容は「Nature」に掲載された。論文タイトルは、「Repetitive Patterns in Rapid Optical Variations in the Nearby Black-hole Binary V404 Cygni」。

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