ソユーズST-Bロケット、航法衛星「ガリレオFOC-M2 SAT 7」、「同8」の打ち上げに成功

2015年3月30日 08:00

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記事提供元:sorae.jp

ソユーズST-Bロケット、航法衛星「ガリレオFOC-M2 SAT 7」、「同8」の打ち上げに成功(Image credit: Arianespace)

ソユーズST-Bロケット、航法衛星「ガリレオFOC-M2 SAT 7」、「同8」の打ち上げに成功(Image credit: Arianespace)[写真拡大]

 アリアンスペース社は3月27日、衛星測位システム「ガリレオ」を構成する航法衛星「ガリレオFOC-M2 SAT 7」と「同8」の2機を搭載した、ソユーズST-Bロケットの打ち上げに成功した。

 ロケットはギアナ時間2015年3月27日18時46分(日本時間2015年3月28日6時48分)、南米仏領ギアナにあるギアナ宇宙センターのELSから離昇した。ソユーズは順調に飛行し、打ち上げから約9分30秒後に、上段の「フレガート」を分離した。そしてフレガートは約3時間の飛行と、2回の燃焼をこなし、打ち上げから約3時間48分後に衛星を所定の軌道へと送り届けた。

 ガリレオFOC-M2 SAT 7、8は、欧州版GPSとも呼ばれる、全地球測位システムのガリレオを構成する衛星である。ガリレオFOCのFOCとは「Full Operational Capability」の略で、必要な能力をすべて持った、本格的な運用に使われる衛星という意味を持っている。2017年までに全24機が打ち上げられ、軌道上に配備される予定だ。

 開発は欧州宇宙機関(ESA)が指揮し、製造はOHBシステム社とサリー・サテライト・テクノロジー社(SSTL)が手掛けた。生成の寸法は2.5 x 1.2 x 1.1mで、太陽電池パドル展開時の翼長は14.7m、打ち上げ時の質量は約715kg。設計寿命は12年が予定されている。

 ガリレオはこれまでに、実験機の「ジョーヴェ」が2機、そして軌道上実証機の「ガリレオIOV(In-Orbit Validation)」が4機打ち上げられ、試験が続けられてきた。2014年8月22日にはガリレオFOCの1号機と2号機にあたるガリレオFOC M1 SAT 5、6が打ち上げられているが、フレガートの問題により計画通りの軌道に投入できなかった。その後衛星のスラスターを使うことで、当初予定していた軌道ではないものの、限定的ながら運用はできる軌道へ移動されている。

 打ち上げに使われたソユーズST-Bロケットは、ロシアのソユーズUやソユーズFGの後継機として開発されたソユーズ2ロケット・シリーズのひとつである「ソユーズ2.1b」を、アリアンスペース社が購入し、運用している機体だ。

 ソユーズ2シリーズはソユーズ2.1aとソユーズ2.1b、そしてソユーズ2.1vの大きく3種類があり、旧型機からエンジンの改良や、制御システムなどの電子機器の全面的な近代化などが施されている。特に後者については、機器の軽量化と、飛行プロファイルの最適化が可能になったこと、打ち上げ能力の向上につながっている。またウクライナなどから買っていた部品を無くし、ロシア製の部品のみで造られている点も大きな特徴として挙げられる。

 ソユーズ2.1aの1号機は2004年11月8日にサブオービタル(軌道に乗らない)飛行での試験を実施し、2006年10月19日の2号機で、初の人工衛星を搭載した打ち上げに成功した。それ以来、ロシアの通信衛星や航法衛星、偵察衛星などの打ち上げに使用されている。ソユーズ2.1aはこれまでに18機が打ち上げられ、2009年に予定より低い軌道に衛星を投入してしまった以外は、比較的安定した打ち上げを続けている。

 ソユーズ2.1bは、ソユーズ2.1aの第3段により高性能なロケットエンジンを装備し、打ち上げ能力を向上させた機体で、2006年から運用に入っている。これまでに16機が打ち上げられているが、2011年には、まさにその新しい第3段エンジンが原因で打ち上げに失敗している。

 アリアンスペース社のソユーズ2は、ソユーズ2.1aがソユーズST-A、ソユーズ2.1bがソユーズST-Bと名付けられて運用が行われている。STというのは同機が装備する「ST型」と名付けられた、ロケットの直径よりも一回りほど太いフェアリングに由来している。両機を合わせて、今回を含めて計11機が打ち上げられている。つまりソユーズ2シリーズは計45機が打ち上げられていることになる(ただし第1段がまったく異なるソユーズ2.1vは含まない)。

 ソユーズの最終段に搭載されていたフレガートは、ロシアのNPOラーヴォチキン社によって開発・製造されている上段で、ソユーズやゼニート・ロケットで使われている。非対称ジメチルヒドラジンと四酸化二窒素を推進剤とし、最大3日間の軌道滞在と、20回以上ものエンジンの再着火が可能だ。またタンク形状が異なるいくつかの種類が存在し、今回のミッションで使われたのはフレガートMTと名付けられたバージョンだ。

 フレガートMTは2014年8月に、ガリレオFOC M1 SAT 5、6の2機を載せ、ソユーズST-Bでギアナ宇宙センターから打ち上げられたものの、計画から大きく外れた軌道に衛星を投入してしまうという失敗を起こしている。その後の調査で、飛行中に姿勢制御スラスターの燃料の配管が凍り詰まってしまったことで、正常な姿勢を保てなくなったことが原因と結論付けられている。また、もともとの設計に不備があったとされ、製造元のNPOラーヴォチキン社では事故後、フレガート・シリーズの設計変更などが行われたとされ、今回も含め、以降の打ち上げでは問題は起きていない。

■Arianespace - Press Release - Arianespace successfully launches two satellites in the Galileo constellation
http://www.arianespace.com/news-press-release/2015/3-27-2015-VS11-success.asp

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