東大、ブラックホール周辺のガス落下メカニズムを解明

2015年2月12日 15:21

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(a)降着円盤と宇宙ジェットの模式図、(b)降着円盤の部分系で行った3次元粒子コードの結果。円盤が12回転して乱流が十分発達した状態。青の線が磁力線、赤のシートで挟まれた領域はガス密度が高い領域。密度が高い領域で磁気リコネクションが活発に起きている。(c)エネルギースペクトルの時間発展。横軸が静止質量で規格化したエネルギー、縦軸が粒子数。時間が経過するにしたがって宇宙線が効率よく生成されている(東京大学の発表資料より)

(a)降着円盤と宇宙ジェットの模式図、(b)降着円盤の部分系で行った3次元粒子コードの結果。円盤が12回転して乱流が十分発達した状態。青の線が磁力線、赤のシートで挟まれた領域はガス密度が高い領域。密度が高い領域で磁気リコネクションが活発に起きている。(c)エネルギースペクトルの時間発展。横軸が静止質量で規格化したエネルギー、縦軸が粒子数。時間が経過するにしたがって宇宙線が効率よく生成されている(東京大学の発表資料より)[写真拡大]

 東京大学の星野真弘教授は、ブラックホールの周りに形成される降着円盤で宇宙線が効率よく作られ、従来考えられていたよりも短時間でガスが中心天体に落下できることをシミュレーションで明らかにした。

 天体の周りにあるガスが落下して可視光やX線を放射するメカニズムを説明するために、これまではガスの衝突が頻繁に起きる降着円盤が前提にされてきた。しかし、実際には大質量天体の周りではガスの衝突がほとんど起きない無衝突系の円盤を形成していることが観測で明らかになっている。

 今回の研究では、ガスの衝突が無視できるほど希薄なガス円盤について第一原理に基づくプラズマ粒子コードを用いたシミュレーションを行った。その結果、ガスの密度が高い領域が時間と共に激しく変動し、磁気リコネクションによって一部の磁力線が高密度の領域を貫いていることや、磁場に平行方向圧力が大きいときは磁気リコネクションによる磁場の消失効果が弱くなり円盤の磁気ダイナモ作用で強い磁場が作られることが明らかになった。

 今後は、降着円盤から放出される宇宙ジェット形成の解明に繋がると期待されている。

 なお、この内容は2月12日に「Physical Review Letters」オンライン版に掲載される。

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