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【アナリスト水田雅展の株式・為替相場展望】イラク情勢などでリスクオフムード強まる可能性も
(6月16日~20日)
■方向感に欠ける展開、投資マインド改善の流れ継続だが、イラク情勢などでリスクオフムード強まる可能性も
来週(6月16日~20日)の株式・為替相場は方向感に欠ける展開となりそうだ。株式市場では、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のリスク資産運用比率引き上げへの期待感が下支え要因となり、投資マインド改善の流れは継続するだろう。ただし一方では主力株の上値が重く、東証1部市場の売買代金も盛り上がりに欠けている。引き続き新興市場を中心とするテーマ株の値動きに関心が集まりそうだ。
外国為替市場でも、イラク情勢やウクライナ情勢の悪化を受けてリスクオフムードが強まる可能性があり、一時的に円の強含みに注意が必要となる。重要イベントとしては17日~18日の米FOMC(連邦公開市場委員会)があり、米10年債利回りと米国株の反応が焦点となる。
前週(6月9日~13日)の日本株は、急ピッチの戻りに対する警戒感に加えて、週末13日の株価指数先物・オプション6月限メジャーSQ(特別清算指数)算出、日銀金融政策決定会合の結果発表と黒田日銀総裁の記者会見を控えて、さらにイラク情勢やウクライナ情勢の悪化によるリスクオフムードなどで上値の重い展開だった。
しかし一方では、政府の「骨太の方針」「新成長戦略」や、GPIFのリスク資産運用比率引き上げへの期待感も強く、週末13日の午後には安値圏から急速に切り返す動きとなって、底堅さを印象付けた。
週間騰落率で見ると日経平均株価は20円60銭(0.14%)上昇した。上値の重い展開が続き、週末13日には週間安値となる1万4830円99銭まで下落する場面があったが、売り一巡後は急速に切り返す展開となり終値は1万5097円84銭だった。TOPIXは9.40ポイント(0.76%)上昇して13日の終値は1243.97だった。
東証マザーズ指数は47.17ポイント(5.67%)上昇した。週末13日の終値は879.40となり、終値ベースの5月19日安値635.00から244.40ポイント(38.49%)上昇したことになる。物色もネット関連やゲーム関連から、LINE関連、ロボット関連、省エネ関連、新エネルギー関連、バイオ関連などに広がり、個人投資家のマインド改善が一段と鮮明になった。
外国為替市場では、イラク情勢やウクライナ情勢の悪化も影響して円買いの動きが強まり、1ドル=101円60銭台、1ユーロ=137円70銭台までドル安・円高、ユーロ安・円高方向に傾く場面があった。ユーロに関しては、次回7月3日のECB(欧州中央銀行)理事会での追加金融緩和観測も影響しているだろう。
週末13日の米国株は3日ぶりに小幅反発した。ダウ工業株30種平均株価は10日の終値ベースの史上最高値から、イラン情勢など地政学リスクへの警戒感も影響して11日と12日は利益確定売りが優勢だったが、13日は米インテルの業績見通し上方修正を好感したようだ。CME日経225先物(円建て)は1万5050円だった。外国為替市場は東京時間に比べてややドル高・円安方向に傾き、1ドル=102円00銭~10銭近辺、1ユーロ=138円00銭~10銭近辺で終了した。
前週末13日の米国市場の結果を受けて、来週初16日は日本株、為替とも方向感に欠けるスタートとなりそうだ。大きな動きは見られず、その後はイラク情勢やウクライナ情勢、そして米国市場の動向などを睨みながらの展開だろう。
全体として投資マインド改善の流れは継続するが、テクニカル面で見ると東証1部市場の騰落レシオ(25日移動平均)が13日時点で130.25%と過熱感を示すラインを越えていることもあり、急ピッチの戻りに対する警戒感が強まる可能性があるだろう。また主力株の上値が重く、東証1部市場の売買代金で見ても依然として盛り上がりに欠ける状況だ。まずは日経平均株価1万5000円台固めとして、やはり新興市場を中心としたテーマ株物色の流れだろう。
重要イベントとしては、18日の米FOMC(連邦公開市場委員会)声明発表とイエレン米FRB(連邦準備制度理事会)議長の記者会見が注目される。今回も100億ドル規模でテーパリング(量的緩和縮小)の継続を決定するとの見方でほぼ一致しているが、15年のゼロ金利解除時期を巡って思惑が交錯する可能性もあり、その後の米10年債利回りと米国株の動向が焦点となる。
海外要因としては地政学リスクも焦点となる。タイに関しては夜間外出禁止令が解除されて警戒感が後退するが、イラク情勢が新たなリスク要因として急浮上し、ウクライナ情勢に関しても予断を許さない状況が続く。中国に関しては、18日に中国5月主要70都市新築住宅価格の発表が予定されているが、景気減速トレンドは織り込み済みで反応は限定的だろう。
国内要因としては引き続き、政府の「骨太の方針」「新成長戦略」や、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のリスク資産運用比率引き上げへの期待感が支援材料となる。安倍晋三首相は13日に「法人実効税率を15年度から数年間で20%台に下げることを目指す」と明言したが、これを市場が素直に好感するのか、依然として具体性に乏しいと判断するのかも注目されるだろう。
株式市場での物色動向としては、主力株に関しては上値の重い状況だけに、引き続き新興市場を中心にテーマ関連株物色の動きに関心が集まりそうだ。主力株に本格的に資金が流入するのは4~6月期の業績発表後だろう。ただし主力株の中では出遅れ感の強い金融・不動産関連に注目しておきたい。
為替については17日~18日の米FOMCに向けて小動きを想定するが、イラク情勢やウクライナ情勢の悪化を受けてリスクオフムードが強まる可能性もあり、一時的に円の強含みに注意が必要となる。18日の米FOMC声明発表とイエレン米FRB議長の記者会見後は、15年のゼロ金利解除時期を巡って思惑が交錯する可能性もありそうだ。
その他の注目スケジュールとしては16日の日銀6月金融経済月報、米5月鉱工業生産・設備稼働率、米6月ニューヨーク連銀製造業業況指数、米6月住宅建設業者指数、17日の日本5月マンション発売動向、独6月ZEW景況感指数、米5月消費者物価指数、米5月住宅着工件数、18日の日本5月貿易統計、タイ中銀金融政策決定会合、米1~3月期経常収支、19日の日本4月全産業活動指数、ユーロ圏財務相会合、米5月コンファレンス・ボード景気先行指数、米6月フィラデルフィア連銀業況指数、20日のEU財務相理事会などがあるだろう。
その後は、6月23日の中国6月製造業PMI速報値(HSBC)、25日の米1~3月期GDP確報値、26日~27日のEU首脳会議、27日の日本5月完全失業率・有効求人倍率、日本5月家計調査、日本5月全国・6月東京都区部消費者物価指数、7月1日の6月日銀短観、豪中銀理事会、3日のECB(欧州中央銀行)理事会と記者会見、米6月雇用統計、9日~10日の英中銀金融政策委員会、14日~15日の日銀金融政策決定会合、29日~30日の米FOMC(連邦公開市場委員会)などが予定されている。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。
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