トヨタ、高効率パワー半導体を開発 HV車の燃費10%向上目指す

2014年5月21日 11:08

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左:シリコンパワー半導体採用PCU(現行品) 右:SiCパワー半導体採用PCU(目標サイズ)

左:シリコンパワー半導体採用PCU(現行品) 右:SiCパワー半導体採用PCU(目標サイズ)[写真拡大]

  • 左:シリコンパワー半導体ウェーハ(トランジスタ) 右:SiCパワー半導体ウェーハ(トランジスタ)
  • トヨタ自動車の電子制御装置や半導体などの研究開発・生産拠点である廣瀬工場

 20日、トヨタはデンソー・豊田中央研究所と共同で、新しい素材であるSiCによるパワー半導体を開発したと発表した。同半導体を採用したハイブリッド車(HV)の試作車では5%を超える燃費向上を確認しており、将来的には10%の向上を目指すという。

 SiCとは炭化ケイ素のことで、半導体であると同時に硬度・耐熱性・化学的安定性に優れているため、研磨剤料・耐火物・発熱体・電子素子などに利用されることが多い。自動車用としては、ディーゼル車の煤塵を除去するフィルター剤として使用されているものが有名だ。

 パワー半導体とは電力用半導体素子のことで、主に電力機器に用いられている。一般的な半導体素子に比べて高電圧・大電流で使用でき、高周波動作が可能なものも多いという。

 ハイブリッド車に搭載されているパワーコントロールユニットは、同車の走行時にバッテリーの電力をモーターへ供給することで車速を制御している。加えて、減速時には回生した電力をバッテリーに充電するなど、電力利用において重要な役割を担っている一方で、電力損失の約1/4を占めているのが現実だ。その損失量の比率は、車両全体の約20%に達している。そのため、パワー半導体の電流を流す時の抵抗を低減して高効率化を図ることは、同車の燃費向上のキーテクノロジーのひとつであり、同社では1997年のプリウス発売時よりパワー半導体の自社開発に取り組んで燃費向上に努めてきたわけだ。

 SiCによるパワー半導体は従来のシリコンタイプよりも高効率化が可能な半導体材料であり、トヨタグループでは1980年代からデンソー・豊田中央研究所が基礎研究を始め、2007年からは同社も参加して実用化に向けた技術開発を共同で進めてきた。2013年12月には電子制御装置や半導体などの研究開発及び生産の拠点である広瀬工場(愛知県豊田市)内に、SiC専用の半導体開発のためのクリーンルームを整備している。

 同社では、同半導体をパワーコントロールユニットに採用予定であり、今後1年以内に公道での走行実験を開始するとしている。すでに、同半導体(ダイオードとトランジスタ)を採用したパワーユニットを試作車に搭載し、テストコースで行った走行実験において5%を超える燃費向上を確認した。将来的には現在のシリコンパワー半導体と比べ、同車の燃費は10%向上すると同時に同ユニットは1/5の小型化を目指す。

 また、同半導体には電流を流す時の抵抗や電流を流したり止めたりするオン・オフ時(スイッチング)の損失が小さいという特徴があり、高周波化しても効率的に電流を流すことができる。この性能を十分に引き出すことにより、パワーコントロールユニットの体積の約40%を占めるコイル・コンデンサの小型化が可能となり、将来的に同ユニットの体積は現行型の1/5を目指す。

 なお、本技術は21日~23日までの3日間、パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)で開催される「人とくるまのテクノロジー展2014」に出展を予定している。(記事:松平智敬・記事一覧を見る

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