増える食物アレルギー、企業の研究と対策

2014年4月19日 18:21

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記事提供元:エコノミックニュース

 日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会が発表した「食物アレルギー診療ガイドライン2012」によると、日本人の食物アレルギーの有病率は乳児で約5~10パーセント、幼児で約5パーセント、学童期以降が1.5~3パーセントとなっている。食物アレルギーの発症は0歳から乳幼児期がピークで、学童期以降は加齢とともに減少するものの、成人してからも持続して一定の発症数が認められている。しかも、子どもの食物アレルギーは適切な対応で自然に治まることも多いが、成人してからの食物アレルギーは完治しにくく、生涯にわたって継続することもあるため、油断は出来ない。

 また、同調査によるとアレルギーを引き起こす頻度の高い食物としては、鶏卵(38.3パーセント)、乳製品(15.9パーセント)、小麦(8パーセント)などが3大主要原因食品として全体の約60%を占めており、以下、甲殻類、果物類、ソバ、魚類が続き、大豆までの上位10食品で全体の90%を占めている。しかしながら、最近では梅干やグレープフルーツなど、これまでにあり得なかった食材を原因に発症する例も見られていることから、どんな食品においても注意が必要であると考えられる。

 食物アレルギーは今後も増加の傾向にあるとみられるが、その予防と対策については、まずは「原因となる食物を摂取しないこと」が基本となる。しかし、原因物質が特定できていない場合には誤って口にしてしまうこともあるだろう。下痢やかゆみ、じんましんなどの軽度なアレルギー症状なら見過ごしてしまうことも多く、それが過剰になれば血圧低下や意識障害、呼吸困難などの重篤な症状を引き起こすことにもなりかねない。そこで重要となってくるのが、食品を扱っている業者の食物アレルギーへの取り組みだ。

 例えば、食肉加工品を手掛ける日本ハム<2282>では、ハム・ソーセージなどの多くの製品でつなぎ等の目的で乳成分や卵白、大豆成分を使用していることから、1996年から「食物アレルギー対応食品」の研究開発に取り組んでおり、1999年には厚生省(現・厚生労働省)から食肉製品で初めてアレルゲン除去食品の許可を得た「アピライトシリーズ」を完成させている。また、その後もアレルゲンの混入を検出するキットの開発や、研究で収集した情報、メニューレシピなどの発信を行うなど、食物アレルギーへの取り組みの幅を拡げている。

 また、ミツバチ産品の製造・販売で知られる株式会社山田養蜂場も、食物アレルギーの対策には熱心に取り組んでいる企業の一つだ。同社が扱うローヤルゼリーは、安全性の高い健康食品素材として世界中で古くから食されているが、それでも稀に食物アレルギーを発症する場合がある。しかし、近年の健康食品への関心の高まりを受けて、ローヤルゼリーを配合した食品や飲料も年々増加傾向にあるが、食物アレルギーへのリスク対策は充分に行われていないのが現状だという。

 同社では、日本でローヤルゼリーを扱うトップブランドの責任として、近畿大学農学部の森山達哉准教授らと共同で、喘息やアレルギーを持つ患者にごく稀に起こるローヤルゼリーアレルギーの原因たんぱく質を特定すべく研究を行ってきたが、この度、その成果として、ローヤルゼリーのアレルゲンタパク質がアピシンおよびMRJP2であることを裏づけることに成功した。また、同社独自の特許技術(特許第3994120号)によって、タンパク質をあらかじめ酵素で分解し、細かいペプチドにした酵素分解ローヤルゼリーでは、食物アレルギーのリスクがさらに低減していることが臨床でも確認できたという。

 近年では、飲食店やスーパーの食料品売場でも、アレルギー物質に対する表示などが増えてはいるものの、すべてを表記するのは不可能に近く、主なアレルゲン以外のものについては自己防衛するしかない。食物アレルギーを甘く見ている人も多いが、最悪の場合は死に至ることもあり、決して軽視できるものではない。同じ食品であるならば、アレルギーリスクについての取り組みを熱心に行っている業者の製品を選択するというのも、自己防衛策の一つではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)

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