韓国、自力による人工衛星の打ち上げに初成功

2013年1月31日 21:00

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記事提供元:sorae.jp

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  韓国航空宇宙研究院(KARI)は30日、技術試験衛星STSAT-2Cを搭載した羅老ロケットの打ち上げに成功した。

  STSAT-2Cを搭載した羅老ロケットは、韓国時間30日16時ちょうど(日本時間同じ)、韓国の南西部にある羅老宇宙センターから離昇、9分後に衛星を軌道に投入し打ち上げは成功した。その後31日3時27分12秒、大田市にある地上局が衛星との交信に成功、正常に動いていることが確認された。

  STSAT-2C(Science and Technology Satellite-2C)は韓国のKAIST(Korea Advanced Institute of Science and Technology)よって開発され、運用される衛星だ。失敗に終わった羅老1号機と2号機に搭載されていたSTSAT-2A、2Bとは異なり、太陽観測望遠鏡などの大掛かりな科学機器は搭載せず、地球周辺の放射線や電子、プラズマなどを観測する装置、地上と衛星との距離を測る装置、新しく開発された宇宙用機器の試験など、比較的簡素な機体になっている。質量は約100kgの小型衛星で、近地点高度292.0km、遠地点高度1511km、傾斜角80度の軌道に乗っている。設計寿命は約1年を予定している。

  羅老ロケットは韓国が初めて開発した衛星打ち上げロケットだ。もともと韓国では、国産の観測ロケットKSRシリーズを開発し、打ち上げを行っていた歴史があり、当初はこれを発展させた小型の衛星打ち上げロケット、KSLV-1(Korea Space Launch Vehicle-1)を開発することを目指していた。特に1998年の北朝鮮によるテポドン1号の発射はこれを刺激した。

  しかしその後、独自開発を止め、海外からの技術導入という形に大きく転換された。2004年にロシアのフルニチェフ社との間で契約が交わされ、KSLV-1の姿は、ロシアが開発、製造する第1段と、ロシアの技術指導の下、韓国で開発、製造する第2段によって構成される、名前は同じであるもののまったく異なるロケットになった。その第1段の基となっているのはアンガラという、ロシアでもまだ1度も打ち上げられたことがない最新鋭のロケットである。それどころか、今日でこそアンガラはロシアで開発が進み、今年中にも打ち上げかと噂されているが、韓国とロシアが共同でロケットを開発すると決めた当時、アンガラは計画だけで影も形もなかったのだ。ロシアにとっては韓国側の資金を使って新型ロケットを開発し、試験できる機会となった。

  その開発は、単にロケットをビジネスとして売り込むことを考えていたロシアと、その技術を吸収し、国産化することを目論んでいた韓国という両者の認識の違いから、多くの問題を生んだ。羅老の開発が遅れたばかりか、KSLV-1を発展させ、性能を向上させたKSLV-2、3の計画は無くなった。

  羅老と名付けられたKSLV-1の1号機は2009年8月25日に打ち上げられた。しかし衛星フェアリングの片方が分離できず打ち上げ失敗、続く2号機は2010年6月10日に打ち上げられたが、第1段ロケットが爆発し、再び打ち上げは失敗した。この2号機の打ち上げ失敗が、何が原因であったかを巡って、ロシアと韓国は揉めた。なぜなら当初の契約では、ロシアからのロケットの提供は2機まで、ただしロシア側の原因で打ち上げが失敗した場合、無償で3機目が提供されることになっていたからだ。爆発という突発的に起きる事象に対して、ロケットに搭載されていたセンサーやカメラから分かることは限られており、数少ない手がかりや憶測から、韓国とロシアの両者は責任のなすり付け合いを始めた。例えば韓国側は分離用に使われていたロシア製の爆発ボルトが原因ではないかとし、ロシア側はロケットを自爆させるために搭載されている韓国製の指令破壊装置が原因ではないかと主張していた。

  2011年、ロシアは3機目の機体の提供に同意し、3号機の打ち上げが決まった。3号機においては、2号機失敗の原因ではないかとロシア側が主張していた、指令破壊装置が取り除かれた。つまり3号機が明後日の方向に飛んで行ってしまっても、それを食い止める方法は無かったということだ。

  羅老ロケット3号機の打ち上げは2012年10月26日に予定されていたが、その当日、ロケットにヘリウムガスを供給する部位から漏れが検出され延期、それを解決した11月29日の打ち上げの試みでは、推力方向制御(TVC)装置に不具合が見つかり、再び延期された。そして今日、韓国はソ連、アメリカ、フランス、日本、中国、英国、インド、イスラエル、イラン、北朝鮮に次ぐ、自力による人工衛星の打ち上げに成功した国となった。

  こうした経緯を経て、ついに打ち上げに成功した羅老ロケットだが、ロシアからの第1段の提供が終了するため、今後二度と打ち上げられることはない。韓国は次の新しいロケットの開発計画を立てており、こちらは国産ロケットになる予定で、2020年ごろの打ち上げを目指しているが、その道は現在のところ混迷を極めている。

 ■한국 최초 우주발사체 ‘나로호(KSLV-I)'
http://www.kslv.or.kr/

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