【編集長の視点】「缶詰」の家庭備蓄率がアップ、地味産業だが震災背景に着実増加=浅妻昭治

2012年10月15日 09:53

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

<マーケットセンサー>

■「缶詰」関連銘柄は「内需人気」で意外な活躍も

  旧聞に属するが、10月10日は「缶詰の日」であった。135年前の明治初年に日本初の缶詰工場で初めて鮭缶詰が製造されたのが10月10日で、それを記念して制定されたという。その記念日に合わせてテレビのニュースやワイドショーで、話題として缶詰が取り上げられたことを記憶されている投資家の方々もおられるかもしれない。

  今回の当コラムは、この缶詰関連株を取り上げてみたい。缶詰関連株の業態は、オールドエコノミーもオールドエコミー、もちろん成長産業ではなく、成熟産業というよりどちらかといえば、生産量がピークを過ぎた衰退産業(?)に位置し、直接の関連株も地味な銘柄が多い。かつてはお歳暮・お中元の詰め合わせ商品の目玉だった「カニ缶」なども、最近はトンのお目にかからず、往年の栄光を保っているのか不確かである。

  しかし、テレビのニュースやワイドショーの取り上げ方をみると、この缶詰産業株の長い暗いトンネルの先にポッと明かりが仄見えた印象も残ったのが取り上げる理由である。缶詰だけに、あるいは「意外性の缶詰」となるのではないかと淡い期待もしてみた。

  全般相場は膠着感を強め、下ぶれリスクを強めている。この下ぶれリクスに決定的な引導を渡したのが、48年ぶりに東京で開かれた国際通貨基金(IMF)・世界銀行の年次総会である。世界各国の成長率見通しを下方修正し、IMFのラガルド専務理事が、欧州、米国、日本のそれぞれのリスク要因を列挙し、折から日米でスタートした企業業績がこのリスクを裏打ちしている。リスク要因が、劇的にプラス要因に転換しない限り全般相場が持ち直すのはなかなか難しい。それまでは、究極のディフェンシブ株として缶詰関連株を取り上げる相場見通しも許されると愚考したのである。

  缶詰関連株のトンネルの先にみえた明かりの一つは、東日本大震災を境に各家庭の缶詰備蓄率が上昇していることである。日本缶詰協会が、昨年8月に実施した調査では、備蓄率は震災前の37.6%が46.2%へアップしている。またテレビでは、缶詰そのものが多様化・高級化していて、量販店の売り場の陳列棚が広げられ、「缶詰バー」なる新たな外食業態が生まれたことも、その盛況ぶりの映像とともに伝えられた。

  日本缶詰協会のホームページには、農林水省が、鳥インフルエンザ(新型インフルエンザ)が流行した2009年に公表した家庭用食料品備蓄ガイドも掲載されている。鳥インフルエンザが大流行(パンデミック)した際に最低、2週間分の食料備蓄を奨めており、この備蓄食料品のなかに缶詰、レトルト食品が上げられている。これから秋が深まり冬場に向かう季節柄、これも株価材料になりそうである。

  これに関連して思い出したのが、あのバブル経済破綻後の平成不況下でのあるブームである。大手銀行や生命保険が不良債権の処理に行き詰まり、「危ない銀行」のウワサが飛び交い、預金先の銀行選びに難渋し「タンス預金」先の金庫株の株価などが関連高するなか、財産保全、生活防衛を図る方法として食料備蓄を奨めるハウツー本が話題を集めた。

  食料備蓄を半年分はいうに及ばず1年、2年と増加させれば、「第2の昭和恐慌」といわれた平成不況下でも命を永らえ、メンタル面でも安心が得られると実体験に基づいて教えていた。いまやバブル経済破綻は、日本はおろか米国、欧州、さらには中国でも破綻の懸念が強まるほどグローバル化しており、この食料備蓄ノウハウがリバイバルする可能性もないことではなく、缶詰関連株にフォローとなるかもしれないのである。(本紙編集長・浅妻昭治)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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