福島県「被害甚大地域」の企業、7割強が営業不能

2011年7月22日 14:42

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震災後の活動状況と今後の事業継続方針の調査結果を示すグラフ(出典:帝国データバンク「東北3県・沿岸部『被害甚大地域』5000社の現地確認調査<追報>」)

震災後の活動状況と今後の事業継続方針の調査結果を示すグラフ(出典:帝国データバンク「東北3県・沿岸部『被害甚大地域』5000社の現地確認調査<追報>」)[写真拡大]

 帝国データバンクが22日発表した「東北3県・沿岸部『被害甚大地域』5000社の現地確認調査<追報>」によると、福島県で東日本大震災に伴う津波や原発被害が大きかった地域では、7割以上の企業が実質営業不能状態にあることが分かった。

 同調査は、同社が8日に発表したレポートの続報。岩手、宮城、福島の東北3県のうち、津波の被害が特に大きかった地域と原発事故による立入禁止区域・計画的避難区域を合わせた「被害甚大地域」のうち、前回発表時点では未集計だった724社も加えた5004社すべてを集計した。

■全体では49.9%が実質営業不能状態
 調査結果では、3県合計で、震災後に「事業再開」を確認できた企業は2506社(50.1%)だった。それ以外の「実態判明せず」「事業休止中」を合わせた2498社(49.9%)は、実質営業不能状態にあることが分かった。前回レポートに比べて、「事業再開」した企業が小幅(1.5ポイント)ながらさらに低下した。

■福島県では7割超が営業不能状態
 県別では、福島県内の「被害甚大地域」にある1205社のうち、「事業再開」を確認できた企業は285社(23.7%)にとどまった。「実態判明せず」は755社(62.7%)、「事業休止中」は165社(13.7%)で、合わせて全体76.4%が、実質的に営業不能状態に陥っていることが分かった。

 特に、原発警戒区域内の大熊町、富岡町、双葉町などでは約9割が実質営業不能状態だった。多くの企業が強制的に退去を命じられたうえ、日々の生活を最優先して自主的に避難した経営者も多いためと見られる。

 また、今後の事業継続方針については、すでに事業を再開した企業を含め「事業継続意向」のある企業は316社で、全体の26.2%にとどまった。

 それ以外では、「調査不能」が755社(62.7%)と全体の6割超を占めた。「未定・検討中」とした企業(122社、10.1%)と、「廃業の予定」とした企業(12社、1.0%)を合わせると889社(73.8%)で、全体の7割超が今後の事業継続見通しが実質的に立っていないことが分かった。

■岩手では「事業再開」が過半数 津波被害が大きい地域では6割が営業不能
 岩手県内では、「被害甚大地域」にある1224社のうち、「事業再開」を確認できた企業が687社(56.1%)で過半数を占めた。「実態判明せず」の402社(32.8%)と「事業休止中」の企業(135社、11.0%)を合わせると537社で、実質的に営業不能状態にある企業は全体の4割超だった。

 一方、津波被害が甚大だった陸前高田市、山田町、大槌町などでは「事業再開」を確認できた企業は4割前後にとどまり、6割前後が実質営業不能状態だった。

■宮城でも「事業再開」が過半数 津波被害が大きい地域では7割が営業不能
 宮城県内の「被害甚大地域」にある2575社では、「事業再開」を確認できた企業は1534社(59.6%)で約6割だった。「実態判明せず」の778社(30.2%)と「事業休止中」の263社(10.2%)を合わせると1041社で、実質的に営業不能状態の企業は約4割だった。

 しかし、津浪被害が甚大だった南三陸町では「事業再開」を確認できた企業は53社(27.0%)にとどまり、7割超の企業が実質営業不能状態だった。

■福島県で特に厳しい状況
 今回の調査結果では、県別で被害状況に差が見られ、福島県の状況が特に厳しいという傾向がうかがえる。帝国データバンクによると原発警戒区域内にある企業は状況がさらに深刻で、「事業再開」を確認できた企業数は、福島第一原発がある大熊町で15社(町全体の11.5%)、近接する富岡町は20社(同10.5%)、双葉町は9社(同9.4%)、浪江町は36社(同11.7%)と突出して低く、軒並み1割前後にとどまっている。

 今後の事業継続方針を見ても、県全体の7割超の企業で見通しが立っておらず、「原発20キロ圏内にあるためこの場所では仕事が成り立たず、今は休業状態。見通しも全く立っていない」(福島県、製造)との声が多いという。

 帝国データバンクは、先行きを悲観した被災地の経営者が、事業継続をあきらめ倒産手続き入りする「先行き悲観・あきらめ型」の倒産が相次ぎ、全体の件数を押し上げる可能性が日に日に高まっていると指摘している。

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