関連記事
マスク氏率いるXの金融サービス「X Money」、米41州と首都で提供開始 最大年利6%・預金保険付き

(X)[写真拡大]
Xは2026年7月27日、米国のPremiumおよびPremium+加入者向けに金融サービス「X Money」の提供を拡大し、銀行基盤がCross River Bankであることを初めて明らかにした。ただし利用できるのは41州とワシントンD.C.で、ニューヨーク州とマサチューセッツ州などでは提供されていない。給与振込先として検討する利用者は、提携銀行の規制措置歴や、Xアカウント停止時の預金引き出し方法が公表されていない点を確認する必要がある。
■最大年利6%、預金保険付きの金融サービス
Xは2026年7月27日、金融プラットフォーム「X Money」を米国のPremiumおよびPremium+加入者向けに展開した。同時に、銀行サービスの基盤として、ニュージャージー州フォートリーに拠点を置き、Coinbase、Affirm、Upstartにもインフラを提供するCross River Bankを採用していることを初めて明らかにした。
Cross River Bankは、公正融資のコンプライアンス体制における「安全性または健全性を欠く慣行」を理由に、米連邦預金保険公社(FDIC)が2023年3月に出した同意命令の対象となった。命令が正式に解除されたかどうかは公に確認されていない。この経緯は、Cross River Bankのサービス開始時の発表にも、Xによる展開発表にも記載されなかった。給与をソーシャルメディアアプリ内に預けられるようになったPremium加入者440万人にとって、口座設定前に把握すべき背景である。
X Moneyは、最大年利6%の利息が付くFDIC保険対象の預金口座、Xのハンドルネームをレーザー刻印した金属製Visaデビットカード、Xアカウント間の手数料・送金額上限なしの個人間送金を提供する。このほか、カード購入額の3%キャッシュバック、給与の早期受け取り、ATM手数料無料、請求書支払い、電信送金、紙の小切手郵送にアプリ内で対応する。
Premium+加入者が「X Cash Sweep Program」に登録すると、資金が毎晩、最大40行のFDIC保険対象提携銀行へ自動的に分散され、預金保険の上限を通常の25万ドル(約4100万円)から最大1000万ドル(約16億4000万円)へ拡大できる。通常上限の40倍だが、この保護が適用されるのは提携銀行が破綻した場合であり、X Corp.自体の破綻を補償するものではない。
■「全米展開」でも利用できない州がある
「全米展開」には留保がある。資金移動サービスを担う子会社X Payments LLCが送金業免許を取得しているのは、現在41州とワシントンD.C.である。米国有数の金融市場であるニューヨーク州とマサチューセッツ州は含まれていない。
ニューヨーク州のMicah Lasher下院議員とBrad Hoylman-Sigal上院議員は2025年5月、ニューヨーク州金融サービス局(DFS)に対し、Xへの送金業免許を認めないよう正式に要請した。書簡では、イーロン・マスク氏のDOGEでの行動、Xの本人確認に関する脆弱性、マスク氏がホワイトハウス上級顧問だった期間にDOGE職員が米消費者金融保護局(CFPB)の競合企業データへアクセスしたとの疑惑を理由に挙げた。
2026年7月27日の提供開始時点で、ニューヨーク州は判断を示しておらず、免許も交付していない。マサチューセッツ州も免許を認めておらず、両州とも今後の予定は公表されていない。現在の規制条件では、両州のPremium加入者はX Moneyを利用できない。
■銀行免許を持たないX Moneyの仕組み
Xは銀行免許を持たず、取得する意向もない。代わりに、BaaS(Banking as a Service)と呼ばれる多層型のインフラを利用する。BaaSは、銀行ではない企業が免許を持つ金融機関と契約し、その規制基盤と資本の裏付けを利用しながら、顧客向け画面や体験を自社で提供するモデルだ。Alloyの組み込み型金融ガイドは、BaaSを、ブランド企業とその顧客へ銀行機能を拡張する組み込み型金融の「手段」と定義している。
免許を持つ金融機関がCross River Bankである。同行の中核製品「Cross River Operating System(COS)」は、独自開発したAPIベースの勘定系システムで、REST APIを通じて口座開設、取引管理、融資承認、決済網への接続を処理する。X Moneyで口座を開くと、COSが基礎となる口座構造を管理する。
個人間送金には、Visaのリアルタイム送金基盤「Visa Direct」が使われる。Visa DirectはOriginal Credit Transaction(OCT)という仕組みで受取人のVisaカードまたは連携口座に資金を送り、通常は24時間365日、30分以内に反映する。Inyo Globalの技術解説によると、送金者のカードからAccount Funding Transaction(AFT)で資金を引き出した後、OCTで受取人へ送る。
これは、対応銀行に双方が登録したうえで銀行口座間をACH経由で直接送金し、通常は数分で完了するZelleとは構造が異なる。1~3営業日かかる場合がある標準的なACH送金よりも大幅に速い。
Visaとの提携発表から全米展開まで18カ月で進められた背景には、Cross River BankのAPI優先設計がある。従来の勘定系接続には6~9カ月かかるのに対し、同行のREST APIではフィンテック企業が数週間で接続から口座提供まで進められる。この速さが米国の著名なフィンテック企業の基盤に採用されてきた理由であり、同時に同行の規制上の経歴を通常の外部銀行提携以上に重要なものとしている。
■提携銀行に対する2件の規制措置
Cross River Bankは10年以上前から組み込み型金融で存在感を示してきたが、規制当局の監視も同じく以前から続いている。FDICは2023年4月、同年3月8日付の同意命令を公表した。フィンテック提携先が利用する自動審査モデルで差別的な価格設定を検知・防止するための内部統制が不十分で、公正融資に関して「安全性または健全性を欠く」慣行があったと認定した。
ABA Banking Journalの分析によると、命令はCross River Bankが新たなフィンテック提携を結ぶ前にFDICの承認を得るよう求めた。この条件はX Moneyとの提携が成立した時点でも有効だった。Consumer Finance Monitorは、この命令について、銀行とフィンテック企業の提携に対する規制上の監視が強まることをBaaS事業者全体に示す警告だと指摘した。
Cross River Bankは申し立てを認めも否定もしていない。当時、同行の広報担当者は、同意命令について「範囲は狭く、2021年初頭に存在したCross Riverの公正融資プログラムの状態を是正することだけを対象としている」と述べた。同行は指摘された不備に対処したとしているが、命令が正式に解除されたかどうかは公に確認されていない。
これが最初の規制措置ではない。Cross River Bankは以前、Freedom Financialをめぐる執行措置に関与し、同行を通じて実行された2万4000件超の融資において、規制当局が不公正または欺瞞的と位置付けた慣行に関連して、FDICへ64万1750ドル(約1億524万円)の制裁金を支払った。この経緯はForbesが2019年に報じている。Elizabeth Warren上院議員も2026年4月にマスク氏へ送った書簡で、X Money利用者の預金を受け入れる銀行への懸念として、両方の規制措置を明示した。
この経緯が重要なのは評判の問題だけではない。BaaSでは、Cross River Bankが預金を保有して免許銀行としての規制義務を負い、X Paymentsが送金とその規制義務を担う一方、X Corp.は銀行規制上の義務を負わずアプリ画面を運営する。問題が起きた際に誰が責任を負うかという消費者保護は、この連鎖を構成するすべての主体が適切に機能することに依存する。FDICの命令は、Cross River Bankとフィンテック提携先を結ぶ部分が、少なくとも一度は預金保険を担う当局から不十分と判断されたことを示している。
■最大年利6%の条件は公表されていない
X Moneyの訴求点として最も強いのが最大年利6%である。2026年6月下旬時点で、大手リテール銀行の普通預金金利の全米平均は1%を大きく下回り、Ally、Marcus、SoFiなどオンライン銀行の高利回り口座でも年利はおおむね4~4.5%だった。X Moneyの6%は、通常の預金市場の採算で支えられる水準を上回る。
最も説得力のある説明は、この金利が顧客獲得費として機能しているというものだ。Xはすでに数億人の利用者を抱え、預金獲得のためのマーケティング費用をほぼ必要としない。広告へ多額を投じる従来のフィンテックアプリと異なり、既存プラットフォーム内で販売できるため、少なくとも短期的には補助金的な高金利が経済的に成り立つ可能性がある。
ただし、この金利がキャンペーンなのか恒久的なものなのかは公に確認されていない。7月27日の提供開始時点で、X Moneyは標準化された口座契約書も、金利、複利計算方法、手数料、引き出し制限などを記す連邦法上の「Truth in Savings」開示書も公開していない。この開示不足は、2026年6月にPremium加入者向けサービスが始まった際に初めて報じられた。文書が公表されるまで、6%が適用される条件や、Cross River BankまたはXが一方的に変更できるかどうかを利用者は確認できない。
Premium+加入者には、対象となる預金へ6%が自動適用される。Premium加入者は、所定の給与振込条件を満たすことで同じ金利を利用できる。
■将来的なステーブルコイン対応の可能性
X Moneyは法定通貨のみで始まり、Bitcoin、ステーブルコイン、暗号資産の購入機能には対応していない。暗号資産を加えれば、規制の厳しい州でX Paymentsが送金業免許を申請する際の手続きが複雑になり、従来型銀行サービスの代替として定着を目指す製品に別種の規制審査が及ぶため、これは意図的な判断である可能性が極めて高い。
一方で、将来的な暗号資産対応につながる構造はすでに見えている。Trump大統領は2025年7月18日、決済用ステーブルコインとして初の連邦規制枠組みを設ける「GENIUS Act(Guiding and Establishing National Innovation for U.S. Stablecoins Act)」に署名した。Morgan Lewisの解説によると、同法は一定の準備資産要件と規制要件を満たす銀行以外の事業者を含む「認可決済用ステーブルコイン発行者」の区分を設けた。
Warren上院議員はマスク氏への書簡で、Xのような非公開の民間事業会社が、上場事業会社に適用される一部の監督要件を負わずにステーブルコインを発行できる例外規定を問題視した。また、Thune院内総務がこの抜け穴を塞ぐ超党派の上院修正案を阻止したと指摘した。これらの懸念は2026年4月の上院銀行委員会書簡に記されている。
Cross River Bankはすでに、他のフィンテック顧客向けにEthereumとSolana上のUSDC決済をAPI経由で支援しており、将来のX独自ステーブルコインの技術基盤になり得る。Sacraの調査資料によると、COSは80社を超えるフィンテック提携を支え、決済網との接続で豊富な経験を持つ。Crowdfund Insiderによれば、Xの月間アクティブユーザーは2026年3月時点で5億5000万人であり、仮にXが決済用ステーブルコインを発行すれば大規模な流通経路となる。現時点の製品は法定通貨の基盤であり、Xはステーブルコイン計画を正式に確認していない。
■Venmo、Cash App、Zelleとの違い
X Moneyは消費者向け決済の既存各社に構造的な競争を挑むが、条件は同じではない。VenmoとPayPalでは、保有残高が初期設定のままではFDIC保険の対象にならず、資金には銀行ではなくプラットフォームの破綻リスクが伴う。Cash Appも、別途提供する貯蓄機能を明示的に選ばない限り、使っていない残高はFDIC保険対象口座で保護されない。
X MoneyではCross River Bankとの預金契約により、すべての残高が初期設定でFDIC保険の対象となる。このため、決済ウォレットより銀行の預金口座に近い。Zelleは残高を保有せず、参加金融機関の銀行口座間で直接資金を動かすため単純比較は難しい。ただし、大手銀行のアプリへすでに組み込まれている利便性は、X Moneyが時間をかけて追いつく必要のある強みだ。
X Moneyに有利なのは顧客基盤である。2026年3月のTheStreetの分析によると、PayPalは約4億3000万口座、Cash Appは約5700万のアクティブユーザー、Venmoは約9000万ユーザーを持つ。X Moneyは新たに利用者を獲得しなくても、Xの月間アクティブユーザー5億5000万人へ接触できる。
不利なのは信頼である。VenmoとCash Appは、紛争解決や不正被害への対応を積み重ね、利用者の入金習慣を長年かけて築いた。一方、Warren上院議員の書簡は、制裁対象者による認証済みアカウントの購入、認証利用者による詐欺、データプライバシー違反、CFPBを弱体化させたとされるDOGEを率いた人物によるプラットフォーム運営など、Xに関する事例を挙げている。詳細は上院銀行委員会の書簡に記載されている。
フィンテックアナリストのRon Shevlin氏は2026年4月、Forbesへの寄稿で、プラットフォームの有害性を理由に潜在的なフィンテック利用者の相当数がすでにSNSとしてのXを離れており、分断的な政治と結び付けられたアプリへの金融上の信頼を、その印象から切り離すのは容易ではないと指摘した。
■Xアカウント停止時の預金アクセスは未解決
X Moneyの展開後も埋まっていない空白がある。Xアカウントが停止、制限、永久凍結された場合に、預金がどう扱われるかを定めた方針をXは公表していない。Xではアカウント停止が継続的に発生していることが確認されている。
法的には利用者の資金はCross River Bankに置かれるが、アクセスは全面的にXアプリが仲介する。停止されたアカウントの保有者が預金を取り戻す手段について、2026年7月27日時点で公表された回答はない。TechTimesも2026年6月、Premium加入者向けの提供開始時にこの問題を指摘した。
これは、SNSアカウントと主要な預金口座を組み合わせていないVenmoやCash Appとは異なる種類のリスクだ。Venmoのアカウントが停止された場合、利用者は残高の払い出しを申請できるが、Xは同等の手続きを明らかにしていない。
■スーパーアプリ構想の優位性と弱点
アジアのスーパーアプリを研究するアナリストは、中国でWeChat Payが支配的になった背景には米国に存在しない構造的条件があったと繰り返し指摘している。WeChatは、銀行口座を持たない人口が多く、既存金融アプリとの競争が限られ、少数の巨大プラットフォームへ利用が集中するモバイル優先市場で成長した。
2026年の米国では消費者への銀行サービスが行き渡り、決済市場が成熟して利用習慣も定着している。オープンなアプリ環境では、単機能アプリが使い勝手で多機能アプリを上回り続けてきた。欧米のスーパーアプリ構想はこの壁を越えていない。PayPalも2021年にスーパーアプリとして再出発を試みたが、おおむね後退した。American Bankerによる米国のスーパーアプリ分析では、IDCのAaron Press氏が、WeChat利用者は「ほかのものをほとんど使わない」と指摘しているが、米国の消費者は歴史的に同様の定着性を示していない。
X Moneyには、初日から有料加入者440万人へ製品を提供でき、無料利用が将来拡大されれば数億人へ到達できるという、単独のフィンテック企業には購入できない流通上の優位性がある。一方で、政治的論争と切り離せないSNS、規制当局の審査対象となっているデータ慣行、解除が公に確認されていないFDICの規制措置歴を持つ提携銀行に、給与振込を託すよう利用者へ求めている。
こうした条件が普及を妨げるのか、単に遅らせるだけなのかは、今後12カ月の損失率、利用者の継続率、CFPBが実質的に不在とされる規制環境によって明らかになる。
Cross River Bankは新規株式公開(IPO)を検討している。実現すれば、ベンチャーキャピタルの出資を受けた銀行としては数年ぶりの上場になる。UCapitalによると、同行は潜在的な上場に向けて引受会社を選定した。X Moneyとの提携を全面展開と同時に発表したことで同行の知名度が高まり、IPOの時期が早まる可能性がある。投資家にとって、この提携はCOSの拡張性を裏付けると同時に、その拡張性がどのような規制条件の下で運用されているかを示す材料でもある。
■注目ポイントQ&A
●FDICの同意命令があっても預金は安全ですか?
Cross River Bankが破綻した場合、預金は25万ドル(約4100万円)まで、X Cash Sweep Programでは最大1000万ドル(約16億4000万円)までFDIC保険で保護されます。2023年の同意命令は預金業務の安全性ではなく、フィンテック提携先の自動審査モデルに対する公正融資上の監督不足を扱ったものです。同行は不備に対処したとしています。ただし、FDIC保険はXのサービス障害、アカウント停止、X Corp.の破綻を補償しません。
●なぜ最大年利6%を提供できるのですか?
金利自体は提示されていますが、詳細条件は公開文書で確認できません。Xは既存の数億人規模の利用者基盤を使えるため、預金獲得の広告費を抑え、その分を顧客獲得費として高金利へ充てているとの見方があります。ただし、恒久金利かキャンペーン金利か、全残高に適用されるか、上限があるかは、2026年7月27日時点でXもCross River Bankも公に確約していません。
●どの州で利用でき、アカウント停止時はどうなりますか?
41州とワシントンD.C.で利用できます。ニューヨーク州とマサチューセッツ州ではX Paymentsが送金業免許を取得しておらず、現在の規制条件では利用できません。Xアカウントが停止、制限、永久凍結された場合の預金の扱いについて、Xは方針を公表していません。資金はCross River Bankにありますが、アクセスはXアプリを経由するため、給与振込先にする前に公開規約で引き出し手段を確認する必要があります。Awaretradeも2026年6月の分析で、これを提供開始時の重大な未解決リスクとして指摘しました。
●将来ステーブルコインに対応する可能性はありますか?
X Moneyは法定通貨のみで始まり、暗号資産機能は確認されていません。ただし、GENIUS Actは一定要件を満たす銀行以外の企業が決済用ステーブルコイン発行者になるための連邦上の道筋を設けました。Cross River Bankは他社向けにUSDC決済をAPIで支援していますが、Xはステーブルコイン計画を発表していません。
元記事: X Money Goes Nationwide, Backed by a Bank the FDIC Has Twice Cited for Unsafe Practices
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
スポンサードリンク

