トランプ大統領、イラン凍結資産をホルムズ海峡の損害補償に充てると宣言――紅海にも広がる危機

2026年7月26日 23:12

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記事提供元:Tech Times

トランプ米大統領は、ホルムズ海峡で続く紛争で被害を受けた船舶や貨物の補償に、米国が管理するイランの凍結資産を充てると宣言した。これに対し、イランの外相は世界の金融秩序を脅かす「扇動的な前例」になると直ちに反発しており、法的な実現性も不透明だ。同日にはイエメンの武装組織フーシ派が紅海でサウジアラビアのタンカー2隻を攻撃し、2月28日の開戦以来初めて、ペルシャ湾の重要なエネルギー輸送路であるホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブ海峡が同時に攻撃にさらされている。

■トランプ大統領の宣言とその実態

トランプ大統領は23日(木曜日)、Truth Socialへの投稿で、ホルムズ海峡の紛争で被害を受けた船舶や貨物の補償に、米国が管理するイランの凍結資産を充てると宣言した。「今後通知があるまで、船舶や貨物、またはそれらに関連するものに生じた一切の損害は、米国が保有し管理するイランの資金によって支払われることを、この声明をもって表明する」と記している。さらに、損害は「非常に巨額になる可能性がある」としつつも、イランの凍結資産を振り向けることは「公正かつ公平な措置だ」と付け加えた。

しかし、大統領が言及しなかった点も、発言内容と同じくらい重大である。この投稿では、法的根拠、請求手続き、裁定の仕組み、実施時期について一切示されていない。The Washington Timesの報道によると、イラン側はトランプ氏の提案を前例のないものだとして強く反発している。米国が直接管理するイランの凍結資産は推定20億ドル(約3280億円、1ドル=164円換算)に上るが、すでに世界市場に打撃を与えている海運危機の規模に比べれば小さい。イラク、カタール、日本、ルクセンブルクなどでも数十億ドルが凍結されたままであり、世界全体のイラン凍結資産は1000億ドル(約16兆4000億円、同)を超える。

この宣言は、紛争が最も深刻な局面に入る中で出された。米軍によるイラン領土への空爆が13夜連続で行われた直後で、7月23日にホルムズ海峡を通過したタンカーはわずか1隻と、5月7日以来の最低水準に落ち込んだ。前月に合意された暫定的な取り決めも、代替案がないまま崩壊した。Reutersが確認した船舶追跡データも、タンカーの通過が1隻だけだったことを裏付けている。

■法律が実際に認めていること

米政権はどの法的権限を行使するのか明らかにしておらず、実現への道筋はトランプ大統領の自信に満ちた投稿が示唆するよりもはるかに狭い。Middle East Council on Global Affairsは、議会による措置か新たな法解釈がなければ、行政府にはこの宣言を実行する明確な法的権限がないとの分析を示している。

歴代政権がイラン制裁に用いてきた主要な手段である1977年国際緊急経済権限法(IEEPA)は、凍結資産の没収や移転を明示的に認めていない。議会はIEEPAの制定時、正式に宣戦布告された戦争にのみ適用される第一次世界大戦期の法律、対敵通商法(TWEA)にあった資産を没収・国有化する権限を意図的に除外した。Congressional Research Serviceの文書によると、2001年の愛国者法改正によって、米国が外国と武力衝突中である場合に大統領が財産を没収できるという限定的な例外が設けられた。ただし、対象は敵対行為を「計画、承認、支援、または実行した」当事者に限られ、資産の移転先も米政府に限定される。民間の請求者への移転は認められていない。

国際法も別の制約を課している。対抗措置の原則では、違反国に国際法を順守させる目的であれば、通常は禁止される行為を国家がとることも認められ得る。ただし、その措置は可逆的、つまり元に戻せるものでなければならない。資産の凍結を継続することはこの基準を満たすが、Middle East Councilの分析が詳述しているように、資産を完全に没収して民間の第三者へ移転することは基準を満たさない。国際司法裁判所は2019年、米国が保有する20億ドルの凍結資産について、イランに法的請求権が残っているとの判断を示しており、この問題は未解決のままである。

2024年のREPO法は、ロシアの国家資産をウクライナ支援の資金源に充てるための具体的な法的枠組みを設けた。しかし、イランの資産を対象とする同等の法律は存在しない。ある分析の表現を借りれば、議会が立法措置を講じるか、裁判所が判断を示すまで、イランの凍結資金から民間の海運業者に補償金を支払うという政権の法的立場は「法的に未検証の領域」にとどまる。

■イラン側の猛反発

イランのアッバス・アラグチ外相は数時間以内に反応し、トランプ大統領の宣言を限定的な戦時措置ではなく、国際金融システムそのものへの脅威と位置づけた。アラグチ氏はXに「無関係な将来の請求への支払いに充てるため、他国の資産を差し押さえることは、扇動的な前例となる」と投稿した。「そのような資金を歓迎したり、それによって利益を得たりする者は覚えておくべきだ。政府が没収を常態化させれば、誰の資産も安全ではなくなる」

アラグチ氏は「その結果生じる混乱は、穏便にも平和的にもならないだろう」と警告した。イランの立場は一貫しており、凍結資産は無条件で返還されるべき自国の法的権利だとみなしている。また、イランの安全保障担当高官は別途、米国に対し「イランの凍結資産すべて」を無条件で解放するよう求めた。

イランの激しい反発には、戦略的な計算も反映されている。イランは長年、凍結資産を回収できる可能性を、将来の合意に向けた交渉材料として扱ってきた。米国がこれらの資金を民間の海運業者に分配すると警告することで、自らの将来の交渉余地を狭める可能性がある。紛争を一時的に停止させた6月18日の覚書が機能した要因の一つは、米国が経済的な誘因として一時的な石油輸出許可を提示したことだった。場当たり的な補償金の支払いで凍結資産が減少すれば、将来の交渉材料としての価値も低下する。トランプ政権は、こうした影響を公には認めていない。

■攻撃にさらされる第2のチョークポイント

米国とイランが凍結資金をめぐって対立する中、紛争の地理的範囲は急速に拡大した。イエメンのフーシ派は木曜日、弾道ミサイル、巡航ミサイル、ドローンを使用し、紅海でサウジアラビアの石油タンカー2隻を攻撃した。

フーシ派のSABA通信と軍報道官のヤヒヤ・サリー氏は、標的となった船を石油製品タンカー「MT Encelia」(IMO番号9240172)と原油タンカー「MT Layla」(IMO番号9336098)と特定した。両船ともサウジアラビア船籍で、双方で火災が発生したと主張している。Lloyd's List IntelligenceはEnceliaへの攻撃を独自に確認したが、弾道ミサイル、巡航ミサイル、ドローンによるものとされるLaylaへの攻撃は、記事公開時点で独立した裏付けが得られていない。サウジアラビアの交通総局はEnceliaへの攻撃を確認し、乗組員は全員無事だと発表した。いずれの攻撃でも死傷者は報告されていない。

これらは、フーシ派が今週初めに、紅海南端のバブ・エル・マンデブ海峡を通るサウジアラビア関連船舶の封鎖を発表して以来、初めて確認された船舶攻撃である。バブ・エル・マンデブ海峡は、世界のコンテナ輸送量の4分の1を含め、世界貿易の約12%を担っている。海上安全保障のアナリストは、Enceliaへの攻撃後、紅海南部を通過する船舶の戦争危険保険料が船価の約0.3%から0.75%へ直ちに上昇したと指摘した。また、船主は、貨物の原産地やサウジアラビアの港への寄港履歴について、より厳しい審査を受けると見込むべきだとしている。

紅海は、ホルムズ海峡の閉鎖中、極めて重要な迂回ルートとして機能していた。サウジアラビアは、ホルムズ海峡の航行が危険になった後、東西原油パイプラインを利用して原油を紅海沿岸のヤンブー港へ送り、同港を主要な輸出拠点としていた。フーシ派の攻撃は現在、このルートを直接脅かしている。湾岸地域全体のパイプラインによる迂回能力は、ヤンブー、UAEのフジャイラ向けルート、イラクのキルクーク-ジェイハン・パイプラインを合わせても日量約900万バレル(約24億米ガロン)である。これは、開戦前にホルムズ海峡を通過していた日量約2000万バレル(約53億米ガロン)の半分にも満たない。

■イランによる海峡封鎖の手法

ホルムズ海峡は、航行可能な最も狭い部分で幅34キロメートル(21マイル)しかなく、イランは海峡を封鎖するために、確認されているだけで4つの手法を用いている。2月28日に危機が始まって以来、無人攻撃艇、弾道ミサイル、銃撃などによる武力攻撃で、少なくとも34隻の船舶が攻撃を受けるか損傷している。イランが2026年3月に敷設を始めた機雷は、水路全体に見えない脅威をもたらしている。この危機に関するWikipediaの記述によると、米軍は、イランが敷設した機雷の一部をその後見失ったと報告している。このため、停戦後も完全に除去できるかは不透明だ。

物理的な危険をさらに深刻にしているのが、2つの電子的な手法である。偽の衛星信号を送信して船舶の航法システムを混乱させるGNSSスプーフィングと、衛星信号を完全に遮断するGNSSジャミングだ。いずれも、武力攻撃が行われていない日であっても、保険コストと乗組員のリスクを大幅に上昇させる。これらの手法が組み合わさった結果、7月19日時点の通航量は1日15隻にとどまり、危機前の1日88隻と比べて、海峡は商業船舶に対して事実上閉鎖された状態にある。

2月28日以降、少なくとも12人の船員が死亡または行方不明となり、バーレーンでは港湾労働者1人が死亡した。また、危機がピークに達した時点では、ペルシャ湾で2000隻の船に乗る約2万人の船員が足止めされた。

■市場への影響:100ドルの原油と麻痺するサプライチェーン

木曜日に二つの戦線で緊張が高まったことを受け、原油価格は1バレル当たり100ドル(約1万6400円、1ドル=164円換算)を突破した。株式市場は急落し、ダウ工業株30種平均は500ポイント以上値下がりした。

この危機はすでに、独立機関が「最大」と表現する事態を引き起こしている。世界銀行の「2026年4月商品市場見通し」は、これを記録上最大の石油供給ショックと呼び、混乱のピーク時には日量約1000万バレルが世界市場から失われたとした。国際エネルギー機関(IEA)は、累積的な影響について、世界の石油市場の歴史上最大の供給途絶と表現した。TechTimesの報道によると、クリス・ライト米エネルギー長官は7月20日時点で、アラビア湾岸地域の現在の生産量が日量約1400万バレルにとどまり、戦前の生産量の約3分の1が回復していないことを確認した。

混乱の影響は、ガソリン価格をはるかに超える範囲に波及している。ペルシャ湾岸地域は世界の尿素輸出量の約30~35%を占めるため、2026年春には尿素価格が約50%上昇した。肥料市場のアナリストは、春の作付け減少によって、2027年にかけて世界の食料価格がさらに上昇する可能性があると警告している。Axiosの報道によると、カタールのLNG生産の混乱がヘリウム供給業者に影響したため、4月にはヘリウムの割当供給が始まった。世界のヘリウム生産量の約3分の1がこの地域を経由しているためである。

■出口の見えない外交

フィリピンのマニラで開かれたASEAN外相会議に出席していたマルコ・ルビオ米国務長官は、米国は引き続き交渉に取り組むと述べる一方、イラン側の姿勢に疑念を示した。Euronewsの報道によると、ルビオ氏は記者団に「現在直面している問題は、彼らが対話に真剣ではないことだ」と語った。さらに「彼らが正気を取り戻すまで、代償は一晩ごとに大きくなり続ける」と述べた。

イラン政府高官がReutersに語ったところによると、イラン政府は、崩壊した6月の合意を立て直すことを目的とした10日間の停戦案を仲介者から受け取った。イランの内相は仲介役を務めるパキスタンを訪問し、外交努力を継続するよう同国政府に働きかけた。しかし、イランが凍結資産の無条件解放を要求する一方、米国は船舶の航行の自由と核開発への制約を求めている。双方が交渉の前提と考える条件の隔たりは、土曜日の時点でも埋まっていない。

紛争を追跡するアナリストは、木曜日の動きについて、解決に向かう流れではなく、複数の要因が重なる新たな緊張激化だと指摘している。イランはホルムズ海峡の管理を停戦の枠組みにおける中心的な問題としており、凍結資産をめぐる新たな対立は、すでに行き詰まっていた交渉に新たな争点を加えることになる。

ホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブ海峡の双方が同時に長期間閉鎖されれば、前例のない二重のチョークポイントによるエネルギーショックとなる。それは、イランの凍結資産をどれほど投入しても短期間では相殺できず、経済への影響もまだ完全には市場価格に織り込まれていない。

■注目ポイントQ&A

●米国は海運業者への補償に充てるため、イランの凍結資産を合法的に没収できますか?

追加の法的措置なしには、ほぼ確実に不可能です。米政権が外国資産を凍結するために用いる主要な法律である国際緊急経済権限法(IEEPA)は、資産の没収を明示的に認めていません。議会は1977年の制定時に、その権限をIEEPAから除外しました。2001年の愛国者法改正によって、武力衝突時の限定的な例外が追加されましたが、認められるのは米政府への移転であり、民間の海運会社への支払いではありません。ロシアの国家資産を対象とする仕組みを設けた2024年のREPO法に相当する法律は、イランの資産については存在しません。議会が立法措置を講じるか、裁判所が判断を示すまで、この宣言は、実行のための確立された法的仕組みを伴わない政策意図の表明にすぎません。

●なぜホルムズ海峡は米国の消費者にとってそれほど重要なのですか?

危機が始まる前、この海峡は世界で海上輸送される石油の約20%と、液化天然ガスの約20%が通過するルートでした。その流れが止まれば、影響は湾岸地域にとどまらず、米国を含む世界各地でエネルギーコストを押し上げます。原油価格の上昇は、ガソリン価格、航空運賃、暖房費、工業製品の価格に波及します。肥料の供給途絶も米国の農業を直撃します。湾岸地域は、主要な窒素肥料である尿素の世界輸出量の約30~35%を占めており、2026年春の作付け減少によって、2027年にかけて食料価格が上昇するとすでに予測されています。

●迂回ルートはどのような脅威にさらされ、なぜ今重要なのですか?

2026年2月下旬にホルムズ海峡が事実上閉鎖された後、サウジアラビアは東西パイプラインを利用して原油を紅海沿岸のヤンブー港へ送り、海峡を完全に迂回し始めました。このルートは、危機の影響を和らげる主要な安全弁となりました。木曜日にフーシ派が、サウジアラビア船籍のタンカー「MT Encelia」と「MT Layla」を攻撃したのは、同派がバブ・エル・マンデブ海峡を通るサウジアラビア関連船舶の封鎖を発表して以来、初めての船舶攻撃です。これは、その安全弁を直接狙ったものです。湾岸地域のパイプラインによる迂回能力は合計でも日量約900万バレルで、ホルムズ海峡の通常の通過量の半分未満です。また、海軍の護衛艦隊が海上を航行する船舶を守るのと同じ方法で、フーシ派のミサイルやドローン攻撃からこの迂回ルートを守ることはできません。

●トランプ大統領の宣言は、ホルムズ海峡を通航するか判断する海運業者に影響しますか?

理論上は、イランの凍結資産で損害を補償すると約束することで、船舶の被害に伴う金銭的リスクの一つを軽減します。しかし実際には、ほとんど何も変わりません。この宣言には、請求を提出するための法的枠組みも、損害を査定する手続きも、支払い時期も示されていません。さらに、その法的な仕組みが司法審査に耐えられるという保証もありません。海運事業者は、損害が最終的に補償されるかどうかではなく、船舶と乗組員の安全を確保できるかどうかに基づいて通航を判断します。保険会社も、大統領のSNS投稿ではなく、物理的な脅威に基づいて保険料を設定します。イランが武力攻撃、機雷、衛星航法信号の妨害を同時に用い、イスラム革命防衛隊(IRGC)によるものとされるGPS信号のスプーフィングによって安全な航路の航行も困難になっている状況では、海峡通航をめぐる実際のリスク判断はほとんど変わっていません。

元記事: Trump Taps Frozen Iranian Assets for Hormuz Damage Claims, Red Sea Front Widens

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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